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機動隊ボクサー・杉田 意義ある挑戦! あと「2勝」110勝でプロへ

7/10(月) 10:00配信

デイリースポーツ

 警視庁第三機動隊所属のトップアマが、年内にもプロ転向を目指している。杉田大祐選手(28)は、激務をこなし、勤務の合間を縫って東京・五反田のワタナベジムで練習に励んでいる。今回の拳闘クラブは、セカンドキャリアの逆を行こうとしている機動隊ボクサー杉田の素顔に迫った。

 プロボクサー引退後、セカンドキャリアとして警察官になる選手は少なくない。だが、杉田は現職の機動隊員だ。昨年4月に発生した熊本地震では、現地に派遣された。「当日は休みでしたが勤務連絡が入ったので、すぐに第三機動隊に行き、深夜にバスで出発して高速で現地に行きました。24時間かかりました」と振り返る。そんな彼が、プロボクサーになろうと決めた。

 「今、アマで108勝なんです。あと2勝したらプロテストを受験しようと思っています。『110』の区切りで」と、「ひゃくとおばん」にあやかるのだ。早ければ7月末に行われる都大会で達成する見込み。副業禁止の公務員なので、ファイトマネーは受け取れないが、所属先の許可があればプロとしての活動は可能。実際に公務員ボクサーは複数存在する。

 杉田はアマエリートだ。駿台学園から東京農大と、ボクシングのエリートコースを歩んだ。高校ではインターハイベスト8、大学では全日本5位、さらに全日本大学決定戦でバンタム級、ライト級を制覇した。

 プロの道も考えたが、警察官を選んだ。「07年、学生のときにJBC(日本ボクシングコミッション)と警視庁が、警視庁採用の合同説明会(セカンドキャリア)が行われたという記事を読んで、ボクサーの体力、精神力は職務に生かせると考えて志望しました」

 だが、警視庁にはボクシング部がない。「それは分かっていました。警察学校時代の1年間はやっていません。12年に卒業して、東京都選手権に出させていただいて優勝しました。この年、全日本選手権に東京代表として5位。日本ランキングに入りました」というのが社会人ボクサー・杉田のスタートだ。プライベートで通っていた八王子中屋ジム所属選手としてだった。

 翌13年、朗報が届いた。東京国体に「警視庁所属」選手としての出場が許されたのだ。「うれしかった。それが夢だったので。何もなかったところから警視庁所属で出してもらったのは光栄でした」と、警視庁の“ユニホーム”を身につけた感激は今も忘れない。

 「14年9月に第三機動隊に入隊しまして、その年末の全日本社会人全国大会で優勝。社会人でもバンタム級で優勝しました」と、勢いに拍車がかかり、16年には同大会のライト級で優勝。「警視庁第三機動隊」と縫い込んだトランクスには、警視庁マスコットの「ピーポ君」をあしらい、警視庁所属をアピールした。

 機動隊の激務との両立は並大抵ではないはず。「ボクシングの練習は比較的短いので、勤務が終わってからや非番のときに1時間とか長くて2時間捻出できれば競技力は保てます」と言う。機動隊で行うフィジカルトレも大切な時間だ。

 ジムワークはスパーリングを重視している。「基本的には日本ランカー以上、上は世界チャンピオンですね。井上尚弥(大橋)とは今年の2月に、亀田和毅(協栄)ともやりました。13年の東京国体の前には内山高志さん(ワタナベ)ともやらせていただきました」とそうそうたる名前を挙げた。

 職場のバックアップもある。「アメフト、ラグビーのように警視庁全体でやっている部もありますが、ボクシングはそうではない。個人で頑張るところがある。機動隊としては金銭的な応援はできないが、休みを取るとかのバックアップはしている。それも杉田の強さと人柄。強さだけではだめですね」(担当幹部)

 杉田の後を追う選手も出て来た。「15年に警視庁所属の一般職員が試合に出ました。16年には五日市署の警官が準優勝。警視庁で別の所属の3人が活動している。たまに休みが合うときは一緒に練習しています」と笑顔を見せた。

 改めて、なぜプロなのかを聞いてみた。

 「社会人として、機動隊所属として2回日本一になれたので、そこで有終の美というか区切りとしてもいいと思うんですけど、機会があるならプロのリングに上がることは意義があると思う。警視庁で活躍して、ボクシングの精神力、体力を体現したい。高校、大学のボクシング部員、現役ボクサーに見てもらって就職先、セカンドキャリアの選択肢にしてほしい。ボクシングをやるかどうかは別にして、体力とか鍛えてきたことを生かせる職場だから」と熱く語った。杉田からボクシング愛、機動隊愛があふれていた。