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[寄稿]批判票の行方

7/10(月) 6:58配信

ハンギョレ新聞

 7月2日に行われた東京都議会選挙で、政権与党の自民党は23議席という最悪の大敗を喫した。この選挙は首都、東京の地方選挙であり、卸売市場の立地など地域固有の政策課題も存在したが、それらは技術的な問題で、一般市民には判断しにくいものである。大半の有権者は、政治の現状に対する認識や政党に対する評価を表明したということができる。

 2012年末の発足以来、第2次安倍政権は高い支持率を保ち、自民党は国政選挙で圧勝を続けた。国政は安倍一強体制とも言われた。しかし、今年の通常国会では、基本的人権を侵害する恐れのある共謀罪法案を強行採決により成立させた。また、安倍首相と親しかった、あるいは親しい人物が経営する学校法人に、国有地がただ同然で払い下げられたり、獣医学部の開設で特別な便宜が図られたりしたという疑惑について、政府は一切まともな説明をせず、腐敗を隠蔽した。安倍政権の傲りや腐敗に対して、東京都民は都議選という機会を利用してようやく批判の声を上げた。

 安倍政治が日本の憲法と民主主義を破壊してきたことを批判してきた者にとって、市民が安倍政治に対する批判を共有したことはとりあえず喜ぶべきことである。しかし、安倍政治を転換する道筋はまだ不明確であり、課題は多い。

 まず、自民党に代わって政権を担うべき野党第一党の民進党が、安倍政治にとって代わる気概や戦略を見せないことである。都議選において、民進党の候補は同党の不人気を恐れ、小池都知事率いる都民ファーストの会に次々と移籍し、民進党も5議席と惨敗した。にもかかわらず、蓮舫代表、野田幹事長は敗北の責任を取ろうとしない。安倍政治に対する批判票がなぜ民進党に来なかったのかを反省、分析することなしに、同党の立て直しも政治の転換もあり得ない。

 第2の問題は、批判票の受け皿となった都民ファーストの会という地域政党が何者なのか、明らかでないという点である。この党から出馬して当選した議員は、小池人気に便乗して議員になりたいというだけの人物が多い。自民党や民進党を離れて当選するためだけにこの党に入った政治家も多い。小池都知事は長年自民党の国会議員を務め、憲法改正を主張してきた。都知事就任後も自民党の党籍を残していたわけで、安倍首相の後に日本最初の女性首相の座を目指しているとも言われている。小池氏が新たな政治勢力を立ち上げれば既存の野党をはるかに凌駕する存在になるだろう。しかし、彼女が国政に復帰したとしても、安倍政権と同じ方向の政治を進めるために、安倍首相にとって代わるにすぎない。

 もう1つは、都民ファーストという名前のいかがわしさである。舛添要一前知事は5月に久しぶりにメディアに登場し、朝日新聞のインタビューでは、都立高校の跡地を韓国人学校の用地に提供しようとしたことが、同氏への異常なバッシングの発端だったと回想している。現在都民ファーストの指導的議員となった都議は、この時に韓国人ではなく都民のために都有地を使えと主張した。都民ファーストという名称は、その始まりからして、外国人差別と偏狭な自国中心主義に染まっているのである。したがって、都民ファーストの会が国政レベルで国民ファーストという政党を作れば、それは西欧で猖獗を極める排外主義的ポピュリズム政党になる危険性が大きいと言わなければならない。

 安倍首相の民主主義破壊に対する批判の声が大きくなったことは、日本政治にとって一歩前進である。しかし、その批判のエネルギーが穏健な民主政治の再生につながるのか、より破壊的な排外主義につながるのか、今は大きな分かれ目である。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7/10(月) 6:58
ハンギョレ新聞