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社員がネットに書く企業評価、見ているのはCEO

7/12(水) 16:07配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 求職中の人が利用するグラスドア(Glassdoor)のようなキャリア情報サイトを、企業の最高経営責任者(CEO)も参考にし始めている。オンライン上で自分に対する評価や社員の考えに目を通し、それを社内の方針に反映させるだけでなく、書き込みに反論することもある。

 インディード(Indeed)、ボールト(Vault)、クヌヌ(Kununu)、そしてフェアリーゴッドボス(Fairygodboss)などのサイトでは、匿名で雇い主の評価を書き込むことができる。投稿者は給与や福利厚生、そして職場の好きな点や嫌いな点など、さまざまなことについてコメントできる。その中でもグラスドアは従業員からのフィードバックが最も充実しているサイトのひとつ。評価されている企業は70万社以上で、CEOに対する支持や不支持も示すこともできる。

 公の場でありながら個人的な評価が書き込まれることもあり、企業のトップが投稿に反応することも増えている。キャリア情報サイトへの書き込みを必要悪と見る企業もあれば、それを便利な経営ツールとして利用する会社もある。株価を見れば投資家からどの程度支持されているか分かるように、投稿もパフォーマンス評価の尺度として使われる。

 不動産情報ウェブサイト、ジロウ・グループ(Zillow Group)のスペンサー・ラスコフCEOは、3年前からグラスドアのサイトを訪れ、約70件の評価に返信を書いてきた。投稿者から得た支持率は95%だ。ジロウはグラスドアの立ち上げも支援したリッチ・バートン氏とラスコフ氏が共同で創業した。

 ラスコフ氏と同じようにグラスドアで活発に投稿するCEOは、おおむね高い支持率を得ている。

 同氏は昨秋、「@Glassdoorに最近投稿された@zillowの社員の評価に手一杯だ」とツイッターに投稿。その後、「最近はほとんどの投稿が高評価だった。それでもいくつかは改善すべき点がある」とツイートした。

 これら投稿への返信で、社員の意見に目を通している姿勢を示そうとするCEOもいる。IT企業ナガーロの社員が仕事を邪魔する同僚についての不満を書き込んだところ、同社のマナス・フロリアCEOは「あなたの経験はあなたにとって現実問題なので、われわれは対処しなければならない。ぜひ問い合わせてもらいたい」と書き込んだ。

他社の評価もグラスドアで

 人材採用関連ソフトを開発するグリーンハウス・ソフトウエアのダニエル・チャイトCEOは、グラスドアに同社のレビューが投稿されるたびにメールでアラートが届くよう設定している。ここ数年内に投稿された74件のレビューは、ほとんど返信済みだ。投稿を無視する他、ネガティブな内容を書き込んだ人物を「言い負かせようとすると、問題が生じることになる」とチャイト氏は話す。同氏のCEOとしての支持率は95%だ。

 一部のCEOにとって、こうした対応は必ずしも簡単ではない。

 オンライン小売業オーバーストック・ドット・コムのパトリック・バーンCEOはこの春、同社がカフェテリアを利用して社員が外に出ないようにしているとする批判的な書き込みを目にした。それに対しては「なんてことだ。外に出るより社内にとどまりたくなるほどカフェテリアを改善し、価格も安くしたことを謝罪したい。われわれはなんてひどいことをしたんだ」と皮肉混じりに返信している。

 グラスドアでのバーン氏の支持率は58%だ。オーバーストックのバイスプレジデント、ミーガン・トゥオヒグ氏によれば、同社はポジティブな内容でもネガティブな書き込みでも返信する方針だが、特に具体的に「改善できることやさらに調査が必要となるもの」については対応をしているという。

 第三者がグラスドアの評価を参考にするケースも増えている。ジロウのラスコフ氏やその他の企業経営者は、買収先を評価するにあたって同サイトを利用する。米顧客情報管理(CRM)ソフトウエア大手 セールスフォース ・ドットコムから昨年流出した買収候補の資料には、相手企業のグラスドアでの評価やCEOの支持率も含まれていた。

 ラスコフ氏はグラスドア上の低評価が原因で、「表面上は良く見えて戦略的にも有意義だった数十件の買収案件から撤退した」とし、グラスドアを見れば「表面だけでなく内部も知ることができる」と続ける。

 グラスドアへの投稿に関わりすぎだと批判を受ける企業もある。酷評が続いた女性向け下着メーカーの新興企業シンクス(Thinx)では昨冬、当時CEOを務めていたミキ・アグラウォル氏からポジティブな書き込みをするよう命令されたとの匿名の投稿があった。その後CEOの座から下りたアグラウォウル氏は、好意的なフィードバックを書くように求めたことは否定し、社員には「実際の体験をシェアしてほしい」と伝えただけだと語った。

 アグラウォル氏は口コミサイト「イエルプ(Yelp)」を例に挙げ、好印象を受けた人が書き込みをすることはまれだと指摘。「最も騒ぐのは嫌な体験をした人だ。一番好きなレストランについて実体験をシェアするよう時々リマインドすることは、まったく健全なことだ」と語っている。

By Vanessa Fuhrmans