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【コラム】高騰する移籍金とSNSの存在…サッカーで変わったもの、変わっていないもの

7/9(日) 12:56配信

SOCCER KING

「17年前の今日にストイチコフはバルセロナと契約を結びました。移籍金は4億ペセタでした。ストイチコフはUEFAチャンピオンズリーグ、リーガエスパニョーラ4連覇のメンバーで、バルサでは200得点以上を決めてバロンドールも受賞しました……」

 そんなラジオに思わず2人のクレが笑った。

「4億ペセタだったのか」

「20年で本当に変わったんだ」

「ストイチコフは悪い選手じゃなかったしな」

「とてもいい選手、名手だよ。だけど、今の額と比べると笑っちゃうな」

 懐かしそうに2人は話す。

 バルセロナのクラブ史に名を残すブルガリア人は、当時のスペインの紙幣で4億ペセタ、換算すると約240万ユーロ(約3億円)だった。今の移籍市場を賑わしているニュースに出てくる数字とはまるで桁が違う。

 レアル・マドリードの獲得が紙面を賑わしたイタリア代表GKジャンルイジ・ドンナルンマは18歳にして、ミランから600万ユーロ(約7,7億円)の年俸の提示を受けているという。スペイン紙『マルカ』はクリスティアーノ・ロナウドが18歳の時にマンチェスター・Uから受け取っていた年俸は200万ユーロで、18歳のリオネル・メッシの年俸は300万ユーロだったと報じる。この当時のメッシはすでU-20ワールドカップで得点王とMVPに輝いており、クラブでもリーガを制覇していた。ドンナルンマは同じ年齢にしてメッシの倍の給与を手にすることになる。ストイチコフの時代とは言うに及ばず、わずか10年前の給与と比較しても、金額が違う。

 このように時代が変わって、変わるものもあれば、変わらないものもある。

 スペインの2大クラブは、有力な選手がいれば、いつだって獲得するために争ってきた。古くはアルフレッド・ディ・ステファノ、近年で言えばデイビッド・ベッカムやちょっと前であればネイマールだ。挙げればキリがない。そして今夏はベティスに所属し、U-21欧州選手権で大会MVPに選出されたダニ・セバージョスの獲得を巡って、両クラブが争っている。技巧派MFは、レアル・マドリードでは退団が決定的なコロンビア代表MFハメス・ロドリゲスの代役として見込まれている。バルセロナはアルダ・トゥランの代役、もしくはアンドレス・イニエスタの後継者として考えているようで、獲得に手を挙げていたようだ。

 バルセロニスタは、ダニ・セバージョスに好意的にではない。シャビ・エルナンデスの退団もあり、今のバルセロナの攻撃は、すっかり前線の“MSN”頼りになっている。中盤がチームの強みでなくなってから久しい。かつてように中盤を中心にゲームの主導権を握りたい。ゆえに熱望するイタリア代表MFマルコ・ヴェラッティ同様に高いスキルと広い視野を持つMFは喉が手が出るほど欲しい。カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチに加え、イスコ、そしてレンタルから復帰するマルコス・ジョレンテを揃えるレアル・マドリードよりもバルセロナが中盤を補強しなければいけないことは明らかだ。バルセロニスタもその点は十分に分かっているが、ベティスの10番には好意を抱けない。なぜならダニ・セバージョスは過去に事あるごとに自身のTwitterで、カタルーニャやバルセロナを罵ってきたからだ。ダニ・セバージョスの去就が注目されたことで、改めてその当時のツイートを地元メディアは掲載していた。仮にバルセロナに入団したとしても、カンプ・ノウのスタンドから少しでもミスをすれば、厳しい罵声が飛ぶに違いない。今から数年前の若気の至りとはいえ、一度つぶやいたものは残ってしまうし、過去のSNSでの言動が掘り返されてしまうのが、今僕らが生きている現代だ。メディアを通さなくても自身でメッセージを発信できるようになったが、その分一つひとつのコメントに責任が生まれる。世界も変われば、サッカーもそれに伴い当然ながら変わっていく。

 冒頭の2人のクレはラジオを聞きながら、「ちくしょう、マドリーが2冠獲りやがった」と終わったシーズンことを話し、招へいされた新監督エルネスト・バルベルデへの期待と不安を言い合う。車中のディスカッションは、熱を帯びてきた。そんなやり取りを17年前も2人はストイチコフを議題にしてやっていたのだろう。時代が変わっても、変わらないものが目の前にあった。

文=座間健司

SOCCER KING

最終更新:7/9(日) 12:56
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