ここから本文です

Helsinki Lambda Club「愛し合っている人しかいない空間」で完全燃焼/レポート

7/11(火) 16:27配信

MusicVoice

 4人組バンド・Helsinki Lambda Clubが6月30日、所属するUK Project内の新レーベル・Hamsterdam Recordsの設立を記念したワンマンライブ『“Get Hamstoned...”』を東京・渋谷WWWで開催した。4月にギター・佐久間公平が脱退し、男女4人組バンド・Group2のギタリストとしても活動する熊谷太起が正式加入して初となったワンマンライブには、多くのファンや耳の肥えたオーディエンスが集結。ボーカル・橋本薫の抑揚のある歌唱力、ベース・稲葉航大の確かな技術と“パフォーマンス”、さらに、熊谷は繊細な指先で色彩豊かな音を奏で、ドラムのアベヨウスケは手綱をさばいた。2017年のミュージックシーンで注目される“ニュー・オルタナティブ”の先鋭は、4つの個性を一つのグルーブに乗せ、観客と一体となるステージを実現した。

■緊張感を一気に吹き飛ばす

 季節は梅雨。どんよりとした雲が立ち込めたこの日、渋谷界隈は人垣でごった返し、街の至る所から熱気が放散していた。ライブハウス「渋谷WWW」はスペイン坂の頂上付近にある。地下に続く階段を降りると、訪れた観客はドリンク片手に開場の時を静かに待つ。ステージ上のスクリーンにはこの日のために編集された動画が放映され、橋本やアベ、熊谷はワンマンライブへ向けての心境を伝え、なぜかマッサージを受けている稲葉は爆笑を誘う。スクリーン越しに伝えられるHelsinki Lambda Clubの胸の内。観客はそれぞれの歓声を挙げていた。

 軽快なBGMが会場を包むと、いよいよワンマンライブの開演だ。左手からメンバーが続々と顔を出し、自らのポジションでチューニングを始める。どよめく観客が興奮のボルテージを高める最中、橋本は「めちゃくちゃドキドキしてます」と言葉を発し、「Skin」の演奏をスタート。パワフルでエネルギッシュな演奏は、メンバーとオーディエンスの緊張感を一気に吹き飛ばし、続く「ユアンと踊れ」に入るとライトは激しく点滅を繰り返し、稲葉は独特のロングヘアを早くも大きく振り回す、おなじみのパフォーマンスでテンションの高まりを告げた。

 Helsinki Lambda Clubは畳みかける。3、4曲目には「King Of The White Chip」「Boys Will Be Boys」を持ってきた。これは、Hamsterdam Records第一弾として4人組バンド・tetoと6月7日に発売したスプリット盤『split』に収録されている楽曲。ファースト8cmシングル、福袋シングル、ファースミニ、ファーストマキシなど異なるフォーマットでのリリースを続けてきたHelsinki Lambda Clubが打ち出した新たな切り口だ。メンバーの演奏技術を惜しげもなく盛り込んだ2曲にオーディエンスは耳を傾けていた。

■拍手で迎えられる

 橋本はこのワンマンライブがSOLD OUTしたことに感激を伝え、熊谷が正式加入したことを報告すると会場からは盛大な拍手が寄せられた。デビュー前の楽曲である「檸檬倶楽部」のイントロが流れ、独唱する橋本にスポットライトが当たる。メロウな雰囲気に日常感が広がったが、サビに入ると一転、有り余る感情が飛び出していくように荒々しいボイスが会場を満たした。Helsinki Lambda Clubは疾走感を強め、「Morning Wood」「彷徨いSummer Ends」を持ってくると、オーディエンスは横揺れに縦揺れ、さらに身体をひねりながらサウンドを楽しんだ。

 演奏が終わると、唐突に稲葉のナレーションが入った。重低音のボイスは「ここはとあるジャングルの奥深く…」とバックグラウンドを説明し、様々な動物たちが跋扈していることを紹介。稲葉は随所にステージ上でパフォーマンスをキメて観客を盛り上げる。ナレーションは、マングローブの森の先には「メサイアのビーチ」が広がることを告げ、ギターの高音が会場を満たして演奏はスタートし、稲葉は独特のステップでハイテンションを表現。その勢いのままに「Justin Believer」へ。橋本のラウドが高揚感を煽り立てた。

 2曲を終えると稲葉は「稲葉がんばれっておかしくない?」とパフォーマンスを披露した自身へのエールに首を傾げた。その後、4人のメンバー紹介がおこなわれ、橋本は稲葉の紹介をスルー。うなだれる稲葉を横目に「Lost in the Supermarket」の演奏への準備を進めていくが、このタイミングで紹介のフリを受けた稲葉は満面の笑み。4人の無邪気な掛け合いを経て届けられたキラーチューンの旋律が会場の熱気を最高潮に高め、続けざまに重厚なスピード感が特徴の「メリールウ」を畳みかけ、Helsinki Lambda Clubはオーディエンスに息づく暇を与えなかった。

 稲葉は前段のパフォーマンスの裏話を紹介。「努力を知って欲しい」と願望を口にした稲葉は、カップルが寄り添う代々木公園で深夜のナレーション録音を敢行し、「カップルの近くで『逃げろー』とか言ってんの」と自虐しながら明かすと会場は爆笑と拍手で大歓迎。橋本はこの日のステージに合わせ″型抜き大会″も開催していることも報告。そして、「ライブ本編以外でも楽しんでもらえたらと思って」と趣旨を語った後、「ライブは思い切ってやるので、ここからもお楽しみください」と中盤戦への意気込みを告げた。

■独特の愛情表現

 橋本のクリアな歌声が会場を包み込む「声」。メロウなサウンドが心臓にゾクゾクと侵入してくる「しゃれこうべ しゃれこうべ」。稲葉の低音が音域を支える「ぢきぢき」、熊谷の軽やかで繊細な指先がキャッチ―に間奏を埋めるアグレッシブな楽曲「ハイパーインフレーション」。追撃態勢を緩めることなく二の矢三の矢を繰り出し、ライブの魅力、バンドの熱量をオーディエンスに伝えていった。

 続けて「lipstick」で夏をいち早くオーディエンスに届け、「マニーハニー」で際限の突破を図るHelsinki Lambda Club。稲葉の独特のステップはさらにギアを高め、アベのコーラスは橋本の歌唱に厚みをもたらし、オーディエンスは「オ、オ、オー」の掛け声で応じる。テンションの抑えどころを失ったかのように興奮状態に突入した橋本にアベは「俺の知らない橋本が現れた」とリスペクトを送った。

 橋本は改めてSOLD OUTへの感謝を伝える。「うちのファンの方々は(チケット購入の)駆け込み、最後のラッシュがすごい」と述べ、「焦らしたいタイプ?」と観客をイジった。そして、「ワンマンライブってお互いが愛し合ってる人しかいない空間。世の中にもなくない?」とも語り、ワンマンライブのステージに立つことへの誇りを口にした。稲葉もその発言に加わろうとしたが橋本はツンデレ全開に再びスルー。「しゃべるとさあ、すぐ…」と稲葉が愚痴をこぼすとアベが「俺が聞いてあげる」と優しくフォローし、さらにアベは「お前はブスだけど俺は好きだよ」と独特の愛情表現で稲葉を持ち上げ、稲葉は恥ずかしそうな笑みを浮かべた。

 いよいよ始まる終盤戦。「僕らも皆さんのこと愛してます」と告げた橋本は、人気曲「NEON SISTER」の感傷と優しさが詰まった歌詞を歌い上げ、「目と目」の歌唱前にはこの楽曲を作った経緯を説明する。「僕はあんまり人と向き合うのが得意じゃない。後悔していることも多そうな気がして…。歌の中だけでも言えたら一つ成長というか、言えないことを歌にしてることも多い。近しい人ほど言いたいことを言えなかったりする。まずは歌で言えればいいなって」。確かな声量。噛みしめる一つ一つの言葉。橋本は伝えたい感情を音にこめていた。

 会場に一体感が訪れる。「This is a pen.」。イントロが流れるとオーディエンスは両腕を上げて歓喜の声を挙げ、その身をグルーブ感に全て投じる。「テラートワイライト」で軽快さをヒートアップすると、「TVHBD」でステージ上はお祭り騒ぎに。稲葉はステップの行動範囲を広げ、熊谷の立つ右サイド深くに侵入。熊谷も陽気なダンスを披露し、演奏後に稲葉は熊谷にツッコミをいれる。「見た? ギターよぅ。一番のAメロあたりで、こんなダンスしてしょうもな」と話し、熊谷が繰り出した陽気なダンスをイジったが、観客からは「可愛い」の声が殺到した。

 そして、稲葉はオーディエンスに要求する。「声援もっと欲しいと思う。そんなんじゃ終われない。もっとちょうだい」と語り掛けると、アベが繰り出す激しいドラムロールに合わせてオーディエンスはエールを送り、「ドン!」のドラム締めの音に合わせ、稲葉は“オネエ”と化して変顔ポーズでキメ、「もう一曲やっちゃうわよ!」と「TVHBD」の途中からそのまま23曲目の楽曲となる「宵山ミラーボール」へと突入した。

■別の魅力を付加

 Helsinki Lambda Clubの“パフォーマー”としての真髄を見せつけた稲葉に呼応するように、会場はオーラスへ向けてテンションを高める。熊谷は音に酔いしれ、橋本もギターをかき鳴らす。それが終わると稲葉はまたしてもオーディエンスを煽り、「もう一回やろう」と復活した“オネエ”とともに「TVHBD」へ戻り会場をさらに盛り上げ、「All My Loving」を最後の楽曲にセットリストを締めくくった。

 だが、最後の楽曲を迎えても稲葉のステップに衰えは見られなかった。それはオーディエンスも同様で、まだまだ足りない何かを求めるようにアンコールの手拍子が激しく打ち鳴らされる。再びステージに舞い戻ったメンバー。橋本は今年10月を目途に新曲をリリースしたい気持ちを語り、「面白いことをやりますので」と宣言。観客の興奮に拍車をかけ、「シンセミア」を披露し、別れの言葉を告げた。

 それでも、オーディエンスは彼らに終わりを告げさせない。暗がりの中で手拍子はさらなる激しさを伴う。みたびステージに登場したHelsinki Lambda Club。ダブルアンコールの熱唱に選んだのは「バンドワゴネスク」だ。快調なビートはオーラスを迎える寂寥を吹き飛ばすようにスピード感を高めていく。<そんなことを考えて バンドをやっている~♪>。メンバーとオーディエンスのシンガロングが会場を包み込み、完全燃焼とともに盛大な宴に終止符を打った。

 「ニュー・オルタナティブの先鋭」として注目度を高めるHelsinki Lambda Club。この日のステージで見せたのは、さらなるパワーアップと音楽を客観的に捉えながら伝える確かなテクニックだ。ギタリストの脱退というバンドにおけるネガティブな局面を陽気に乗り越え、新たに加わった熊谷はHelsinki Lambda Clubにまた別の魅力を付加した。それを確認したワンマンライブは、2017年のミュージックシーンにHelsinki Lambda Clubが旋風を起こす予感を抱かせるのに十分なステージとして結実した。

(取材=小野眞三)

最終更新:7/11(火) 16:27
MusicVoice