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少女時代に犬と過ごした幸せの記憶 愛犬と老犬ホームの犬たちに愛情を注ぐ

7/9(日) 10:00配信

sippo

「可愛いわねえ」「赤ちゃんかと思ったらワンちゃんだった」

 商店街を高橋あゆみさん(45)がバギーを押して歩くと、道行く人がのぞきこんでは、声をかける。バギーに乗せているのは、レオ(♂・11歳)、マリン(♂・11歳)、アクア(♂・9歳)。3匹のチワワだ。

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「3匹連れていると、けっこう目立ちますね(笑)。休日に出かける時は、ほとんど一緒です。もうすぐレオとマリンのお誕生日なので、名前入りのケーキを用意する予定です。早いですね、もう12回目ですから」

 レオとマリンは兄妹。11年前、あゆみさんが34歳の時にペットショップで出会って家族に迎え、その2年後に、アクアが仲間入りした。

「もともと動物が大好き。小学生の頃から実家でも『ピーチ』というメスの雑種犬を飼っていて、犬と過ごす時間の素晴らしさや、動物の心の純粋さを知りました。つらい時も楽しい時もいつも一緒……。でも、私が24歳の時にピーチは亡くなりました。あまりにも別れがつらく、しばらく犬と暮らすことができなかったんです。亡くなる前、私はすでに独立していましたが、介護のため実家によく戻り、最後の数日を一緒に過ごしました」

愛犬の死から10年

 レオたちを迎えたのは、ピーチの死後、10年経ってからだった。決してピーチを忘れたわけではなく、むしろ、ピーチにもらった幸せを、ほかの犬と分かち合いたいと思うようになったからだったという。3匹のチワワと暮らし始めたワンルームは、いっきに賑やかになった。

「レオは一番甘えん坊で、やきもち焼き、でも優しい。マリンは、一番賢く、我が家のボス的存在。そしてアクアは、末っ子らしく無邪気で、少し内弁慶。それぞれ個性があって、人間の子どもと同じです。私は“母”として彼らを幸せにする責任がある。といっても、『あゆちゃん帰ったよぉ』とか『あゆちゃんはこう思うよ』とか、母らしくない言葉で接していますが(笑)」

 会社勤めをしていたあゆみさんは、40歳の時、貯金をはたいて東京都内にILDKのマンションを買った。決断したのは、チワワたちのためだった。ケージやハウスなどを置くと、賃貸のワンルームは手狭だったため、少しでも広いところで、犬たちをのびのびさせたかったからだ。

 引っ越しから3年後、43歳の時、さらに大きな決断をした。15年間勤めた会社を辞めて、設立して間もない「老犬ホーム」のスタッフに転職したのだ。

「たまたまネットで存在を知り、老犬ホームに電話して働かせてくださいと言いました。レオたちと暮らし始めたら、“やっぱり動物が好き。私に何かできることはないか”という気持ちがふつふつと沸いてきたんですね。最初は断られましたが、何度も代表に頼みこんで、採用してもらいました」

 老犬ホームには、やむをえず飼い主と離れ離れになる犬がやって来る。あゆみさんは一生懸命面倒を見ながら、会社勤めの時とは違うやりがいを感じていた。

 しかし、転職して間もなく、家の3匹に異変が起きた。急に、“長男”のレオが、“末っ子”のアクアを襲うようになったのだ。アクアは2度ほど、病院で手当てを受けるほどの怪我をおった。

「それまでは、アクアがレオに遊ぼうと多少しつこくしても、レオは受け入れていました。レオは我慢強くて、うなったこともなかったんですが、急にアクアを“マジ咬み”したんです。同じようにチワワを3匹飼う知人から、オス同士でもめることもあると聞いていましたが、今になってどうしたのか、といろいろ考えました……」

 レオたちと一緒に過ごす時間の長さは、会社勤めの時とほとんど変わっていないはずだったが、はっと気づいたのだという。

「私の忙しさが、そのまま犬たちのストレスになっていたのかもしれないなと反省したんですよ。ちゃんと見てあげていなかった。上の空でスキンシップをしてもだめなんです。犬は人の心を敏感に感じ取る。そのことに改めて気づかされた出来事でした。私の気持ちが変わると、レオの態度も戻っていきました」

 老犬ホーム勤務も2年経ち、あゆみさんは責任者の立場になった。時おりレオたちもホームに連れていき、他の犬たちと交流させることもある。自宅の子もホームの個も分け隔てなく愛情を注いでいる。

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最終更新:7/9(日) 10:00
sippo