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大型、4K化が加速するテレビ市場、有機ELも登場

7/11(火) 21:04配信

EE Times Japan

 EE Times Japanでは、IHSマークイットテクノロジーのアナリストにインタビューし、ディスプレイ、パネル産業の現状とこれからを連載形式でお届けしている。

【「画面サイズ別、パネル別、搭載機能別にみるテレビ出荷台数実績と予測」などその他の画像はこちらから】

 連載第3回となる今回のテーマはテレビ(完成品)だ。IHS Markit テクノロジー 上席アナリストを務める鳥居寿一氏に聞いた。

■2017年 世界テレビ市場の注目トレンド

 2017年の世界テレビ市場トレンドは、ひと言で言えば「テレビメーカーは、大型化と高解像度化を積極的に進める年」になる。

 薄型テレビの歴史を少し振り返ると、10年ほど前は“液晶ディスプレイかプラズマディスプレイか”、“32型か40型か”などの対立軸が存在したが、結局、液晶テレビが生き残り、画面サイズも50型を超えるような大型化が進んだ。価格も随分と下がり、価格競争だけが市場トレンドのように見えてしまう成熟した市場になりつつある。

 価格競争以外の部分では過去、3D表示機能や倍速表示機能、LEDバックライトといった新仕様も登場したが、結果的にそれらの機能は、樹木に例えるならば“枝葉”の部分での仕様に過ぎなかった。倍速表示などは一部存在しているが、このままいくと製品ごとの違いは分からなくなり、顧客が対価を支払うような付加価値ポイントがなくなってしまう。結局は、価格競争主体の市場となっている。

 価格競争は今後も続くが、その中でも樹木の“幹”に相当する部分で、消費者が価値を見いだしやすく、少しでも価格に転嫁できる付加価値ポイントとして存在しているのは、大型化、高精細化であり、各テレビメーカーは積極的に大型化、高精細化を進めている。

■トレンド1:大型化

 大型化については、画面が大きいほど高いと消費者には分かりやすい価値である。

 2017年1〜3月の出荷実績(台数ベース)を見ると、中国では全テレビの出荷台数に占める55型以上の大型テレビの割合は36%に及ぶ。そして中国同様、住居が広い北米が次いで高く30%だ。日本については約10%にとどまるが、全世界では、20%以上と右肩上がりで増えている。今後も世界的に大型化が進むのは間違いない。

 とりわけ、中国と北米では55型以上のより大型のテレビ普及が進んでいくことになる。中国や北米における2017年で出荷ベースでの平均画面サイズは46型前後だが、これが2020〜2021年には、50型を超える予測だ。日本は現状30型を超える程度。いかに中国、北米で大型化が進んでいくかが分かってもらえるだろう。

 現状、中国での55型テレビは3000元台、日本円にして6万円ほどの低価格製品が登場してきている。これも、2014年以降、中国のパネルメーカーが55型パネルを8枚採りできる8.5世代のラインを立ち上げてきたからこそ、価格が下がり、普及を促した。これと同様のことが、2018年以降、10世代ラインの投資により、65型テレビでも起こるとみている。

■トレンド2:高精細化

 高精細化は、パネルとしてHD(1280×720画素)からフルHD(1920×1080画素)へと高精細化され、現在、世界的に4K(3840×2160画素)化が加速度的に進んでいる。

 当初は、4K対応コンテンツがない中で、4K対応テレビの普及を疑問視する見方も多少あったが、パネルメーカー、テレビメーカー、そして販売店も少しでも値段の高い製品を売りたいという狙いがあり、4Kに注力し、結果的にハードウェアが先行して普及してきた。とはいえ、コンテンツもNetflixを筆頭に、Amazon(=Prime Video)やYouTubeなどネット経由のコンテンツ配信サービスでの4K化が進んできた。放送も、NHKが4K、8Kの本格放送を2018年末に始める見込みで、ハードウェアに追い付きつつある。

 全世界の4K化率は現状、全テレビ出荷の32%に達した。ちなみに45型以上に限定した4K化率は、全世界で68%、日本では85%。中国でも79%に達している。

■大型化、高精細化以外のトレンドは?

 大型化、高精細化のように樹木の“幹”の部分ではないものの、“太い枝葉”といえるような差異化ポイント、付加価値ポイントとして、HDR(ハイダイナミックレンジ)機能と、スマート化、すなわちネット対応がある。

 4Kの映像も、離れて見ればフルHDとの区別は付きにくくなるが、HDRはハッキリと違いが分かり、消費者に価値として認識されやすい。HDRは4Kコンテンツとともに普及してくるだろう。

 ネットにつながるスマートテレビについては、日本国内では他地域と比べると普及していないが、中国や北米、欧州さらには中南米などではスマートテレビでNetflixなどネットコンテンツを見るというライフスタイルが広く定着している。

 なお、全テレビ出荷に占めるインターネット接続機能が付いたスマートテレビの割合は、すでに63%に達している。

 中国に至っては元々、インターネットでコンテンツを楽しむ文化が根付いていたこともあり93%に達しており、放送を受信するテレビではなく、ストリーミングテレビが中国のテレビと言えるほど、当たり前の機能になっている。米国でも、Netflixの存在が大きく、68%。中南米でも普及率は高い。

■大型化、高精細化のその先は?

 高精細化も、大型化もいずれ限界を迎える。既に成熟しているテレビ市場だが、限界を迎えれば、その成熟度は増すことになる。

 そうした中で、期待を集めているのが、有機ELテレビだ。自発光で特に黒色の表現に優れ、高コントラストを実現でき、視野角の広い有機ELテレビは、液晶テレビとの違いが分かりやすい。さらに薄型テレビは(ブラウン管テレビに比べ)どうしてもスピーカーが小さくなり、音質が悪いとされてきた。だが、ソニーは、バックライトがないという有機ELの利点を生かし、画面背後にアクチュエーターを配置して画面から音を出して音質を高めている。究極のテレビといわれる壁掛けテレビにも近づいてきており、画質を落とさず軽量、薄型でスタイリッシュというデザイン的な価値もある。

 有機ELパネル供給メーカーは、LG Display1社だが、有機ELテレビを製品化するメーカー数は12社と、1年前に比べて2倍に増えた。

 日本市場は、他地域と比較すれば、プレミアムテレビが好まれる高付加価値の市場でありソニー、パナソニック、東芝と、シャープ以外の国内テレビメーカーが有機EL陣営になった。

■有機ELテレビの出荷予測

 2017年の有機ELテレビの需要予測は、Samsungとともにプレミアムテレビブランドとして全世界で認知されているソニーの参入によるインパクトを考慮し、2016年比2倍となる140万台としている。そして、2018年には250万台の出荷を見込んでいる。

 ただ、2019年以降については、唯一のテレビ用有機ELパネルメーカーであるLG Displayの投資次第になるので予測は難しいが、今のところ全テレビ出荷台数に対する有機ELテレビの台数比率は2017年0.6%で2021年に2.6%になると見ている。55型以上のテレビに限った台数ベースの有機ELテレビ率については、2017年が2.6%で、2021年が8.3%との予測だ。

 金額ベースでは、55型以上のテレビ出荷額に占める有機ELテレビ出荷額は2017年は6.8%、2021年は14.3%に達するだろう。金額の高い上位のプレミアムテレビ市場では、有機ELの存在は大きくなる見込み。そのため各テレビメーカーは有機EL市場に参入を果たしているのだ。

●鳥居寿一(とりい・ひさかず)/IHS Markit テクノロジー

 IHSテクノロジーグループ アナリシス&リサーチのディレクターを務める。ディスプレイ市場調査会社の大手である旧DisplaySearchのアナリストで、IHSがDisplaySearchを買収した2014年11月に、IHSに移籍。

 DisplaySearchでは、全世界のTV市場調査のバイスプレジデントとして、テレビ調査レポートを立ち上げ、全テレビ市場・ブランドの動向調査、戦略分析、予測などを担当。DisplaySearchの入社前は、三菱電機に勤務。テレビやノートPC、携帯電話機を含む、ディスプレイ市場全般に関わる市場調査や事業戦略、製品企画などに携わった。早稲田大学法学部卒。

最終更新:7/11(火) 21:10
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