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教えて!キラキラお兄さん「インターンで実績は作れますか?」

7/12(水) 6:10配信

@IT

 「Gunosy」の共同創業者である関喜史さんは、学生時代の長期インターンで力を蓄え、シリコンバレー見学で「何を作ったか」で評価される文化に触れた。

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 大学院に在学中、3人の同級生と情報キュレーションサービス「グノシー」を開発し、その事業化のためにGunosyを起業した。当時からビジネスと学術研究の両方を追求する姿勢を貫いている、その理由を聞いてみた。

●高専から東大へ、インターンで実績を作る

 関さんは、富山県で生まれ育った。中学時代にプログラミングと出会い、富山商船高等専門学校(当時、現在は富山高等専門学校)に進学し、情報工学を専攻した。高専出身のエンジニアの活躍ぶりが話題になっているが、関さんもその一人だ。

 高専の卒業後は東京大学に編入した。「掲示板の“2ちゃんねる”を見ると『プログラマーは下流』みたいな話ばかり。経営やマネジメントも分かっていないとまずい」と思い、システム創成学科知能社会システムコースを目指した。「英語はぎりぎり、数学は満点近く」で合格する。

 学生時代の関さんは、データを元に意思決定をしたり、プロダクトを良くする仕事が面白いと思っていた。企業に入ってからそのような仕事を担当させてもらうには、まず実績が必要だと考え、Web系の企業でインターンをした。

 「データが大事だと信じていた。インターンで形に残る成果を出すことを意識していた」

 インターン先は、「リクルート」に2カ月、「ディー・エヌ・エー」に4カ月、「サイバーエージェント」に1年弱。午前と午後で別の会社に行っていた時期もあった。

 サイバーエージェントでのインターン内容は、人工知能学会で2012年に発表した。リクルートでは、シリコンバレーツアーを商品とするコンテストに参加した。

 関さんは「インターンは大事だと思う。それも自分でモノを作る仕事がいい。今もとても役に立っている」と話す。

 インターンの経験を通して、大きなサービスのコードをどのように管理するか、そして会社組織がどのように運営されているかを知ることができた。3人で設立した会社であるGunosyは現在約120人の規模まで大きくなった。

 学生時代の印象深い経験は、春休みを使って米国シリコンバレーに1週間滞在したことだ。「シリコンバレーでは、エンジニアは何を作ったかで語られる文化がある」。その文化、風土に触れて何を作るかを考えた。ビッグデータや機械学習が注目されていたので、それらを活用したサービスの可能性はあると思っていた。

 シリコンバレーに注目した背景には、指導教官だった松尾豊准教授の影響があった。スタンフォード大学を経て東京大学に着任した松尾准教授の専門は人工知能とWeb工学で、ディープラーニングの台頭にいち早く注目した研究者でもあった。グノシー創業の後も、関さんは松尾准教授の下で博士課程を過ごすことになる。

●夏休みに同級生3人で作ったサービスで起業

 グノシーの原型を作ったのは2011年の夏のことだ。修士1年の夏休みの最中だった。「何か面白いものを作ろう」と思ったからだ。同級生の中で、コードを書くメンバーが集まった。中心人物は福島良典氏(現、代表取締役 最高経営責任者 CEO)、そこに関さん、吉田宏司氏(現、執行役員 開発本部 開発本部長)が加わった。

 グノシーを発想した時点で念頭にあったのは、RSSリーダーだった。当時は「1日300件のRSSフィードを効率よく見るにはこのツールを使おう」といったライフハックが一部で流行していた。しかし3人は「それは非人間的だ」と思った。「読みたいニュースを機械に選んでもらったらどうか」と考え、RSSリーダーより便利なニュース収集のツールを作ろうと思った。

 3人が作った初期のグノシーは、TwitterやFacebookのようなソーシャルメディアの内容を見て「そのユーザーにとって興味がありそうなニュース」をカスタマイズして推薦してくれるサービスだった。大学院での研究テーマだった自然言語処理、Webサイエンス、機械学習の要素が入っていた。

 この時期、学生が起業することを称揚するようなムードがあった。だが、関さんたちは学生ベンチャーや起業ブームに対して、斜に構えているところがあったそうだ。

 「僕らはひねくれ者で。サービスもないのに起業するのはナンセンスだと思っていた」

 Gunosyは、会社設立の前に既に「もの」(プロダクト)があった。自腹でサーバ代を出し、大学の研究室や教室でコードを書いていた。

 今でも「プロダクトがない段階での学生起業は、あまりよくない」と関さんは考えている。プロダクトを作るスキルがなければ、まずインターンで腕を磨く手もある。学生であれば自由時間が作りやすく、友人を見つけやすく、大学の設備も使える。学生ならではの特権的な立場を生かしてプロダクトを作ることに集中した方がいいという考え方だ。

 とはいえ、自分たちが選んだプロダクトファースト(まずプロダクトありき)の考え方には「つらい部分がある」とも話す。ビジネスとして成立させていくプロセスでは、当初の考え方を否定しないといけない局面が出てくるからだ。

 グノシーも初期はニュースを推薦してカスタマイズするサービスだったが、閲覧しやすい情報キュレーションサービスへと大きく方向転換した時期がある。「自分がやっていること、自分が本当に作りたかったものを否定されるプロセスは本当につらい」と関さんは話す。

●「もう一度起業したいかと聞かれたら?」

 Gunosy創業者の3人は、実はそれぞれ別々の会社に就職するつもりでいた。その経験から、起業を志す人に対して関さんが語るのは、次のような話だ。

 「モノを作りたい人は、まず作ったらいい。周囲の反対の中で作るぐらいでちょうどいい」

 高い成長率を期待されるスタートアップ企業を成功させるには、無理なことを実現する必要がある。ほとんどの場合はうまくいかない。周囲に反対されても取り組むような「やむにやまれぬ思い」も必要だし、運も必要だ。関さんも「運が良くてできた部分はある」と振り返る。

 「『起業すればいい』とただ言っちゃうと、その大変さを伝えていないことになる」

 関さんは、学生起業をむやみに勧めることには反対の立場だ。「もう一度起業したいかと聞かれたら、嫌だと言うかもしれません」と苦笑いする。

●ビジネスと学術の両輪で回す

 研究者20%、会社80%──これが関さんが考える自分のパワー配分のバランスだ。Gunosyの会社組織としても研究開発に力を入れていく考えだ。「学術研究(アカデミア)とビジネスを両輪で回る会社が伸びている」と関さんは話す。

 ベンチャー企業には余力はない。それでも関さんは「無理やりにでも学会発表は続けるし、つらくても博士号は取る」という姿勢を貫いてきた。ビジネスと学術研究、どのように折り合いを付けたのだろうか?

 「たぶん両方ともうまくいく──というより、片方だけではうまくいかないと思っていた」と関さんは表現する。学術研究の領域の仕事をビジネスの中で実施してきた。グノシーで得られた知見が、関さんの博士論文に反映されている。「特殊なケースだったとは思う」と、振り返る。

 最近発表された同社の取り組み「クリックベイト(釣り記事)対策」は、研究開発分野での挑戦だ。いわゆる「釣り記事」と呼ばれる、タイトルの期待と記事の内容に落差があり「読んだ後にユーザーが不快になるような記事」を機械的に特定、予測する。

 そのために重要なのが、ユーザー行動解析に基づくコンテンツの品質評価の手法を確立することだ。記事ページを見たユーザーの滞在時間、スクロール速度、SNSシェア数などの行動を調べ、評価する。利用者からのフィードバックを基に仮説を蓄え、ユーザーの行動を調べてモデル化していく。そのための実験は既に開始している。この分野では、テキスト解析、自然言語処理の知見が活用できる。

 「釣り」記事とそうではない記事の線引きは難しく、単純なルールに落とし込むことができない。そこでユーザー行動解析による品質評価が決めてとなる。挑戦的な取り組みだが、研究開発としての新規性と成果が期待できる分野ともいえる。これが、関さんがいう「学術研究とビジネスの両輪を回す」ことの1つの例なのだろう。

 「ニュースに対するユーザーの行動のデータを持っている会社はあまりない。世の中で解かれていない問題の1つだ」と関さんは強調する。ニュースアプリを運営するGunosyならではの強みを生かせる分野ということだ。

 「3年以内に、トップカンファレンスに論文を通せる会社にしたい」。そう関さんは意気込んでいる。

●若い世代にチャンスを提供する

 Gunosyではインターン生が成果を研究論文にまとめて発表することを歓迎している。「最近の研究はデータ量が勝負。学生が研究テーマで困っているなら、データがある会社でインターンをするといい。われわれの会社も、出せる情報と出せない情報をコントロールすることは可能だ」と話す。別の表現をすると「自分の研究テーマのためにGunosyのデータを使いたいと考えるような学生に来てほしい」と考えている。

 社外活動に目を向けると、Gunosy創業メンバーは皆「IPA(情報処理推進機構)」の「未踏事業」のOBだ。若い開発者に予算を提供し、新しい何かを作ることが、未踏事業の大枠だ。関さんは今、未踏の後輩たちを育てるべく、「未踏ジュニア」のPMも行っている。

 「先日、プログラミングに興味がある子どもを集めたキャンプがあって参加した。小学生もコードをばりばり書いていて、スゴいなと思った」

 関さんは今、自分よりもさらに若い世代にチャンスを与える立場になっている。関さんの下に集まるGunosyのインターン生や未踏事業に挑む若者の中から、次の世代の開発者や起業家が──かっての関さんのような若者が登場するかもしれない。

最終更新:7/12(水) 6:10
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