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ありのままでいいよ ダウン症の兄描く本出版

7/11(火) 1:20配信

カナロコ by 神奈川新聞

 ダウン症の兄の生活風景を描いたイラストエッセー「ヒロのちつじょ」が6月、出版された。手掛けたのは秦野市出身の佐藤美紗代さん(26)。兄のこだわりとユーモアに満ちた暮らしぶりとともに、兄とどう接すればいいか分からなかった自分自身の内面も描き出している。

 「ヒロ」こと兄の洸(ひろ)慧(え)さん(33)は、毎日の生活を独特の癖やこだわりとともに過ごしている。家族から返事があるまで「おはよ」と繰り返したり、真夏でも布団と毛布をかぶって寝ていたり…。その様子を、「あさ」「ひる」「よる」の3章に分け、イラストと文章で紹介。ページの隅には、洸慧さんの行動を再現したパラパラ漫画も描かれている。

 もともとは、佐藤さんが武蔵野美術大の卒業制作として描いたもの。作品を見た同大の野口正治さん(70)が、「このまま埋もれてしまうのは惜しい。本にして世の中に出したい」と出版社に掛け合い、4年かけて発行にこぎ着けた。

 書籍化に当たり、佐藤さん自身の内面を掘り下げた「かこ」という章を書き足した。

 佐藤さんは10代のころ、独特の行動をする洸慧さんが受け入れられなかった。そんな自分に対する葛藤もあったが、1人暮らしをきっかけに、「家族と私はまったく違う存在。兄が兄であるように、自分もありのままでいい」と思えるようになった。今は「無理していない兄のあり方に憧れる」と笑う。

 佐藤さんは現在カナダに住み、この秋から福祉について学ぶ。将来は、誰もが使いやすい製品のデザインに携わることが目標だ。「本を通じてダウン症を知ってもらうだけでなく、福祉と関わりのない人にも、『自分もこのままでいいんだ』と思ってもらえたら」と話す。

 「ヒロのちつじょ」は1512円。問い合わせは、発行元の太郎次郎社エディタス電話03(3815)0605。