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南風原花織 響く技法 クヮンクヮン・チップガサー 国指定工芸品にしまくとぅば

7/9(日) 10:40配信

沖縄タイムス

 「クヮンクヮン」「チップガサー」といったしまくとぅばが、国指定伝統的工芸品の技法を表現する正式名称として使われている。南風原花織の特徴をずばり言い当てており、関係者は「織りのイメージが湧く言葉を後世へ伝えたい」と話す。(南部報道部・又吉健次)

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 花織は浮き出た柄が特徴で、読谷山(読谷村)、知花(沖縄市)など県内各地に伝わる。南風原花織は十字花織や喜屋武六枚など10種類を超える豊富な織りの種類が特徴だ。

 クヮンクヮン花織は、裏地に遊び糸が出ていることが特徴だ。獅子舞の獅子が毛を揺らして踊る様子を「シーシクヮンクヮン」といい、織りの技法を的確に表現した。

 チップガサーは、経(たて)糸をすくって穴を開け、色糸を入れる動きを表現する。チップガサー、チップガスは穴を開けるといった意味だ。

 これらの言葉は1998年ごろ、県の伝統工芸製品指定に向けた調査で分かった。技法について尋ねると、織り手10人ほどがひそひそと「あれー、クヮンクヮンてー(あの織りはクヮンクヮンだよ)」「チップガサーやんどー(チップガサーだよ)」と話し始めた。

 ぽろっと出た言葉は、織りの特徴を言い当てたしまくとぅばだった。「自分たちの集落で使う言葉だから」と遠慮気味に話す織り手。調査した平良次子南風原文化センター学芸員は「その言葉が大切なんですよと話した。当時のウチナーンチュが何を特徴と考えていたかが伝わり、面白みも感じられる」という。

 今年1月、国の伝統的工芸品に指定された南風原花織。認定に向けた説明では経産省から「全国的に分かりやすい名前を使ってはどうか」との意見が出た。

 しかし、町などは「南風原で生まれた技術に固有名詞がある。分かりづらいといわれたら、説明を見てもらう手もある」と説明した。大別された技法4種類の呼称のうち、二つにしまくとぅばが使われている。

◇ ◇

 現役の織り手・中村トミ子さんは(83)は97年ごろ、花織名人といわれた故野原カメさん=享年97、故田本成子さん=享年86=の家を訪ね「ナラーチトゥラサリヨー」と、敬語のない喜屋武言葉で指導をお願いした。野原さんらは「ヤーガナレーブサラー、ワッターヤークーワ(あなたが習いたいのなら、私の家に来なさい)」と受け入れた。

 男性の反物は幅42センチで小柄な女物は幅40センチで織ると教わり、技法や言葉も学んだ。中村さんは商品の反物や帯だけでなく、自らかぶる帽子も南風原花織で編む。100年余の歴史は先輩から後輩、そして母から娘へと引き継がれている。

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 南風原花織と同様、琉球絣(かすり)にもしまくとぅばは使われている。「琉球絣」は「イーチリー」という。沖縄の絣は柄と柄の間に空白があり、絵(イー)が切れ(チリ)ているからだ。柄にも「鳥(トゥイグヮー)」「爪の形(チミヌカター)」などがある。

 琉球絣は83年、国の伝統的工芸品に指定された。官報では「先染めの平織り」「よこ糸の打込みには、『手投杼(ひ)』を用いる」と紹介するが、技法などにしまくとぅばは使われていない。

 「琉球絣と南風原花織保存会」の大城幸正会長(67)は「昔からの織り手の間ではイーチリーでも、当時は絣という言い方が主流。そのためでは」と推測。「南風原花織のクヮンクヮン、チップガサーといった言葉からは織りのイメージが湧く。しまくとぅばの名称は残したいね」と話す。

最終更新:7/9(日) 10:40
沖縄タイムス