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黒石人形ねぷた3台…ピンチ/担い手、資金足りず

7/10(月) 11:46配信

Web東奥

 7月30日に開幕する黒石ねぷた祭り(黒石青年会議所主催)。扇と人形、両方のねぷたを一度に楽しめるのが黒石ならではの魅力だが近年、人形の出陣台数が減り続けている。今年は昨年より2台減って3台となり、過去最少の見通しだという。どうしてなのか。
 「そこの色付け、ちょっと待って。俺がやる」。青年会議所メンバーのおぼつかない手元を見かねて、ねぷた絵師の三浦雄一さん(48)=同市=が手を伸ばした。6月中旬、スポカルイン黒石で開かれた同青年会議所(蛭名勝理事長)の定例会。人形ねぷたの制作に長年携わる三浦さんを招き勉強会を開いた。
 参加者が骨組みに紙を貼り、三浦さんの指導を受けながら慎重に絵筆を走らせること約3時間。事前に大半の作業を終わらせていた小型の人形ねぷたでさえ、約20人がかりでようやく仕上がった。「こんなに手間が掛かるとは…」。メンバーから声が上がった。
 人形は扇に比べて制作に手間が掛かり割高だ。しかも、少子高齢化と人口減少の影響で祭りの担い手が不足している、と関係者は口をそろえる。
 人形の制作にかかる期間は約4カ月。さまざまな工程の中で、最も人手が必要なのが紙貼りだ。三浦さんの住む緑町では以前、住民が協力して紙を貼っていたが、高齢化の影響か、徐々に協力を得にくくなった。20年以上、三浦さんが制作を続けてきた同町だが、今年は人手不足などを理由に、祭りに参加しないことを決めた。
 高い制作費もネックという。関係者によると、扇の制作費が20万~40万円なのに対し、人形は40万~90万円。運行団体の運営費は会費や住民の寄付金で賄われており、資金集めは大変だ。
 このままでは黒石から人形ねぷたが消えかねない-と危機感を募らせた関係者は、対策に乗り出している。市は今年から人形の制作団体への補助金の上限を12万円から20万円に引き上げた。また、子どもに祭り参加を促そうと、18歳未満の子どもが制作した前ねぷた1台に1万円の補助を出す。松井良商工観光部長は「今後もできることから対応したい」と話す。
 小型の人形ねぷたづくりの勉強会は、同青年会議所として初の試みだった。台数減少対策を考えるために制作の苦労を知り、制作者の裾野を広げようという企画。運行の予定はないが、展示を検討している。
 同青年会議所の浅原宏之・祭り実行委員長は「市の補助はありがたい。主催者としても運行団体や参加者の意見をもっと聞き、人形ねぷた減少を食い止める対策を考えたい」と語った。
 ◇「台数目標必要」の声も
 黒石ねぷた祭りは出陣台数の多さで知られ、最盛期の1980~90年代には70~80台のねぷたが合同運行し夜の街を彩った。
 黒石市によると、統計の残る96年に扇ねぷたと人形ねぷたを合わせた総出陣台数(子どもねぷたを除く)は75台。そのうち人形は17台だった。だが、2010年に総台数が70台を割ると、その後も減少。今年は昨年から2台減り、過去最少の54台にとどまる見通しだ。
 そもそも、黒石はなぜ人形と扇が混在しているのか。黒石ねぷた保存会の中田伸一会長の説明はこうだ。
 ねぶた、ねぷたの起源は津軽地方一帯で行われていた七夕行事。江戸時代や明治期の資料によると、山車の種類はさまざまで、角灯籠やヒト型、筆記具を模したものもあった。
 青森ねぶたと弘前ねぷたが1980(昭和55)年に国の重要無形民俗文化財の指定を受ける際、それぞれ特色を打ち出そうと、青森は人形、弘前は扇、と山車のすみ分けが進んだ。黒石には、そうした動きはなく、従来通り人形と扇が混在した祭りの形が定着した、という。
 中田会長は「ある程度台数が減るのは仕方がない。だが、質の高い山車、質の高い祭りを目指し続ける必要がある」とし、人形ねぷたの目標台数を主催者側が設定する必要性を指摘した。

東奥日報社

最終更新:7/10(月) 11:46
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