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IS、テロ組織の常識覆す 「旅券作成、省庁設け税制まで導入」

7/11(火) 7:55配信

産経新聞

 ■恐怖で支配 欧米にも支持者

 イラク北部モスルという重要拠点を失ったイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)は、テロ組織に対する常識を多くの点で覆した。新たな手法は中東地域だけでなく欧米諸国でも支持者を引き寄せ、テロ組織との戦いを一層、困難なものにした側面は否めない。(アルビル=イラク北部 佐藤貴生)

 ◆金貨製造、裁判所も

 記者(佐藤)が足を踏み入れたモスルは破壊され尽くし、最大拠点としての面影はなかったが、ISは全盛期、この地であたかも国家のような体制を目指していた形跡がある。旅券の作成はその一例だ。

 欧米やアラブのメディアによると、モスルで印刷された旅券には、「所有者に害を与えた者には軍を派遣する」との一文が添えられ、イラクとシリアの国境周辺を中心に1万冊前後、配られるとの情報も出ていたという。

 またISが製造、発行したナンバープレートをつけた車が実際に街を走る映像もあったほか「財務局」の名を冠した金貨をデザインしていたとの報道もある。

 英BBCテレビ(電子版)は2014年、各種の省庁に加えて裁判所も設け、初歩的ながら税制まで導入していた-とする在カタールの研究者の分析を紹介している。

 街を制圧すると、すぐに水や小麦粉などを中央から配給するシステムを導入し、住民が依存せざるを得ないよう仕向けていたとしている。

 ◆資金源は湾岸?

 ISがモスルを占拠した14年、イラク軍などは武器を捨てて敗走したといわれる。クルド人の記者(29)は、ISはこのとき倉庫にあった大量の武器弾薬類を手に入れ、イラク軍などの巻き返しに応戦したとの見方を示す。しかし、それだけでここまで抵抗し得たとは考えにくい。

 先の研究者は直接、ISに資金を供給したとは考えられないが、結果としてサウジアラビアやカタールなどペルシャ湾岸諸国の資金や兵器類が流入した可能性はあると分析している。

 シリアについていえば、アサド大統領は国内少数派でイスラム教シーア派に分類されるアラウィ派が出身母体だ。スンニ派大国で豊富なオイルマネーを握るサウジなどが「アサド後」をにらんでスンニ派に属する過激派勢力を支援してきた背景があり、そこからISに流れた-との見解だ。一時は原油輸出まで手がけていたとされる豊富な資金を擁し、国内外の経済サイクルに加わろうという狡猾(こうかつ)な一面が浮かび上がる。

 ◆「第二のIS」懸念

 モスルはスンニ派住民が多く住むとされ、記者が解放直前の今月3日に訪れた際には、「ISは市街地を占拠する際、シーア派主導の中央政府から住民を保護するとの口実で取り入った」(連邦警察の当局者)という話を聞いた。

 しかし、いったん占拠した後は住民を傷つけ、殺害することもいとわぬ残虐ぶりで住民を恐怖をもって支配した。

 ひげを伸ばすよう強制したほか、「たばこを吸っただけで殺害した」(モスル西部の68歳の女性)との証言もある。

 こうした組織にひかれる者が後を絶たないのが世界の現状だ。支持者の思考回路を分析し、国際社会が一致して根絶に向けた対策を取らない限り、「第二のIS」が頭をもたげる懸念は払拭できない。

最終更新:7/11(火) 7:55
産経新聞