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本格始動の後継者は線が細い?スズキ、「ワンマン」「カリスマ」鈴木修会長から脱却できるか

7/13(木) 10:00配信

産経新聞

 スズキが、鈴木俊宏社長(58)を中心とした集団指導体制「チーム・スズキ」の移行に向け本格始動した。6月の株主総会では、約40年間議長を務めてきた鈴木修会長(87)に代わり、初めて長男の俊宏氏が議長を務め、“代替わり”を強く証明してみせた。スズキは修氏による強力なリーダーシップで成長してきた従来の「ワンマン経営」路線を改め、合議制でのかじ取りに転換して激動の自動車業界で生き残りを目指す。

 「二度と燃費不正問題を起こさないよう、社内で再発防止の徹底を図る」

 浜松市で6月29日に開かれたスズキの定時株主総会で、冒頭、俊宏氏は、昨年発覚した燃費不正問題に対し、ひときわ大きな声で、こう、再発防止を誓った。

 スズキの自動車燃費データの不正測定問題では、最終的に不正測定の対象が他社供給分も含めて26車種、約214万台に上った。この問題の責任を取って、修会長が当時兼務していた最高経営責任者(CEO)職を昨年6月に返上。CEOは俊宏氏が兼ねることになり、修氏のワンマン経営から、俊宏氏を中心とする合議制に、経営を見直すことになった。

 今回の総会では、株主からの質問に対して、担当役員の回答後に必ず俊宏氏が自分の言葉で考え方や方向性を説明。円滑なさばきで議事を進行する俊宏氏の姿を修氏は静かに見守り、2時間超の総会で修氏が発言したのは一度きりだった。

 しゃべりたがりの修氏が今年の総会でほとんど意見を主張しなかったのは、CEO返上後も会長に残り「実質的な体制は変わらない」との世間の批判に反論を試みる思惑があったとみられる。スズキは、過去にも副社長を中心とした集団指導体制に移行すると表明したが、修氏に依存する体質は大きく変わらなかった経緯がある。ここで修氏が出しゃばれば、世間の目は「やはり修氏主導」という見方で変わらない。そこでCEOで議長の俊宏氏に任せる姿勢を改めて示したというわけだ。スズキの経営を長年引っ張り、世界的な企業に育てた修氏も来年1月に88歳となり「米寿」を迎える。将来の経営を見据えれば、次の体制をしっかり整えておく必要がある。

 もっとも、カリスマ経営者としての修氏の存在感は依然大きい。燃費データの不正測定問題の影響の沈静化も、修氏が販売店への謝罪と説明のため全国行脚したことが奏功した。スズキの国内の主要販路は資本関係のない販売店だが、修氏への販売店の人気は絶大だ。これに対し、俊宏氏には「線の細さ」を不安視する声もある。

 昨年10月にトヨタ自動車と業務提携に向けた検討に入ったのは、大手に比べ研究開発費で劣るスズキが、自動車運転や環境対応車など先進技術対応を進めるには、強力な「後ろ盾」が不可欠になっていたからだ。ただ、検討は修氏が懇意にしていたトヨタの豊田章一郎名誉会長に協力を打診したことがきっかけとされ、俊宏氏を中心とする集団指導体制の「後ろ盾」を得る狙いもあるとみられる。

 インドで5割弱と断トツのシェアを持つスズキは同市場の強化を狙う企業にとって垂涎(すいぜん)の的だ。そんなスズキにとって、集団指導体制を盤石なものにすることは、世界的な合従連衡に飲み込まれないためにも急務となる。

 攻めと守りの両面の改革を先頭に立って主導することになる俊宏氏は、総会の最後に「価値ある商品、技術を提供できるようチーム・スズキ一丸となって取り組む所存だ」と強調。修氏も総会後の株主向けのあいさつで「チーム・スズキを見守りながら、業績の向上に貢献したい」と、俊宏氏主導による合議制を強力にサポートする考えを重ねて表明した。スズキは修氏の豊富な経験や天才的な勘に頼る経営から、チーム・スズキへ移行できるかの過渡期にある。チームの結束と土台を早期に固め、将来の経営基盤を太く、強くできるかが、激しい業界の生存競争の中でスズキが生き残れるかのカギを握ることになるのは間違いない。(経済本部 今井裕治)

最終更新:7/13(木) 10:00
産経新聞