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<米国>LNGの輸出が急増 トランプ氏、売り込み躍起

7/11(火) 20:29配信

毎日新聞

 米国の液化天然ガス(LNG)の輸出が急増している。豊富なシェールガスを海上輸送する液化・輸出施設が整い始めたためで、トランプ大統領も貿易赤字削減や対ロシアけん制の方策として、中国やインド、欧州諸国へと売り込みをかける。LNGの価格決定は長年、中東が主導権を握ってきたが、新たな輸出国として米国が登場したことで市場に構造変化をもたらす可能性がある。【ヒューストンで清水憲司】

 エネルギー企業が集まる米南部テキサス州ヒューストンから車で東に約1時間半。ルイジアナ州との境にあるLNG輸出基地「サビンパス」には、輸送船が巨大なタンクの脇に横付けされ、出発の準備を進めていた。

 サビンパスは昨年、米本土で最初のLNG液化・輸出基地として運用を開始。米国産LNGは日本向けがほとんどだったが、石炭消費の削減を目指す中国のほか、インドやブラジルなどが輸出先に加わり、今年6月には天然ガスをロシアに依存するオランダやポーランドへの輸出も始まった。現在はオーストラリアを除く各大陸の計23カ国へ輸出している。

 国際ガス連盟によると、昨年の各国別輸出量は中東カタールが世界市場の3割近くを押さえ、オーストラリアが約2割で続く。米国のシェアはわずか1.1%だったが、国内にあふれるシェールガスを抱え、今年の輸出ペースは昨年の5倍以上。さらに日本企業が参画する計画も含め4カ所で輸出基地が建設中で、サビンパスを運営する米LNG大手シェニエール・エナジーのアナトール・フェイジン副社長は「2020年には米国のシェアは2割近くに達し、世界3位に浮上する」と予想する。

 トランプ政権は5月、米国の対中貿易赤字削減に向けた「100日行動計画」の一環として、中国企業にLNGの長期契約を認可すると約束。6月にはインド、韓国の両首脳にそれぞれ購入を呼びかけた。国内の新たな基地建設も後押しする方針で、輸出拡大に躍起だ。

 ◇価格交渉、主導権交代も

 安価なシェールガスを使う米国産のLNGは「LNG価格を引き下げる救世主」(業界関係者)と期待されている。日本など輸入国にとっては調達先の多様化につながり、中東のLNG供給国との価格交渉で主導権を握る可能性があるからだ。

 米石油・ガス調査会社ポーテンのジェイソン・フィール氏によると、アジア向け米国産LNGは液化や輸送コストがかかるため、100万BTU(英国熱量単位)あたり8ドル前後。オーストラリアなどの増産で国際的に価格が下落する中、市場の一部では6~7ドルのLNGも出回っている。フィール氏は「現状では米国産はあまり価格競争力がなく、米政府の支援も価格抑制効果はほとんどない」と分析する。

 一方、米ライス大学のケネス・メドロック教授は「米豪の輸出拡大が、中東主導の市場構造を大きく変えつつある」と話す。日本の電力・ガス会社は安定を重視して中東のLNG供給国と割高な長期契約を結ぶケースが多かったが、今後は米国産などへの切り替えをちらつかせ、中東諸国に価格引き下げを要求できるためだ。メドロック氏は「買い手有利の状況が続く中、世界最大の輸入国である日本はアジア市場の価格決定を主導できるチャンスがある」と指摘している。

 ◇液化天然ガス(LNG)

 地下から採掘した天然ガスを専用タンカーで運ぶため、マイナス160度程度まで冷却し液化したもの。体積が600分の1となるため長距離の海上輸送に向く。消費地の貯蔵タンクで再びガスに戻し、火力発電のほか、都市ガスとして利用する。

 石炭や石油に比べ硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)の排出が少ないのが特徴。海外と天然ガスパイプラインがない日本は世界1位のLNG輸入国となっている。輸入先のトップは豪州(26・9%)で、マレーシア(18.6%)、カタール(14.5%)、ロシア(8.8%)と続く。LNGの輸入国は日本のほか、2位韓国、3位中国などアジア諸国が過半を占める。

最終更新:7/12(水) 0:00
毎日新聞