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<認知症>歌で寄り添う…ケアマネ、自作の歌弾き語り

7/11(火) 14:40配信

毎日新聞

 ケアマネジャーの仕事の傍ら大阪市内の高齢者施設を回り「泉屋」の名でボランティアの弾き語りを続ける木本泉さん(55)=堺市堺区=が認知症をテーマにした歌を作った。親の介護や仕事の経験から生まれた。親の認知症を受け入れ、寄り添う子供の心情を描き、歌を聴いたお年寄りや家族を介護する人らの共感を呼んでいる。

 ◇わからなくていい、私が支える

 今は大阪市西成区の介護事業所で働き、利用者には釜ケ崎の元日雇い労働者で認知症の人も多い。自宅で認知症の義父と同居する。

 10代にギターを始めたが、就職後は多忙のため長く遠ざかっていた。6年前、知人にデイサービス施設のクリスマス会での演奏を頼まれた。その日の出来事が転機になった。

 往年のフォークソング「花嫁」を歌った。曲が2番にさしかかると、客席にいた80代半ばくらいの女性が歌い始めた。すらすらと歌詞が出てきて驚いた。女性は普段、ほとんど黙っていて、同じ施設の職員や利用者も声を聞いたことがなかったという。「心で覚えているんだ」と感動した。

 その後、高齢者施設で歌うように。口コミで評判が伝わり依頼が相次ぎ、既に30回以上出演。昨秋「認知症を理解すれば、発症におびえる人の不安も和らぐ」と歌を作った。題名は「わすれても、わすれないこと」。ある一節では、認知症になった親の不安な気持ちを、スーパーで迷子になった子供時代の自身の記憶と重ね合わせた。

 別の一節には、認知症のお年寄りが自宅にいるのに「家に帰る」と徘徊(はいかい)してしまう、という介護現場でよく聞くエピソードを織り交ぜた。

 先月、木本さんは大阪市住吉区の老人福祉センターで演奏した。歌を聴いた80代の女性は「認知症の友人を思い、じんとした。自分がそうなったら、子供はどう思うかとも考えた」と語った。「僕の歌を喜んでくれるお年寄りがいるのがうれしい」と木本さんは歌い続ける。【林由紀子】

…………………………

 ◇「わすれても、わすれないこと」

わたしのことがわからなくなったんだね

そんな遠くを見る目で見ないでよ

もう違う人になったの

それとも今までのあなたなの

応えてくれない毎日は

とてもつらい日々でした

わたしがちっちゃい頃

スーパーで迷子になったよね

買い物に夢中で

わたしを置いてきぼりにして

店員さんに囲まれて

心細くあなたを待っていた

今のあなたは

きっとそんな気持ちなんだろうね

わたしのことがわからなくてもいいよ

あなたにとって安心できる人になりたい

あなたを支えさせてください

今までわたしにそうしてくれたように

あなたを見守らせてください

この家でこの町であなたらしく暮らしてね

「もう帰らなきゃ」と

不安がるあなたの手を引いて

近所をひと回り

お月さまを眺めながら

昔話をしながら

あなたは……笑ってる

あの時迷子になったねと

笑っている

(略)

わすれても

こころの中ではわすれない

最終更新:7/11(火) 14:40
毎日新聞