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島尾文学の内面に迫る 生誕100年シンポ 奄美市

7/10(月) 14:32配信

南海日日新聞

 奄美ゆかりの作家、島尾敏雄の生誕100年を記念した講演会とシンポジウムが9日、鹿児島県奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。島尾と妻ミホの出会いや生活のエピソード、残された作品などを通して2人の人間像などを考察。シンポジウムでは「特攻隊長として死を意識しながらもミホとの逢瀬を重ねながら奄美で過ごした2年間が、最も充実した時期だったのではないか」との声も寄せられるなど、パネリストはそれぞれの視点から2人の内面に迫った。NPO法人島尾敏雄顕彰会の主催。200人を超える島尾ファンが会場を訪れた。

 シンポジウムに先立ち「狂うひと『死の棘(とげ)』の妻・島尾ミホ」を執筆した梯久美子さんが「〈書く・書かれる〉という闘い~島尾敏雄と妻ミホ」と題し講演。島尾が代表作「死の棘」でミホの激しい怒りを描写した一方、ミホも自身の作品である「海辺の生と死」に島尾を登場させたことに触れ「互いを書き合うことが、2人の関係の大きな特徴」と述べた。

 今後の島尾文学研究について「多くの若い人たちが作品に触れることで、新たな研究者や評論家が出てきてほしい」と期待した。

 「島尾敏雄と奄美」と銘打ったシンポジウムでは、島尾と親交があった人、島尾文学の研係者など5人が登壇した。

 島尾文学の研究者で大阪のプール学院大学教授の西尾宣明氏は「特攻隊長としての加計呂麻島での生活の中、島尾は『生きる』とはどういうことかを発見した。作品からはそうした部分も読み取れるのでは」と考察した。

 講演した梯さんは、特攻隊長である島尾とミホの出会いについて「死を前提とした感動的な出会い」と表現し、「死にひんしていたからこそ、充実して生きられたのではないか」と述べた。

 映画「海辺の生と死」の越川道夫監督は、終戦直前に島尾に下った出撃待機命令に関して「島尾としてはミホに知られたくなかったのではないか。(後追い自殺を図ろうとする)ミホを死なせたくなかったのでは」と、島尾の心情を分析。生前に親交があった元旧名瀬市助役の築島冨士夫氏は「本土から異国のように見られていた奄美や沖縄の人々のコンプレックスをなくしてくれた」と評価し、島尾が奄美にとって忘れられない人であることを強く訴えた。

奄美の南海日日新聞

最終更新:7/10(月) 14:46
南海日日新聞