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月20ドルでWindows 10とOffice 365+αが使える「Microsoft 365」の狙いとは?

7/12(水) 13:54配信

ITmedia PC USER

 米Microsoftは年次のパートナー向けイベント「Microsoft Inspire」を米ワシントンDCにて7月9日~13日(現地時間)の会期で開催している。7月10日には同社のサティア・ナデラCEOが基調講演を行い、新サービスの「Microsoft 365」を発表した。

【中小企業向けプランに含まれるサービス】

 2016年の同時期には、企業向けに月額7ドルで利用できる定額制のWindows 10「Windows 10 Enterprise E3」を発表した同社。この流れを受けた今回の新サービスによって、クラウドとサブスクリプションモデルでWindowsの世界を今後どう描こうとしているのかを見ていこう。

●モダンITの世界を目指す「Microsoft 365」

 Microsoft 365はサブスクリプション型のサービスで、簡単に言えば「Windows 10」「Office 365」「Enterprise Mobility + Security(旧名称はEnterprise Mobility Suite)」のサービスを一本化した形で提供する。OSのライセンス、生産性アプリケーションからコミュニケーションツール、セキュリティ対策、管理ツールまで、ビジネスユーザーに必要なサービスを全てワンセットで用意できるという製品だ。

 実は、Microsoft 365に相当する製品は既に存在しており、「Secure Productive Enterprise」の名称で販売されている。2016年7月開催のパートナーイベント(当時の名称はWorldwide Partner Conference)では、「Secure Productive Enterprise E3(従来の名称はEnterprise Cloud Suite)」とその高機能版「Secure Productive Enterprise E5」の2種類が発表された。今回は、Microsoftという自社名を冠した主力製品としてよりキャッチーな名称でリブランディングしたわけだ。

 毎年名称がコロコロ変更されるMicrosoftの企業向けITスイート製品群だが、2017年の新名称は社名入りでおいそれと変えそうもない。いよいよ腰を据えた取り組みとなりそうだ。

●エンタープライズ向けの「Microsoft 365 Enterprise」は8月1日発売

 Microsoft 365には2種類のカテゴリーがあり、Secure Productive Enterpriseの後継にあたる大企業向けの「Microsoft 365 Enterprise」と、新設となる中小企業やSOHO向けの「Microsoft 365 Business」が用意されている。

 Microsoft 365 Enterpriseは、「Windows 10 Enterprise」「Office 365 Enterprise」「Enterprise Mobility + Security」をセットにしたサービスだ。下位の「Microsoft 365 E3」と上位の「Microsoft 365 E5」の2つのプランに分かれており、E5は一部E3にないサービスも付く。これらはMicrosoftのクラウドソリューションプロバイダー(CSP)などの販売パートナー各社から購入でき、2017年8月1日から利用可能だ。価格は個別契約となるため明示されていない。

 なお、Microsoft 365 Enterpriseの登場をもってSecure Productive Enterpriseの提供は終了となる。米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、Microsoft 365 Enterpriseの提供開始後もOffice 365 EnterpriseやWindows 10 Enterprise E3/E5の個別製品での提供は継続される見込み。管理ツールや生産性アプリケーションを特に必要としないユーザーのための選択肢は残されているようだ。

●中小企業向けの「Microsoft 365 Business」は2017年秋発売

 今回の目玉はMicrosoft 365 Businessだ。1組織300ユーザーまでという制限がある中小規模企業向けの製品で、1ユーザーあたりの月額料金が20ドルに固定化されている。8月2日にパブリックプレビューを開始し、2017年の秋に全世界で発売の予定だ。

 Microsoft 365 Businessには、「Windows 10 Pro」「Office 365 Business Premium」「Enterprise Mobility + Security」が含まれる。1ユーザーあたり月額12.50ドルで利用できるOffice 365 Business Premium単体と比べて、Creators Update以降に順次導入されている最新の管理機能やセキュリティ機能に対応する点で特徴がある。つまり、月額7.50ドルの差額で「大企業と同じ管理ツールや最新セキュリティの仕組みがそのまま利用できますよ」というわけだ。

 Microsoftとしては、既存のOEMを介したデバイス単位のOSライセンスモデルを止めるつもりはないものの、豊富な機能やサービスを武器に、ユーザーをサブスクリプションへと誘導し、ビジネスの軸を徐々に移していきたいのだと考える。

 特に、中小企業では「購入してきたPCをそのままインターネットに接続して利用」というケースが多いと思われるが、これらをよりモダンな最新のクラウドIT環境へと誘導する狙いもある。

 直近だとWannaCryの被害やWindows 7の延長サポート終了問題が取り沙汰されているが、長期的にはMicrosoft 365のような施策がPC業界のビジネスモデルを大きく変革していくのだろう。

●強化されるクラウド製品のビジネスツール群

 Inspireはパートナーイベントだが、ソリューション再販売パートナーの名称がクラウドソリューションプロバイダー(CSP)とされているように、近年のMicrosoftのパートナー戦略はクラウドと密接に結び付いている。そのため、既存製品でもユーザーのクラウド利用の実体に合わせた形で少しずつポリシーが修正されている点に注目したい。

 今回のInspireにおいても、Windowsの仮想化利用におけるライセンスを緩和し、CSP経由で提供されるOSライセンスについて5パターンの仮想化対応が発表されている。

 2017年9月6日以降、ユーザーはCSPを介して5つのパターンからWindows 10の仮想化利用のライセンスが得られるようになり、デバイスに縛られずに好きな環境からWindows 10の仮想マシンを実行可能になる。例えば、Windows 10 Enterprise E3では仮想化利用の有無を選択可能となる他、Windows 10 Enterprise E5やMicrosoft 365 Enterpriseのようにサブスクリプション契約ユーザーは自動的にライセンスが付与される。

 生産性ツールやビジネスツールについてもアップデートが行われている。Office 365 Business Premiumでは、メールマーケティング用の「Microsoft Connections」、ビジネス情報をGoogle、Facebook、Yelpなどのサービスに登録する「Microsoft Listings」、請求書処理を行う「Microsoft Invoicing」の3つのアプリケーションが新たに追加された。また、別製品として提供されていた、自動車の交通費精算を自動で行う「MileIQ」がOffice 365 Business Premiumで利用できるようになり、ツールが順次拡充されている形だ。

 なお、2017年4月に発表されていた「LinkedIn Sales Navigator」と「Dynamics 365 for Sales」の連携が、Microsoft Dynamics 365の2017年7月版アップデートで利用できるようになる。これは、MicrosoftがLinkedInを買収してから初めての両社製品のコラボレーションだ。2016年時点では「買収が完了していないため、具体的なコラボレーション内容については言及しない」としていたものが、ようやく動き出した形となる。

 今後もこうした融合は徐々に進むとみられる。同社が2017年9月に開催するイベント「Ignite 2017」でも何らかの発表があるかもしれない。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

最終更新:7/12(水) 13:54
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