ここから本文です

「肩身が狭い」と感じていたのは、吸わない人のほうだった。喫煙から禁煙へ「標準」が変わるとき

7/11(火) 6:10配信

BuzzFeed Japan

2020年の東京五輪に向け、受動喫煙対策が急がれる。だが、ほんの20年前までは、日本のあらゆるところで、自由にたばこを吸えるのが当たり前だった。会社でも飲食店でも交通機関でも「肩身が狭い」と感じていたのは、たばこを吸わない人のほうだった。【BuzzFeed Japan / 小林明子】

【写真】「あなたの喫煙があなたの子どもを傷つける」各地で発信される禁煙メッセージたち

タクシーに乗り込むと、シートに染み付いた煙の匂いにむせそうになった。

客が車内でたばこを吸える「喫煙車」に偶然、当たってしまった。運転しているのは、60代の男性ドライバー。自らも40年来の愛煙家だ。「喫煙車は東京都内では珍しいけど、個人タクシーだから続けられるんだよね」と言う。そういえば、タクシーでたばこ臭いと感じたのは久しぶりだ。

「朝、駅の車止めにつけると『待ってました』とばかりに、いつも同じ大企業の役員が乗ってくるんだよね。メーター料金1000円未満の間に2本は吸うよ」

「路上喫煙はダメだし、会社でも吸える場所が決まってるからね。会社で肩身狭くセコセコ吸ってる姿なんて、部下に見せたくないだろうしね」

ひと昔前は「たばこ部屋で人事が決まる」と言われていたくらい、特権領域だった会社の喫煙室。それがいまや「サボり部屋」と後ろ指をさされる存在だ。

いや、喫煙室だって実は新しいのだ。喫煙室ができる前は、普通に席でたばこを吸う上司がいて、吸わない部下は煙を我慢しながら仕事をしていた。2000年に新聞社に入社した私も、地方支局でその経験をした。

すべてのタクシーでたばこを吸えた

男性ドライバーは続ける。

「20年くらい前まで、サラリーマンにとって、たばこ、酒、先輩との付き合いはステータスだったからね。あの頃は、ほら、粋がるっていうの? テレビでも、たばこを吸って酒を飲んでるかっこいいコマーシャルがいっぱい流れてたんだよ」

「当時は、タクシーの所轄は運輸省で、車内でたばこを吸わせるのはサービスの意味もあった。運転手が吸ってもよかったしね。受動喫煙という言葉が生まれて、環境省やら厚生省やらいろいろ絡んできて、ころっと変わった。それで禁煙車っつうのが出てきてね」

厚生省(当時)は1995年、「たばこ行動計画検討会」の報告書をまとめ、受動喫煙対策を積極的に推進する方針を発表した。

東京都内ではじめて「禁煙タクシー」を走らせたタクシー会社は、大森交通だという。公式サイトによると、1987年まではすべてのタクシー車内で、乗客や運転手の喫煙は自由だった。受動喫煙もたばこの残臭も当たり前だった。

WHO(世界保健機関)の第1回世界禁煙デー(1988年)を前に、禁煙タクシー第1号の個人タクシーが登場。大森交通は2000年に禁煙タクシーを導入した。

1/4ページ

最終更新:7/11(火) 6:15
BuzzFeed Japan