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大阪都構想阻止の最後の砦、9月に堺市長選

7/10(月) 14:02配信

ニュースソクラ

橋下氏と因縁の竹山市長、3期目なるか?

 東京都議選で小池百合子・都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が第1党となり、政権にも衝撃を与えている。都民ファーストとよく比較されるのが、大阪の地域政党「大阪維新の会」だ。

 2010年に旗揚げして2011年春の統一地方選でいきなり大躍進、今も大阪では高い支持を保っており、大阪は東京より一足先に新興政治勢力の浸透が進んでいる。

 その大阪で、都議選の投開票が行われた翌日から、ある選挙戦が本格的に動き出した。9月10日に告示、24日に投開票が行われる堺市長選だ。民進、自民などが推して3期目を目指す竹山修身(おさみ)市長が7月3日、堺市内のホテルで政治資金パーティーを開き、集まった約1500人の支援者とともに「選挙戦を勝ち抜こう」と気勢を上げた。

 堺市議会で第1党の「大阪維新の会」は候補者選びが迷走していたが、地元選出の永藤(ながふじ)英機・府議で最終調整に入った。4年前と同様、現職の竹山市長と維新候補の一騎打ちになる公算が大きい。

 堺市長選は、大阪と「大阪維新の会」の今後に影響する重要な選挙である。大阪維新の会は大阪府知事、大阪市長をはじめ、府内各地で首長ポストを押さえているが、府内二つ目の政令指定都市、堺市は2013年9月の堺市長選で現職の竹山市長が維新候補を破って再選を果たした。

 竹山市長は大阪維新の会の看板政策「大阪都構想」に対し、「政令指定都市を廃止して特別区に格下げするなど論外の政策」と断固反対している。維新の松井一郎知事や吉村洋文大阪市長にとってはまさに目の上のたんこぶなのだ。

 大阪市を廃止して特別区に分割する是非を問う大阪市民の住民投票は2015年5月、僅差ではあったが反対多数で否決された。しかし、その年の11月に行われた大阪府知事と大阪市長のダブル選挙は維新が勝った。

 維新の松井知事が再選され、維新の立役者である橋下徹・前市長の後継者として吉村市長が当選した。2人は「都構想に再チャレンジ」を掲げて今、来年秋に再び住民投票の実施を目指し手続きを進めている。

 堺市について振り返ると、竹山市長は、2010年に橋下知事(当時)によって公表された「大阪都構想」なるものが、「二重行政」を理由に政令指定都市を廃止して特別区に格下げする政策だと徐々に明らかになる中で、反対の立場を明確にした。

 堺市は2006年に隣の美原町を合併して悲願の政令指定都市になったばかり。たかが数年で大阪府と堺市との間に「二重行政」など存在しないというわけだ。こうした主張が堺市民に受け入れられ、2013年9月の堺市長選で竹山市長が再選された。

 大阪都構想を推進したい維新側にとって、この選挙の敗北は「府内の一選挙で維新が負けた」では片付かないかなり不都合な事態だった。都構想によって人口270万人の大阪市を廃止しようとしているのに、人口85万人の堺市が政令指定都市として残るのは、都構想の根本的な不自然さ、不完全さを象徴しているからだ。

 そこで、松井知事らは何とか堺市を都構想の協議の場に引っ張り出そうとしてきたが、竹山市長は「協議と見せかけて結局は多数決で押し切る作戦だ」と読み、都構想に関しては話し合いの場につくことすら拒んで今日に至る。

 こうした経緯から、大阪都構想に反対する大阪の野党勢力、自民、民進、共産は、堺市は「都構想阻止の最後の砦」と位置付けている。

 また、竹山市長と「大阪維新の会」の候補との選挙戦は「因縁の対決」でもある。大阪府庁の幹部職員だった竹山市長は堺市の出身で、堺市長になりたいという思いを長年持っていた。府庁の定年退職が目前となった2009年、堺市長選に出馬を決意した。

 その前年に知事に就任した上司の橋下・前知事(2011年に知事から大阪市長に鞍替え)に選挙戦で応援を依頼。タレント弁護士から政治家への華麗なる転身で府民に人気の高い知事に、自身の知名度不足を補ってもらおうと考えたのだ。

 この目論みは大当たりし、出馬表明の時点では泡沫候補扱いだった竹山市長は、3選を目指した現職の木原敬介・前堺市長を破って当選。後に木原・前堺市長は「竹山に負けたのではなく橋下に負けた」と、「我、知事に敗れたり」のタイトルで書籍を出版したほど橋下色の強い選挙戦だった。

 その後、大阪都構想が生まれ、橋下・前知事が代表となって「大阪維新の会」が生まれ、都構想に賛同できない竹山市長は、橋下・前知事と袂を分かつことになった。4年前の選挙戦で維新側から「橋下代表(当時)のお陰で堺市長になったくせに、この裏切り者!」と激しく攻撃され、竹山陣営は「初当選の時は大阪都構想も大阪維新の会も存在していなかった」と有権者に説明するのがひと苦労だったという。

 この4年前の選挙で竹山陣営のキャッチフレーズは「堺はひとつ」。大阪都構想に巻き込まれれば、堺市は廃止され特別区に分割される。中世から商人を中心として住民たちが自由、自治を貫いてきた誇り高き都市、堺を無くしていいのかという意味を込めた。

 今年9月の選挙戦も同じコンセプトで戦う予定だ。7月3日の政治資金パーティーでマイクを握った民進党の平野博文・衆院議員は「維新から堺を守れるのは竹山さんしかいません」と激励。竹山市長は「45年かかって政令市になった。堺を地図から消してはならない」と叫ぶと会場からは拍手が湧いた。

 堺市の北隣の大阪市は、4年前に時計の針が戻り、また市政を廃止して特別区に分割する協議が進む。2015年5月の住民投票で大阪市を五つの特別区に分割する特別区設置協定書案が否決されているので、松井知事、吉村・大阪市長らは「前回よりもバージョンアップした案を考える」と表明しているが、「バージョンアップ」の具体的な説明はない。

 「大阪市5区分割案」が否決されたので、4区分割案や6区分割案に変更して「バージョンアップした」と強弁するとみられている。橋下・前知事が大阪都構想を初めて提唱してから7年が過ぎた。

 言い出しっぺは大阪市長に転身した後、住民投票で負けるとさっさと政界を引退し、テレビのコメンテーターにまたも転身を遂げた。こんな大阪市を横目で見ながら、堺市の有権者はどんな審判を下すのだろうか。最大の争点が大阪都構想の是非になるのは間違いない。

 竹山市長は今年3月の堺市議会で3期目を目指して市長選に出馬すると早々に表明しており、大阪維新の会は候補者選びでは出遅れた。有権者への浸透度は今のところ竹山市長がリードしているが、維新の選挙戦は終盤のすさまじい追い上げを得意としており、最後まで目が離せない。また堺市議会第1党の維新勢力に対し、他の会派がどこまできっちりまとまって選挙戦を戦えるかも勝敗のカギになる。

■幸田 泉(ジャーナリスト)
立命館大学理工学部卒業。1989年に大手新聞に入社。大阪本社社会部で大阪府警、大阪地検など担当。東京本社社会部では警察庁などを担当。2012年から2年間、記者職を離れて大阪本社販売局に勤務。2014年に退社し、販売局での体験をベースに書いた『小説・新聞社販売局』(2015年9月、講談社)がその赤裸々さゆえにベストセラーに。

最終更新:7/10(月) 14:02
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