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「分離プラン」の弱点をカバーしたau新料金プラン MVNOへの流出阻止なるか

7/10(月) 19:42配信

ITmedia Mobile

 「お客さま、1人1人に合った料金プランを導入したい」――こう語るのは、KDDIの田中孝司社長だ。同社は新料金プランとして、「auピタットプラン」「auフラットプラン」を発表。合わせて、端末の買い替えをサポートする「アップグレードプログラムEX」も導入した。まずは、その詳細を見ていこう。

【auピタットプランの料金】

●段階制とフラットプランの2つから選べる新料金プラン

 auの新料金プランは、大きく2つに分類される。1つが、春商戦に導入した学割の流れをくむ、auピタットプランだ。auピタットプランは3種類に分かれており、通話料が従量制のシンプルの場合、料金は2980円(税別、以下同)から。完全通話定額のカケホだと4480円、5分限定の通話定額のスーパーカケホだと3480円からとなる。

 料金はデータの使用量に応じて変動する仕組みで、上記の料金は1GB以下の場合。2GB、3GB、5GB、5GB超と料金が5段階に変わるのが特徴で、5GBを超えると、最大20GBまで利用できる。ここに固定回線とのセット割引である「auスマートバリュー」を組み合わせると、シンプルとスーパーカケホが2980円から、カケホが3980円からになり、さらに1年間限定の「ビッグニュースキャンペーン」も実施。新規契約や機種変更時に加入できるキャンペーンで、1年間、1000円の割引を受けられる。

 auスマートバリューやビッグニュースキャンペーンを全て受けた場合の料金は、シンプルが1980円から4980円、スーパーカケホが1980円から5480円、カケホが2980円から6480円になる。

 もう1つのauフラットプランは、データ定額の20GBと30GBをセットにした料金プランで、20GBのauフラットプラン20(シンプル)が月額6000円、30GBのauフラットプラン30(シンプル)が月額8000円。これまでの料金プランは、20GB、30GBのデータ定額と通話定額なしの基本プランを組み合わせることができなかったが、auフラットプランでは、シンプル、スーパーカケホ、カケホの3つが用意されているのも特徴だ。スーパーカケホの場合は20GBが6500円、30GBが8500円、カケホの場合は20GBが7500円、30GBが9500円となる。

 auフラットプランも、auスマートバリューや先に挙げたビッグニュースキャンペーンの対象で、それぞれ1000円ずつの割り引きを受けられる。全て適用した場合、auフラットプランのシンプルで4000円から。従来よりも大容量プランを安価に利用できるようになる。旧プランも残す形だが、「両方比べたら、新プランが有利になる」(田中氏)ように設計されているという。

●「分離プラン」による端末の割高感はオプションでフォロー

 ただし、auピタットプランとauフラットプランは、どちらも「分離プラン」という位置付け。これらのプランを選択すると、端末購入に伴って付けられる「毎月割」の対象外になる。考え方としてはドコモが夏商戦に合わせて導入した「docomo with」と同じで、端末は割り引きなしの定価になる代わりに、料金プランそのものを安価にしたものといえるだろう。

 docomo withとの違いは、田中氏が「スマホを買わなくても、プラン変更はできる」と強調したところにある。auの新プランは、「Android全機種に対応」(同)。iPhoneの場合も、ユーザーが自ら料金プランの変更をすれば、新料金プランが適用される。「Galaxy Feel」と「arrows Be」の2機種の購入にひもづいたdocomo withとは違い、特定の端末を買う必要なく、恩恵を受けられるというわけだ。

 とはいえ、毎月割がつかないと、端末の“素の価格”が丸裸になる。そのため、例えば夏モデルの「Galaxy S8」であれば、9万720円(税込、以下同)という価格がそのままユーザーに提示されてしまう。これまでは実質価格で5万7456円と見せていたことを考えると、大幅な値上げと受け取られかねない。契約時に新料金プランを適用することはできないが、iPhoneの場合、iPhone 7の32GBでは、本体価格の7万9200円なので、実質価格の2万520円の間に、5万8680円もの開きがある。

 この負担感を軽減するために、KDDIは4年の割賦を導入。「24カ月の割賦を4年間に延ばしたらどうなるのか。毎月の支払額が半分になる」(田中氏)というシンプルな発想が、その原点だ。ただし、4年だと、ユーザーが1つの端末を使う平均年数を超えてしまう。田中氏も「同じ機種を48カ月も使うのかという議論がある」と語る。この問題を解消するために4年割賦とセットにしたのが、アップグレードプログラムEXだ。

 アップグレードプログラムEXは月額390円(不課税)のオプション。加入後に24回分を支払うと、25カ月目以降の残債が免除され、好きなタイミングで機種変更することが可能になる。簡単にいえば、4年割賦を組み、2年分アップグレードプログラムEXの料金を払えば、残りの借金がチャラになるということだ。利用時には端末の下取りや、アップグレードプログラムEXへの加入を継続することが条件となるが、端末が「あたかも半額で買えたようになる」(田中氏)のは、メリットが大きい。

 先に挙げたGalaxy S8の場合、4万8600円ぶん支払えば、残債が0になり、実質価格よりも割安だ。このアップグレードプログラムEXがうまく機能すれば、分離プランを導入したからといって、端末の販売台数が大幅に落ち込むことはなくなるだろう。分離プランを乱暴に導入するのではなく、端末販売に悪影響を与えないよう、ソフトランディングの手段をきちんと用意してきた点は、評価できるポイントだ。KDDIが新プランへの移行を前提に考えている証拠ともいえるだろう。

●MVNOへの流出を食い止める切り札になるか、他社の対抗策にも要注目

 KDDIが新料金プランを導入した背景には、MVNOやY!mobileをはじめとしたサブブランドへの流出を何とかして食い止めたいという思惑がある。田中氏は、「MNOの勢いは弱まっている。お客さまのご要望に、MNOが応えられなくなっているという認識でいる」と、率直に現状を分析する。MVNOは料金が安いぶん、端末は定価で購入しなければならず、大手キャリアにも価格的な優位性はあったが、総務省のガイドラインによって、そのメリットも薄くなってしまった。この状況に対応するために用意したのが、2つの新料金プランだというわけだ。

 一方で、価格だけで純粋に対抗できているかというと、必ずしもそうではない。例えば、auピタットプランで1980円(税別)という料金を実現するためには、通話定額のないシンプルを選び、キャンペーンが適用されなければならず、スーパーカケホやカケホを選ぶと、auスマートバリューが必須になる。

 対するY!mobileやUQ mobileは、キャンペーンだけで1980円を実現しており、しかもこの料金にはY!mobileで10分、UQ mobileで5分の通話定額が含まれる。2社とも、データ容量も2年間2倍になるキャンペーンも実施しているため、単純比較ではauよりも安く、しかも多くのデータを使えることになる。そのため、新プランが出たからといって、他社からMVNOやサブブランドに移ろうと考えている人が、auを検討する可能性は低い。

 田中氏も、「他社からお客さまに来てもらうというより、MVNO、LCCに対して、われわれの弱いところをしっかりフォローするというのが狙い」だと語る。つまり、新規ユーザーの獲得よりも、既存ユーザーの引き留めに重きが置かれているということだ。確かに、auユーザーにとっては、機種変更したり、料金プランを変更したりするだけで、Y!mobileやUQ mobileに“近い”価格帯になるため、MNPの転出料や新規契約手数料、端末代といったスイッチコストを払ってまでキャリアを変えるモチベーションは低くなる。

 使ったデータ量に応じて自動的に料金が変わる仕組みも、導入しているMVNOはFREETELなど一部に限られるため、ユーザーを引き留める効果がありそうだ。実際、KDDIの調査では、ユーザーのデータ利用量は月ごとの変動が大きく、「使い切っていない月があると、無駄だと感じてしまう」(田中氏)といった結果も出ていた。田中氏も、「結果として(MVNOへの)流出は止まると思っている」と自信をのぞかせる。

 見方を変えると、端末限定で分離プランを導入したドコモに対し、KDDIは全機種で使える分離プランを用意したという格好だ。KDDIは新プランの影響を「200億円と見積もっている」(田中氏)というが、ユーザー数が多いドコモでは、影響がさらに大きくなるため、すぐに追随するのは難しいかもしれない。また、ドコモは、家族利用が前提の「シェアプラン」でお得感を打ち出していることもあり、料金体系的にも段階制プランを導入するのはハードルが高い。

 一方で、ドコモやauの分離プランが功を奏して流出が減れば、他社からユーザーを獲得しているY!mobileにとっては、死活問題になりかねない。KDDIグループのUQ mobileも、置かれている状況は同じだ。田中氏は「UQはUQで頑張ってほしい。お互い切磋琢磨(せっさたくま)して、マーケットの期待に応えていきたい」と語っていたが、分離プランの成否次第では、Y!mobileやUQ mobileなどのサブブランド側にも、何らかの対抗策が求められそうだ。

最終更新:7/10(月) 19:42
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