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神奈川県内ハイエース被害、今年すでに100台超 “人気銘柄”相次ぐ盗難

7/12(水) 7:55配信

産経新聞

 ■プロ集団か

 川崎市内の駐車場で1月にアマチュア楽団「川崎吹奏楽団」の楽器などを載せていたトヨタ製のワゴン車「ハイエース」が盗まれた事件に絡み、県内で今年、ハイエースの盗難被害がすでに100台以上にのぼっていることが11日、捜査関係者への取材で分かった。近年の発売分から盗難防止装置が全車に標準装備されるなど、対策は取られているものの、それを突破する新たな手口も登場しているという。県警は同一のプロ窃盗グループによる犯行の可能性も視野に捜査している。(王美慧)

 ■あらかじめ目星?

 藤沢市では6月初めごろから、ハイエース3台の被害が確認された。

 防犯カメラが設置されていない月極駐車場などで被害が相次いでおり、犯人があらかじめ狙いをつけていた疑いがある。

 鎌倉市の月極立体駐車場では6月17日夕~24日夕ごろまでの間、アマチュア楽団「鎌倉交響楽団」が所有するドラムなどの打楽器計数十点を積んだハイエースが盗まれた。楽器を合わせた被害総額は計約200万円にのぼるという。

 鎌倉交響楽団の山本賢二団長(76)は「楽器は何十年もかけて集めたものだったのに」と肩を落とす。1月中旬に川崎市中原区で盗まれたハイエースにも、アマチュア楽団の楽器が積まれていたが、捜査関係者は「楽器被害は偶然で、あくまでハイエースがターゲットだろう」との見方を示す。

 鎌倉市では6月23日にも、会社敷地内の駐車場でハイエース1台が盗まれた。鎌倉交響楽団の被害があった駐車場から、わずかに100メートルほどの場所だったという。

 ■海外で高い需要

 県警によると、県内では1月から5月末までの間、約350台の自動車が盗まれた。車種別では、ハイエースが最も多く、被害は100台以上にのぼるという。国内での盗難被害は約15年前から目立ち始め、トヨタは平成24年5月発売分から、専用の電子キー以外ではエンジンの始動ができない盗難防止装置「イモビライザー」を全車に標準装備した。捜査関係者によると、これ以降、被害は減少傾向にあるものの、沈静化には至っていない。

 ハイエースが車両盗難の“人気銘柄”となった背景には、海外での高い需要がある。

 県警によると、ハイエースは積載量が多く耐久性も高いことで、中東やアフリカなどの開発途上国で高値で取引されているとみられる。税関のチェックを逃れるため、日本国内にある「ヤード」と呼ばれる車両解体工場で分解して不正輸出し、輸出先で自動車に組み立てるという。

 ■手口に共通点

 今回の一連の盗難事件には、共通点がある。

 被害車両の大半が「イモビライザー」を搭載しており、犯人は、キーの識別符号を書き換えて別のキーでもエンジンをかけられるようにする解除器具「イモビカッター」を使った疑いが強い。

 また、多くの被害現場にはガラス片が残されていなかった。窓ガラスをたたき割ることなどはせずにドアを解錠したとみられる。

 一連の事件に用いられたかどうかは不明だが、最近では、「リレーアタック」と呼ばれる新たな手口も確認されている。専用の携帯機「スマートキー」を所持していれば、キーが発する微弱な電波の作用で車両に近づくだけでドアを解錠することなどができる「スマートエントリー」機能(ハイエースでは、オプション機能として追加可能)を悪用したものだ。

 周囲約1メートルの範囲までしか届かないキーの電波を、特殊な装置で受信して増幅させ、中継役の仲間に送信。リレーしながら車両に近づくと、キーを所持している人物が買い物などで遠くにいたとしても、ドアが解錠できる。エンジンもこの電波で始動できるため、そのまま盗むだけという。

 県警は一連の事件について、手口などから、複数の人物が役割を分担して犯行に及ぶプロ窃盗グループが関与している可能性があるとみて、現場周辺の防犯カメラの解析などを進めている。

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【用語解説】ハイエース

 トヨタ自動車で生産されているワンボックス型の車。昭和42年から製造・販売が開始され、現在は5代目。貨物用の「バン」と乗用の「ワゴン」、マイクロバス区分の「コミューター」という3タイプがある。最大14人まで乗車でき、乗り合いタクシーや救急車などとしても活用されている。販売価格は最上位グレードで約380万円。日本損害保険協会が実施している自動車盗難事故実態調査(毎年11月の1カ月間のみの被害数)では、平成19年から25年まで7年連続でハイエースの盗難が全国最多だった。

最終更新:7/12(水) 7:55
産経新聞