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ニッポンのワイン、ブドウ栽培にAI。関税撤廃で欧州産に対抗

7/9(日) 9:26配信

ニュースイッチ

品質向上や技術伝承へ

 農業分野のIT活用が、ワイン用ブドウ栽培にも波及してきた。サッポロビールはブドウ栽培会社のサッポロ安曇野池田ヴィンヤード(長野県池田町)の栽培技術に、人工知能(AI)を導入することを決めた。気象や土壌などの各種ビッグデータを活用して、体系化された栽培技術を確立する。ブドウ品質向上と栽培技術の伝承を目指す。ワインブドウ栽培への先端技術活用は、サントリーワインインターナショナル(東京都港区)も登美の丘ワイナリー(山梨県甲斐市)で推進している。

 サッポロ安曇野池田ヴィンヤードのブドウ畑面積は12万平方メートル。広大な畑の各所に計測センサーを設置して降水量や気温変化、日照時間、土壌水分などの気象と土壌に関する情報を収集する。

 収集したデータをワインブドウの生育状況や品質と合わせてクラウドサーバーで分析し、最適な作業指示をリアルタイムでフィードバックできるようにする。

 AIには農学系博士の社外研究者が携わり、科学的な農業技術を用いた栽培を目指す。現地栽培技術者の知見も組み込める仕様にしており、社内独自の栽培ノウハウ蓄積も可能という。

 サッポロビールは中期経営計画で、ワインをビール事業に次ぐ第2の柱に育てることを目標に掲げる。銘柄による価格差が激しいワインは、まず原料となるブドウの高品質化が重要になる。

 それを醸造して国際ワインコンクールなどで受賞歴を重ね、ステータスを上げることが収益の向上につながる。AIやITを活用して、この実現に役立てる。

 同時に、技能伝承という別の狙いもある。ブドウ栽培農家は高齢化が進み、後継者難が深刻だ。耕作放棄地の集積などでワインブドウ畑の面積を増やしても、肝心の担い手がいない。

 サッポロではAIとITで確立した栽培技術を自社畑だけでなく契約農家にも展開し、より安定した原料ブドウ供給体制を築く考えだ。

 ワインブドウ畑へのIT活用は、2005年からサントリーワインインターナショナルも大学と共同で取り組んでいる。ワイン産地で名高いフランス・ボルドーに比べ湿度が高く、夏場の日照時間が短い日本のハンディを、IT活用の栽培技術で補う。

 具体的には土地ごとの水分量を測定し、水がたまっているエリアの水分を減らして完熟度の高いブドウを収穫。ブドウ品種による栽培時期の違いなどもデータ分析で解決する。

 チリワインに続き、フランスやイタリアのワインも欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉で関税撤廃になり、日本ワインは競争力の高い欧州ワインと激しい戦いを強いられる。戦いに勝つためのキーワードはブドウの“高品質・高精度”と栽培。AIやIT活用がそのカギを握る。