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景気ウォッチャー調査(17年6月)~節目となる50まで改善~

7/11(火) 18:20配信

ZUU online

■景気の現状判断DI(季節調整値):3ヵ月連続で改善し、節目となる50に達する

7月10日に内閣府から公表された17年6月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は50.0と前月から+1.4ポイント上昇し、3ヵ月連続の改善となった。2017年以降、節目となる50を下回っていたものの、春以降企業関連を中心に景況感は持ち直し、節目となる50に達した。なお、内閣府は、基調判断を「持ち直しが続いている」に据え置いた。

今回の調査では、家計関連は、引き続き好調なインバウンド需要に加え、コンビニエンスストアなど小売店を中心に、空梅雨のため客数が伸びたことが景況感を押し上げた。企業関連は、金属製品や鉄鋼業などから原材料価格の上昇を懸念する声も聞かれたが、受注は既存のものだけでなく、新規も増えている企業が多くみられた。なお、今回の調査は6月25日から月末に実施されているため、7月4日の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験や、九州北部地方での記録的な豪雨による影響は織り込まれていない。

■引き続き好調なインバウンドに、空梅雨が景況感を押し上げ

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+1.2ポイント)、企業動向関連(同+1.0ポイント)、雇用関連(同+3.0ポイント)全ての景況感が改善した。家計動向関連では、小売関連(前月差+2.2ポイント)、住宅関連(同+2.7ポイント)が大きく改善したが、飲食関連(同▲0.2ポイント)、サービス関連(同▲0.8ポイント)が悪化した。

コメントをみると、家計動向関連では「例年6月は客の動きが良くないが、今年は雨が少ないので来客数は前年の120%前後で推移している。週末にはサンクスフェアとしてミニイベントを開催しているため、平日に比べて来客数が増えている」(中国・その他専門店[土産物])や、「コンビニを複数経営しているが、今年は梅雨でも雨が少なく、気温が高いため、前年と比べて来客数が増加している」(南関東・コンビニ)など、梅雨入り後も天候の良い日が多かったため、小売店を中心に来客数の伸びに言及するコメントが目立った。また、「特選ブランドや時計・宝飾等の高額品の動きが顕著であるとともに、インバウンドによる訪日観光客によって化粧品等の消費財の動きが大きく、売上全体をけん引している」(東海・百貨店)など、インバウンド需要は好調を維持しており、特に化粧品の売上が伸びているようだ。

住宅関連では、「特に変化は見受けられず、横ばいの状況である」(東海・住宅販売会社)など、景況感に大きな変化がないというコメントが多かった。但し、「分譲マンションのモデルルームへの来場客の様子として、最近は商談にかかる時間がやや長くなってきている。ただ、成約率は安定しており、業況が悪化しているわけではない」(北海道・住宅販売会社)や「分譲マンションの購入検討者は、一部で前年よりも増加している。価格高騰の影響で苦戦する動きもみられるが、低金利のほか、更なる価格上昇を前に購入意欲が高まっている」(近畿・その他住宅[情報誌])などのコメントも一部にみられ、商談に時間が掛かるが、消費者の購入意欲は大きく落ち込んでいる訳ではないようだ。

企業動向関連では、製造業(前月差+1.1ポイント)、非製造業(同+1.1ポイント)ともに改善した。コメントをみると、「鋼材価格の値上がり分を転嫁できていない。自動車関連では転嫁が進んでいるが、それ以外では大手ユーザーの抵抗が強い」(近畿・金属製品製造業)などのように、原材料費の値上がりを懸念するコメントも金属製品や鉄鋼業などでみられたが、「新たな取引先からの引き合いが確実に増えており、新規受注に至る確度も高くなっている。既存取引先からの受注も底堅く推移してきている」(北関東・一般機械器具製造業)など、前月に引き続き受注の増加に言及するコメントが目立った。

雇用関連では、「求人全体から見た正社員求人の割合が、上昇傾向にある」(南関東・職業安定所)や、「転職サイトやアルバイトサイトを利用する企業で一定期間後に正社員雇用すると記載するところが増えている。また、これまでの派遣社員雇用から正社員雇用に切替える企業も多い」(中国・求人情報誌製作会社)など、労働需給が逼迫していく中で、待遇の良い募集内容も増えているようだ。

■景気の先行き判断DI(季節調整値):3ヵ月連続で改善し、節目となる50を上回る。

50.5(前月差+0.9ポイント)と3ヵ月連続の改善となった。先行きの景況感は2017年度に入り、持ち直しており、4ヵ月ぶりに節目となる50を上回った。先行き判断DIの内訳をみると、雇用関連(同▲1.8ポイント)が悪化したが、家計動向関連(前月差+1.3ポイント)、企業動向関連(同+0.8ポイント)が改善した。

家計動向関連では、「フルモデルチェンジ、マイナーチェンジの新車発表が控えている。販売機会を逃さないよう積極的に宣伝、誘致活動を行い新車販売台数を確保していく」(九州・乗用車販売店)など、新型車の投入による販売増に期待する乗用車販売店のコメントが目立った。また、「消費に対するマインドは引き続き厳しさがあるものの、夏のボーナスにある程度の期待はしている」(東北・一般小売店[書籍])など、夏のボーナスへの期待も景況感を押し上げた。一方で、「続いている世界情勢不安などが、販売量や客の動きに影響している。この傾向はしばらく続くとみている」(東北・旅行代理店)など、燻っている地政学リスクにより、海外旅行に悪影響が出ているというコメントもみられた。

企業動向関連では、「新規案件が続々と立ち上がり、現在金型を製作中である。数か月後の量産に期待している」(南関東・プラスチック製品製造業)など、今後も受注の増加が見込まれているとするコメントが目立った。一方で、「供給能力以上の受注にはリスクがあるため、今後は受注条件を見極めて受注する必要がある」(東北・通信業)や「現状の景気が続くとみているが、受注は小口工事が多く、技術者の不足もあり、納期やコスト面を心配している」(東北・建設業)など、供給能力に制約がある中、納期やコスト面など受注の内容を吟味する必要があるとするコメントもみられた。

雇用関連では、「製造業を中心に回復傾向となっている。ただし、新規採用者が入社した後の採用のため、派遣での対応が目立っている」(東北・民間職業紹介機関)など、製造業の求人数が増えているというコメントが目立った。一方で、「求人側の採用意欲は依然として高いが、ミスマッチによる人手不足が続いている状態である」(東北・職業安定所)など、求職者と求人の条件が合わず、ミスマッチが起きているというコメントもみられた。

なお、6月については、北朝鮮は短距離のミサイル数発を日本海に発射した上旬以降、発射実験を行わなかったため、北朝鮮情勢を懸念するコメントは少なかった。但し、弾道ミサイルの発射実験を毎週のように行っていた4,5月については、「北朝鮮情勢の不透明感、欧州での相次ぐテロ事件で、海外旅行の需要の低迷が懸念される」(九州・旅行代理店/5月)や「北朝鮮の動きが定まらず、海外渡航の客は慎重にならざるを得ない。国内旅行も動きは低調なままである」(東海・旅行代理店/4月)など旅行代理店を中心に景気の先行きの判断理由として、北朝鮮情勢を挙げるコメントが多かった。7月に入り、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行っており、今後、先行きの景況感の重しになる可能性がある。

景況感は2017年度に入り、持ち直しの動きがみられる。先行きについても、人手不足が企業活動の制約になる懸念があるが、受注は引き続き好調であり、賃金の緩やかな上昇を背景に消費も緩やかに回復してきており、景況感が改善に向かうことが見込まれる。しかし、記録的な豪雨により、土砂災害や道路の損壊が起きた九州地方での景況感の悪化や、北朝鮮情勢といった地政学リスクが燻り、改善のペースは鈍化するだろう。

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白波瀨康雄(しらはせやすお)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

最終更新:7/11(火) 18:20
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