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スタートアップに向くのは「反直感的」アイデアー超AI時代を生き延びる逆説的思考 1.落合陽一×馬田隆明

7/9(日) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

マイクロソフトで世界レベルのスタートアップ支援の仕組みやノウハウを学び、「東京大学本郷テックガレージ」のディレクターでもあり、『逆説のスタートアップ思考』の著者でもある馬田隆明氏と、筑波大学学長補佐・助教で、メディアアーティストとしてコンピュータと人との新たなる関係性である「デジタルネイチャー」という世界観を提唱する落合陽一氏。IoT、AIで加速する「第4次産業革命」の時代を俯瞰し、「その先」を見据える2人がポストモダンを生き抜く思考法を語り合った。

【画像】落合陽一氏(左)と馬田隆明氏。スタートアップのタネを生み出す拠点「東京大学本郷テックガレージ」での対談後、近くのカフェに移動して。

落合陽一(以下、落合):ここは学生さん、何人ぐらいいるんですか。

馬田隆明(以下、馬田):今、150人ぐらい登録があります。東大の学生がサイドプロジェクトを行う「秘密基地」という位置付けなので、学生たちの出入りが活発になるのは春休みと夏休みが中心ですね。

落合:じゃあ、馬田さんはここで、次の芽になりそうな学生のサイドプロジェクトの面倒を見てあげるお兄さんなんですね。僕がうちのラボ(筑波大学デジタルネイチャー研究室)でやっていることと似ています。

馬田:Facebookやグーグルも学生のサイドプロジェクトから生まれてきました。その次を行く、今の人たちから見れば「まさか」と思えるようなプロダクトが生まれる環境づくりが私の仕事です。

スタートアップに向くのは「反直観的」なアイデア

馬田: 落合さんの著書(『超AI時代の生存戦略ーシンギュラリティ〈2040年代〉に備える34のリスト』)を読んですごく共感したのは、これからは、もはや1人1人の「ライフ」においても戦略を定め、個人の単位でもブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)を探すクセをつけるべきだよと。そのために大量のサーベイ(既存の論文の調査)をすることが大事だよと説いていて、本当にそうだよなと思いました。

落合:僕のラボでうまくいかないやつは、大概の場合はサーベイ不足が原因ですね。うちには学生が40人ほどいて、1人1人がプロジェクトを立ち上げている。だから、3年も経ったころには僕は100や200のプロジェクトの面倒をみることになる。今が3年目なので、そんだけみてりゃあ、うまくいくやつとそうでないやつとの違いは、おのずと見分けられるようになる。

馬田:とはいえ、学生は「ブルーオーシャン戦略」というのがなかなかピンとこない。たとえば私は、普通な感じのVR(バーチャル・リアリティ)のプロジェクトの申請があっても、結構落としています。優れた技術者や大人がひしめくレッドオーシャンは、ソリューションの強度勝負になりがちで、学生だとなかなか勝てない領域だからです。

落合: VR流行っているから僕も、みたいな子は多いですね。大学といっても、最初はただの「高校4年生」みたいなのが入ってくるから(笑)。うまくいく学生っていうのはレッドオーシャンでも勝てる強さを持ちながら、ブルーオーシャン戦略も持っていたりする。例えば、競争の激しいディープラーニングのコンピュータビジョン(おおまかには「ロボットの目」をつくる研究分野)のペーパーを書いても普通に通るだけの実力があるんだけど、そのテクノロジーを使って全然違うことにトライできる、とか。オリンピックの100m走で金メダル級ながら、障害物レースに出る、みたいなやつだよね。

ー馬田さんは著書『逆説のスタートアップ思考』で、反直観的で一見悪いように見える、不合理なアイデアが急成長するスタートアップには適切と述べていました。

落合:確かに、最初は「めっちゃ地味だな、これ」と思っても、やってみたら面白かったっていう例はよくある。うちのラボでは昨年、自動運転の車椅子を作るプロジェクトを始めたんだけど、当初、簡単には論文になりそうもないなと。類似の事例も過去からたくさんあるし。でも、蓋を開けたら、賞を取っていました。以前では安価なハードウェアの組み合わせではなし得なかったことが、空間認識系技術によるソフトウェア的な結合で解けるようになって来た。エコなんですよ。

馬田:不合理なアイデアって、「どうだろ、これ」って思いついても、速攻で「よし、やろ」ってなかなか実行に移すのは難しい。

落合:うちのラボは、言い出して2週間後にはプロトタイプができているよ。 手が早い子が多いし。

馬田:でも、学生の皆さんって技術力がそんなになかったりする場合もあるじゃないですか。そんなときは完成まで時間がかかりそうですよね。

落合:いや、技術力はね、うちにいるとすげー上がるんですよ(笑)。

馬田:何故なんですか?

落合:プロジェクトの数が半端なく多いから。うちのラボだと、1人あたり4つぐらいのプロジェクトを掛け持っているのは当たり前なんです。あと、最初の構想の段階で「これは違う」って思ったら、僕がバサッと切る。だから、学生は行くも引くも、躊躇がない。

馬田:その量の勝負は落合研の特徴かもしれませんね。本でも書きましたが、アインシュタインは248、ダーウィンは119、フロイトは330の論文を書いています。またエジソンは1093の特許を取り、バッハは1000曲以上も作曲し、ピカソは 2万以上の作品を残しています。傑作を残した天才たちが実は、傑作を生むためにその裏で大量の試行を重ねていた、というのに通じるアプローチのように聞こえました。

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