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中小の事業承継、カギは母・妻の説得-東商の「企業健康診断」でわかったこと

7/11(火) 13:34配信

日刊工業新聞電子版

 東京商工会議所(東商)のビジネスサポートデスク東京東が始めた「社長60歳『企業健康診断』」事業が成果を出し始めている。地域金融機関との緊密な連携が事業承継準備に役立ち始めているのだ。そこで同東京西が開始したのに続き、東も事業エリアを墨田区から江東区にも拡大することになった。そうした中、事業承継の問題点も明らかになり始めた。典型的なケースを探った。(石掛善久)

大企業の方が…

 子どもに苦労をかけさせたくないと事業承継に反対する母親は少なくない。塗装工事業のA社は1985年の創業。従業員は6人で、社長は62歳となった。社長が継がせたい長男はIT企業のサラリーマンだ。
 数年前まで会社は売り上げ低迷、業績は不振続き。資金繰りに追われる日々だった。塗装業だけでは生き残れないと他の工事分野に進出、昨年度からは単年度黒字に転換した。だが、純資産は800万円のマイナス。金融機関からの借入金は3500万円あり、個人保証もしている。
 社長としては約5年後に事業承継するつもりだったが、もう少し業績改善し経営安定してから話そうと腹を割った話をせず、「断られればベテラン従業員に打診しよう」と考えていた。
 そこに「企業健康診断」の受診勧誘。診断を受けると、数年後には純資産はプラスになる見込みであり、早期の対策着手が必要で、まず長男に診断結果を説明、話し合いをスタートすべきだとのフィードバックを得た。
 そこで、長男を実家に呼び状況を説明。1年という具体的な期限を設け最終意思確認をすることになった。この社長に限らず、大半の中小企業経営者は会社を良くし、身内に会社を譲ろうと考えている。だが、妻は資金繰りの苦労などを知るためか、大企業に勤めることを勧める。中小企業の事業承継促進には妻の理解・協力も不可欠だ。

ネックは個人保証

 金属加工業のB社は従業員21人を擁し、リーマン・ショック後の数年経営不振が続いたものの、現在では年間2000万円程度の営業利益を出す優良企業。
 取引先は大手企業が多く、売上高・利益は安定。純資産はプラス8000万円で、株価は毎年上昇。社長は67歳で、娘が1人いるが事業には関与せず、承継意思は全くない。そこで、やむを得ず従業員に承継を打診したが断られてしまった。
 ネックは個人保証だった。社長は金融機関から1億2000万円借り入れているが、すべて個人保証。打診された従業員には個人保証を肩代わりして経営を継ぐなど考えられないことだった。
 ほかに代わりになる人がおらず「廃業するしかない」と悩んでいる中で“社長60歳『企業健康診断』”の話を聞いた。
 診断の結果、M&A(合併・買収)の選択肢があると知り、株の集約と管理体制の整備に着手、顔の見える取引先から買い手候補をリストアップ。身支度を整え東商本部にある東京都事業引継ぎセンターで専門的アドバイスを受けている。
 事業承継で「個人保証」は大きくのしかかる。

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