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<東松山少年事件>判決報告する…少年沈められた川、水触る幼なじみ

7/10(月) 7:31配信

埼玉新聞

 埼玉県東松山市下唐子の都幾川河川敷で昨年8月、吉見町のアルバイト井上翼さん=当時(16)=の遺体が見つかった事件で、傷害致死の罪に問われた無職少年(18)の裁判員裁判の判決が11日、さいたま地裁(栗原正史裁判長)で言い渡される。「内容を聞くのはつらかったけど、翼の苦しみが分かった」。初公判から傍聴を続けてきた井上さんの幼なじみの男性(18)はそう話し、判決を見届けた後、井上さんに報告するつもりでいる。

 男性は初公判から欠かさず、裁判所を訪れた。「傍聴することで、翼がいない現実を突き付けられるのではないか」。裁判の内容に耳を傾けるには覚悟が必要だった。それでも、「翼に報告するため」と自然に足が向いた。

 公判で明らかになったのは、男性が思っていた以上に凄惨(せいさん)なものだった。検察側の証拠によると、井上さんは少年らから暴行を受けて意識がなくなった後、再び川に沈められるなどして、そのまま河川敷に放置されたとされる。公判中、男性は耐え切れず、法廷から何度も抜け出そうとしたが、傍聴席でじっと我慢した。

 6月29日に行われた公判では、井上さんの母親の陳述書が読み上げられた。息子を失った苦しみを聞いた男性は「俺が翼を守ってあげられなかった。親に申し訳ない」と法廷で涙を流した。検察側の求刑は懲役6年以上~10年以下の不定期刑、弁護側は保護処分が相当と主張している。少年は公判で謝罪の弁を口にしたが、男性は「心からの反省なのか信用はできない。裁判を終えても翼の事件に終わりはないし、俺はずっと向き合っていく」と語る。

 論告求刑公判が終わった今月3日、男性は現場となった河川敷に向かい、何も言わず都幾川を流れる水を触った。事件から約10カ月が経過した現在も、時々現場を訪れては手を合わせ、「翼が最後に触れた水だから」と川の水を触る。なぜ、意識を失った翼を放置して立ち去ったのか。なぜ、救急車を呼ばなかったのか。「せめて温かい布団で寝かせてあげたかった」。傍聴したことで、余計に悔しさが込み上げた。

 男性は小学生の頃から井上さんと一緒だった。いつも男性の後ろをくっついて歩いてきた。けんかもたくさんした。弟みたいな存在だった。事件後は、「翼と過ごした日を思い出にしたくない」と現実を受け入れられなかった。

 判決を前に、男性は井上さんに代わって少年らに、「かばい合うな、正直に話して」と言いたいという。そして、二度と少年による悲惨な事件が繰り返されないことを願った。「もしどこか別の場所で同じようなことが起きたら、東松山の事件を思い出してほしい。暴力で解決しないでほしい」

最終更新:7/10(月) 7:31
埼玉新聞