ここから本文です

日本人に足りない経済感覚。林業のスケールで「100年思考」を持て!ー超AI時代を生き延びる逆説的思考 2.落合陽一×馬田隆明

7/9(日) 21:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

日本のスタートアップの世界展開を支援してきた馬田隆明氏(東京大学産学協創推進本部 本郷テックガレージ ディレクター)は、連載の1回目に「若い人たちに楽観的な未来像を抱いてもらうために試行錯誤している」と語った。メディアアーティストとして、コンピュータと人との新たなる関係性である「デジタルネイチャー」という世界観を提唱する落合陽一氏(筑波大学学長補佐・助教)は、いかに早く「〈脱〉近代化」の発想法に切り替えられるかがイノベーションの鍵となると説いた。今回の話題は、大きなスケールでテクノロジーの未来を見はるかすポジティブな思考法についてー。

【画像】馬田隆明氏(左)と落合陽一氏。連載2回目はテクノロジーの未来を見通す思考法について語った

ー今、人工知能(AI)のテクノロジーに対して、悲観論と楽観論が入り乱れています。

馬田隆明(以下、馬田):世論が悲観的な方に傾いたら対論を、と、振り子が逆に振れる。『楽観主義予測者の未来予測ーテクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする』(上・下)なんかも、海外では良く読まれていますね(ちょうど、テックガレージにあった本を手に取りながら)。これを書いたのは、「Xプライズ財団」創設者でもあるピーター・ディアマンディスたち。Xプライズは「世界初の民間有人宇宙飛行を成し遂げたチームには1000万ドルを!」みたいな人類目線のコンペをいろいろ仕掛けているところだけあり、スケールがデカい。彼らの主張は、落合さんの世界観と似てるなと感じます。テクノロジーがどう世界を良くしていくのかと前向きで明るい感じが。

落合陽一(以下、落合):僕の場合、「明るい虚無」なんだけど(笑)。悲観論にはいかないですね。淡々とやる。最近では、仏教の言葉で理事無碍法界から事事無碍法界へ(物事の理屈があって、人間が理解してそれを事にするのではなく、事から事に直接向かう世界を受け入れるというスタイル)とか言ってます。

ー Business Insiderの日米の記事を比べると、アメリカ発のニュースの方が楽観的な色合いが強い。例えば、イーロン・マスク氏が将来、電動のソリで車を高速に移動させるため地下にトンネルを掘る計画も、壮大な夢みたいな感じです。

馬田:ああ、地下トンネルを掘削して、地下で車を走らせるという「ボーリング・カンパニー」ですね。ああいうスケールの話はなかなか出てこないなあ。

落合:そこのところ日本人は近視眼的で、とにかく経済感覚がないよ。死の谷を越えて利潤を生み出していくっていうスパンでの考え方、つまりトンネルを掘った世界において事業が黒字転換していくっていう規模感と時間のスケールで世界をイメージできないんだろうね。投資家も100年後に向かっている会社に投資するという概念が理解できない。そうすると、日本人の場合は「林業」に例えてイメージしてもらうのが一番わかりやすいんじゃないかな。林業だと、「こんなトンネルを何十年も掘り続けていたら、いったいいくらかかる?」っていう思考回路にならないもんね。「植えときゃ、いずれ誰かが刈り取るんだから、大丈夫」みたいな(笑)。

馬田:日本で林業ぐらいはるか先を見晴るかしてがんばっているスタートアップというと……。

落合:サイバーダイン(ロボットスーツHAL Rを医療・福祉用などで展開する筑波大発ベンチャー)ぐらいじゃないの。それよりも、今の若い子たちは、 VR向けヘッドマウントディスプレイ(HMD)の 「オキュラス・リフト」を作って大儲けしたパーマー・ラッキーが羨ましくてしょうがないんだと思いますよ。なんか、家の車庫で 古今東西のHMDを集めたり、レトロゲーをいじったり、そういう機械いじりをして事業を始めたら、その会社がフェイスブックに買われて、今、資産が800億超えているっていうし、楽しそう、みたいな。そういう「自由に」なるためのお金が欲しい子が多い気がする。でも、お金のところだけみると、イグジット思考(スタートアップの創業者やベンチャーキャピタルが投資した資金を回収すること)になっちゃうからね。自由なんて、近代以前から人類は最初から自由なんだから、そういうことじゃない。彼から見習うべきは今言ったような世間的成功認識の文脈で捉えるべきところじゃない。

1/4ページ

Yahoo!ニュースからのお知らせ