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物流トラック離れで貨物列車「復権」…JR、初の営業黒字 企業専用の列車続々

7/11(火) 15:03配信

産経新聞

 長距離トラックの運転手不足を背景に、貨物列車が注目を浴びている。輸送量は一本の列車で最大650トンと大型の10トントラック65台分を誇り、二酸化炭素(CO2)排出量はトラック輸送の8分の1と環境にも優しい。自社の荷物のみを運ぶ専用列車を仕立てる運送会社やメーカーも増え、JR貨物は平成29年3月期決算の鉄道事業で営業損益が5億円の黒字となり、事業別の開示を始めた19年3月期以降で初の黒字化を達成した。

 ◆輸送量10トン車65台分

 ブルートレインなど旅客用の夜行列車がほとんど姿を消した夜のJR東海道・山陽線。現在は片道だけで約50本の貨物列車が行き交う。その中で最高時速130キロというJR貨物ナンバーワンのスピードを誇るのが、佐川急便専用列車の「スーパーレールカーゴ」だ。

 下りは東京貨物ターミナル(東京都品川区)を午後11時14分に発車し、大阪の安治川口(大阪市此花区)に翌日の午前5時26分に到着する。「SAGAWA」のロゴ入りで統一されたコンテナを載せて走る距離は約560キロで、平均時速90キロを超える韋駄天(いだてん)ぶりを発揮している。

 運行開始は16年。当時はドライバー不足はそれほど深刻ではなく、CO2排出量の削減が大きな目的だった。速さの秘密は世界初の「貨物電車」であることだ。一般の貨物列車は貨車を機関車が牽引(けんいん)するが、スーパーレールカーゴは16両編成のうち、前後2両ずつの計4両がモーター付き車両で、中間の12両が付随車。1編成に大型コンテナ28個が載せられ、積載量は大型トラック28台分に相当する。

 ◆真夜中の佐川VS福通

 専用列車は福山通運も走らせている。25年から東京-大阪間、27年から東京-福山間、そして今年5月からは3本目として名古屋-福岡間での運行を開始した。愛称名は「福山レールエクスプレス」。緑色に統一されたコンテナがずらりと並ぶ編成美は鉄道ファンの人気を得ている。

 東京発の大阪行きは東京貨物ターミナルを午後10時47分に発車し、吹田貨物ターミナル(大阪府吹田市)には翌日の午前5時34分に到着する。こちらは電気機関車が引っ張っている関係で最高速度は110キロ。このため、東京貨物ターミナルを27分後に出発した佐川のスーパーレールカーゴに途中で抜かれてしまう。ダイヤが決まっているため、福山レールエクスプレスはどれだけ頑張っても逃げ切ることはない。

 ただ、こちらは1編成に大型コンテナ40個が載せられ、積載量は大型トラック40台分。輸送量では福山レールエクスプレスに軍配が上がる。

 ◆運転手不足が追い風

 一方、トヨタ自動車も専用列車「トヨタロングパスエクスプレス」を持っている。愛知周辺でつくられた自動車部品を岩手工場に運ぶため、18年に1日2往復で誕生した。その後、1往復になったが、この春に復活。新型スポーツ用多目的車(SUV)「C-HR」の生産に合わせたものだ。

 アサヒビールとキリンビールは今年1月から、吹田貨物ターミナルから金沢貨物ターミナル(金沢市)まで貨物列車を使ったビール系飲料の共同輸送を開始。西濃運輸は長距離トラック定期便の多くを鉄道輸送に切り替えることを決めた。

 今後もトラック輸送を鉄道や船舶に移す「モーダルシフト」は進むとみられ、営業強化やコストの見直しなどを進めてきたJR貨物の石田忠正会長は「トラック運転手の不足は追い風。鉄道貨物の復権へとつなげたい」と力を込める。

最終更新:7/11(火) 15:18
産経新聞