ここから本文です

『World of Tanks』はここで作られている――ベラルーシ・ミンスクで本作の楽曲・サウンド制作について聞く【WoTミンスク取材 その1】

7/10(月) 17:13配信

ファミ通.com

●楽曲制作のキーワードは“緊張感”
 Wargamingがサービス中のオンラインタンクバトル『World of Tanks』。2017年7月に、本作の開発の拠点となっているベラルーシ・ミンスクのオフィスを訪れる機会を得た。今回の取材では、『World of Tanks』や『World of Tanks Blitz』の開発スタッフに、最新のトピックや今後の予定について話を伺った。その中から、本稿ではまずオーディオ・サウンドチームへのインタビューをお届けする。


 『World of Tanks』(以下、『WoT』)では、迫力のバトルを盛り上げる音楽にも力が入れられており、オーケストラを使用した壮大なサウンドが特徴的。さらに、バトル時の効果音だけではなく、楽曲にも随所に実際の戦車の砲撃音を取り入れるなど、そのこだわりように驚かされる。その音楽や効果音はどのように制作されているのか、オーディオチームのリード・サウンドプロデューサー・作曲家のAleksey Tomanov氏に話を伺った。


――楽曲を制作するうえで、どのように『WoT』らしさを出しているのでしょうか?

Aleksey いろいろなテクニックがありますが、わかりやすいところではパーカッションです。たとえば、ドラムの音を車輌の履帯音のようにアレンジしたり、鉄道のある“ENSK(エンスク)”のマップでは、パーカッションに鉄道の音を加えるなどして、『WoT』らしさを表現しています。また、爆発や砲弾の発射音といったものを音楽に組み込むことによって、重厚感が生まれ、バトルのヘビーさを醸し出しています。

――それぞれのマップに合わせて音楽を制作しているのでしょうか?

Aleksey はい。特定の地域をベースにしたマップが追加する際には、その地域の雰囲気や、その地域に根付いている音楽を意識して制作します。そして、その地域の作曲家や演奏家と協力して制作することもありますね。

――楽曲に共通した基準や決まりごとはあるのでしょうか?

Aleksey 戦闘BGMを作るときには、一定のテンポ――90BPM以下にしないように気をつけています。そのテンポ以下になると、音楽にリラックス効果が生まれてしまいます。プレイヤーには、つねに戦闘の中で警戒心や緊張感を持ってもらいたいので、基本的に90BPM以上のテンポを保っていますね。また、オーケストラサウンドを使用する際には、ブラス楽器を入れるというルールがあります。ブラス楽器の音は、非常に緊張感を高めてくれる音であり、メタリックな質感の音ですので、戦車のイメージを強く打ち出せます。

――音楽の部分でプレイヤーの感情をコントロールするという意図はあるのでしょうか?

Aleksey 先に述べましたが、いかに緊張感や警戒心を煽るか、という点ではありますね。そのためにシチュエーションと音楽がミスマッチしないようにすることが大事です。ゲーム内の音を調整するときは、サウンドのコンポーネントをふたつに分けて設定しています。ひとつがBGMを含むアーティステック系のコンポーネントで、もうひとつが戦車の駆動音や発射音、搭乗員のボイス、自然の音などを司るインフォメーション系のコンポーネントです。これらのバランスの取りかたが重要になります。戦闘開始直後は、撃ち合っていることはありませんので、各プレイヤーが配置につくまではできるだけアーティスティックなコンポーネントを重視した音量調整をしています。逆に、戦闘が始まる中盤では、情報としての音が重要になるので、インフォメーション系のコンポーネントを大きくします。このような、シチュエーションに合わせたバランス調整に気をつけています。

――実際の戦車の音をリアルに再現することで重視している点はどこでしょうか?

Aleksey リアルな音の再現は重要ですが、聴いたときに不快にならないように調整することです。戦車というのは、実際には騒音を撒き散らす乗り物ですよね(笑)。いままで20以上の車輌の音を収録しました。その際に、明らかに不快だと思う音は削除し、耳ざわりいい音を抽出し、それでいてインパクトがある音に仕上げています。爆発音などは、スピーカーやヘッドフォン、イヤフォンで聴くと実際の音とは違って聴こえたり、迫力のない音になりがちです。そういった部分にも注意しながら調整していますね。

――モアリアルではなく、ユーザーエクスペリエンスも重視しながらバランスを取るということでしょうか。距離による発射音のラグや、障害物による音の遮蔽や反響なども、リアルさを重視しすぎるとゲーム性に影響が出ますよね。

Aleksey 爆発音や発砲音、弾丸を弾く音などは、できるだけリアルなものに近づけるようにしています。ただし、距離による砲撃音のラグについては、あえて取り入れていません。時間差で音が届く仕様を組み込んでしまうと、プレイヤーがいったいどこからどのように撃たれているのかという情報が不足してしまい、ゲームの快適性や楽しみが損なわれる恐れがありますので。

――現在、『WoT』ではマップのHD化といった作業が行われています。音楽面での強化についてはいかがでしょうか?

Aleksey ビジュアルの強化にともなって、音楽が見劣りしてしまないように、新たな試みとしてビジュアルチームと協力しながら、同レベルの高いクオリティのものを提供したいと考えています。現在では、ネイティブ5.1チャンネルに対応したサウンドを制作しています。

――Alekseyさんが気に入っているマップのBGMを教えてください。

Aleksey “MALINOVKA(マリノフカ)”と、“HIMMELSDORF(ヒメルズドルフ)”が好きですね。具体的に説明するのは難しいですが、メロディーのテーマが素晴らしいデキだと思います。これらのマップで遊ぶときは、ぜひ音楽にも注目していただきたいです。

――日本のプレイヤーに対してメッセージをお願いします。

Aleksey 私たちは、日本のプレイヤー・コミュニティーを重要だと考えています。日本のファンの方々に、スペシャルなコンテンツを提供したいですし、コラボレーションなども考えていきたいです。個人的にはいつか日本を訪れて、日本の戦車が持つ特有の音を収録し、それをゲーム内に登場させたいと考えています。


■オーディオチームの開発ルーム

 オーディオチームが実際に制作作業を行う開発ルームを拝見。チームのスタッフひとりひとりに個別の部屋が与えられ、各デスクにMIDIキーボードやミキサーなどが設置されている。簡易的な収録を行えるスタジオも備わる。

最終更新:7/10(月) 17:13
ファミ通.com

Yahoo!ニュースからのお知らせ