ここから本文です

【夢を追う】四川料理「巴蜀」代表・荻野亮平さん(2) おいしいだけじゃだめだ 

7/12(水) 7:55配信

産経新聞

 《大阪府茨木市に生まれた。幼いころからよく、台所に立っていた》

 テレビで見た料理を作ってみよう。そんな感じで、小学校から帰ったら家で、ご飯を作っていました。外に遊びにいった記憶があんまりないんですよね。

 高校生になると、お金がほしくて中華料理屋でアルバイトを始めました。

 写真が趣味だった祖父がよく中国に撮影に行っていたそうです。その縁で母親が中国好きとなり、僕も中国に親しみを持っていました。家では日曜日にNHKの中国語講座が流れていました。家族で中国旅行をしたこともあります。

 将来は調理師になろうと思っていました。バイト先で鍋の振り方や包丁の使い方を覚え、中華でやっていこうと決めました。

 《進学した専門学校では、先生を質問攻めにした》

 細かいところが気になるタイプで、先生がとまどうことを聞いてしまうんですよね。

 「茶外茶」(茶の木以外の植物の葉で作った飲み物。麦茶など)という物を知ったときに、先生に「キクラゲを戻した汁はどうなんですか」と聞いたんです。

 「そんなん知らんがな」。そう顔に書いていました。明らかに困った様子でした。

 わが家では「知らない」と言うのは、だめだったんです。「知らないんだったら調べなさい」。父からよく言われました。

 知らないことを調べるのは、幼いころからの習慣です。今も、知らなかったら調べるし、それでも分からなければ、「分からなかった」とずっと覚えています。

 《東京の中華料理店で働いた後、中国・四川大学へ留学した》

 1年間、トラックの運転手をしてお金を稼ぎ、留学しました。料理人の先輩から「中国の料理と日本の料理は全然違う」と聞き、若いうちに行ってみたいと思ったんです。

 帰国後は、北九州市の台湾料理店「欣葉(シンイエ)」に入店しました。料理長は台湾人でした。僕が入ってまもなく、福岡の中国総領事館で料理長をしていた人が入りました。

 《この2人との出会いが、大きな転機となる》

 料理長は「うちの料理は味だけじゃない。文化を入れている。おいしいだけじゃだめだ」と口酸っぱく言っていました。

 2人から中華料理らしくなる味の使い方を、厨房(ちゅうぼう)で教えてもらいました。

 「しっかり味が付いていないと、素材の味は出てこない。ぎりぎりまで塩を付けた方がいい」と教わりました。「濃ければ濃いほど味が分かる」というんですよね。日本は味付けが薄い方が素材の味が生きるといいます。まったく逆の考え方です。

 ほかにも、中国ではナス料理に必ずニンニクが入るとか、「鳳凰(ほうおう)」をかたどった前菜は、尻尾が必ず3本あるとか、細部まで厳密に決まっていた。

 「拉皮(ラーピー)」という、水で溶いた片栗粉を鉄板で固めて作る生春雨のような料理があります。まかないで作ったとき、「ごまとマスタードが入らないと拉皮とはいえない」と指摘されました。

 注意されることは、ものすごく多かった。

 料理長からは「同じ失敗を2回したらだめだ」と言われました。

 それから、シューマイを200個作るなら、1個目よりも200個目は完成度が高くないとおかしいと。同じ時間働くんだったら、多く修行して自分の糧にした方が良いという考え方です。

 「好きにやれば良い、というもんじゃない」。2人によく言われました。この店で働き、おいしいことが全てではない。料理には発祥があり、料理を研究するのは調理師として当たり前だと思うようになりました。

 文化を尊重する姿勢を、この店で身につけました。

 僕は、どの国の料理も、外国人が勝手に変えたらだめだと考えています。日本人が、日本料理を変えるのは良いけれど、中華料理を変えるのは、ルール違反じゃないかと思うんです。

最終更新:7/12(水) 7:55
産経新聞