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<九州豪雨>感染症や熱中症…避難生活長期化に募る心配の種

7/12(水) 20:42配信

毎日新聞

 ◇「エコノミークラス症候群」「心のケア」にも注意呼び掛け

 九州北部豪雨から12日で1週間となり、被災地ではようやく孤立地区がすべて解消した。だが、インフラなどの復旧や生活再建は緒に就いたばかり。安否不明者の捜索も難航しており、なお1000人を超える避難者は疲労の色が濃くなっている。

 九州北部豪雨の被災地では今も約1300人が避難所での生活を強いられている。高齢者を中心に、避難生活の長期化による体調や持病の悪化などが懸念され、各地の避難所では保健師らが巡回してエコノミークラス症候群(肺塞栓=そくせん=症など)などへの注意を呼び掛けている。

 「5年前の豪雨の時にも避難した。避難生活はもううんざり」。朝倉市杷木(はき)地域生涯学習センターに避難する同市の田中五枝(いつえ)さん(70)が疲労をにじませた。右脚が不自由な田中さんは、避難所を巡回する保健師からエコノミークラス症候群を防ぐため意識的に脚を動かすよう助言を受けていた。

 狭い場所で同じ姿勢を長時間続けることで発症する恐れがあるのがエコノミークラス症候群だ。脚の静脈にできた血栓(血の塊)が血流で移動して肺の動脈を塞ぎ、死に至ることもある。昨年4月の熊本地震の際は車中泊をする人に多発した。

 予防には適度な運動のほか、水分補給が欠かせない。だが朝倉市の土井巧保健師(38)は、使い慣れなかったり、遠い場所にあったりする避難所のトイレに行く頻度を減らすため、水分を控える人もいると警告する。同市の杷木中学校に避難している男性(75)は脚のむくみが気になるが、「腰が痛いのであまり動きたくない」と運動にも消極的だ。

 余震への不安があった熊本地震の時のように多くはないが、それでもペット連れなどで車中泊を選ぶ人もいる。日中は避難所で過ごし夜間は駐車場に止めた軽乗用車で飼い犬と寝ている同市の男性(54)は「熟睡はできないが、犬を独りにしておくのはかわいそうだから」と話した。

 避難所では食中毒や感染症、ストレスなどにも注意が必要だ。朝倉市の多目的施設「サンライズ杷木」に身を寄せる杷木志波(しわ)地区の避難者が独自に作った運営委員会の委員の一人、足立千奈美さん(53)は「我慢して口にはしないが、気付かないうちにストレスがたまっている人が多いのでは」と心配する。避難者の高齢男性は「家も田畑も失い、残ったのは農機具のローンだけ。この先のことを考えたら眠れない」とこぼした。

 福岡県精神保健福祉センターの楯林(たてばやし)英晴所長は「子供や障害者、高齢者、妊産婦は災害の恐怖のダメージを大きく受けやすく、配慮が必要になっている。周囲が見守ったり声を掛けたりし、話をしたがる人には耳を傾けたりするなど個別の支援が重要だ」と指摘する。【高嶋将之】



 ◇避難所生活での注意点



エコノミークラス症候群予防

・定期的に体を動かし十分に水分補給する

・利尿作用があるアルコールやコーヒーなどを控える

・できるだけゆったりとした服を着る



感染症の流行予防

・こまめに手洗い、うがいをする

・がれき撤去の際は長袖、長ズボン、手袋の上に厚手のゴム手袋をし、厚底靴をはくなどしてけがを防ぐ



熱中症予防と対策

・喉が渇く前に、こまめに水分補給する

・できるだけ涼しい場所で過ごす

・喉の渇きや目まい、筋肉のけいれんなど熱中症の兆候が見られたら体を冷やし、急いで受診する



心のケア

・不安や心配があれば保健師や相談員に相談する

・避難者同士が普段から声を掛け合う

(厚生労働省の避難所生活ガイドラインを基に作成)

最終更新:7/12(水) 23:43
毎日新聞