ここから本文です

無料で乗車した高齢者が妊婦をののしる? ソウル地下鉄の「妊産婦席」に賛否両論

7/13(木) 6:20配信

ZUU online

ソウルの地下鉄の車両に1両に2席ずつある「妊産婦配慮席」が賛否両論を呼んでいる。

実際に妊婦が「席を譲れ」と要求する老人男性にお腹を殴られる事件が発生。老人男性は妊娠中と答えた女性が本当に妊娠しているのか確認するといって妊婦のマタニティウェアをめくるなどしたという。

■「妊娠したことがえらいのか」

韓国の老弱者席は、日本のシルバーシートと同じく、高齢者、障害者、妊婦、乳幼児連れなどの優先席で、1両あたり12席ある(老弱者席を9席、3席を車椅子やベビーカーのスペースに充当している車両)。

本来は交通弱者の優先席だが、実態は高齢者専用席で、着席している若い妊婦を高齢者が立たせることは珍しくない。妊娠初期の妊婦がお腹を叩かれ、お腹の大きい妊婦を立たせて説教をするケースすらある。高齢者は「最近の若い人は何が大変で優先席に座るのか分からない」と主張。なかには「妊娠したことがえらいのか」と妊婦をののしる高齢者までいるという。

相次ぐ地下鉄車内のマタニティハラスメント対策でソウルメトロが「妊産婦配慮席」を設置したのは2013年。当初はステッカーを貼っただけで浸透しなかったため、2015年にシート、壁、床をピンクで統一した。この「妊産婦配慮席」は老人や身体の不自由な人などの優先席である「老弱者席」とは別モノ。冒頭で紹介した事件は昨年9月、ソウル地下鉄4号線の優先席で起きている。

■65歳以上の高齢者は無料、目的なく乗車するケースも

ソウルでは定まった目的を持たずに地下鉄を利用する高齢者が少なくない。65歳以上の高齢者が無料で乗車できる地下鉄は、費用をかけずに同世代の人と触れ合うことができる数少ない空間なのだ。車両の端にある老弱者席には同じ世代の高齢者が着席しており、話し相手にはこと欠かない。

ソウル市は地下鉄の赤字の主因を高齢者の無料乗車にあるとしている。ソウル市の発表によると2014年度のソウルメトロで黒字だったのは2号線と9号線だけで、他の路線は赤字だった。ソウルメトロ全体の2014年度の純損失は4245億ウォン(約452億8000万円)で、純損失の68%が無賃輸送によるものだった。

そこで高齢者に運賃を負担させるべきという声もあがっている。高齢の利用者が減ることで老弱者席に余裕ができるし、損失も減らせるからだ。ソウル市都市交通本部の関係者は、高齢者の無賃輸送は国の福祉政策であり、国は市の損失額の半分を補てんすべきだと述べている。

■「妊婦に配慮する」人は93%いるのに、「配慮されたことがある」妊婦は約半数

妊婦への配慮がないのは高齢者だけではない。地下鉄で妊婦に席を譲るのは若者や男性が多く、中高年の女性はめったに譲らないというが、妊産婦席に座っているのも実は男性が多い。

2016年7月、妊産婦優先席に座っていた男性数人が名誉を傷つけられたとして、Instagramページの運営者を訴えた。同ページには地下鉄の妊産婦優先席に座る男性を隠し撮りした写真230件が掲載されていたという。

2014年の保険福祉協会の調査によると「妊婦に配慮する」と答えた韓国人は93.1%に上るが、逆に「配慮されたことがある」と答えた妊婦は約半数にとどまっている。人々の意識が変わらない限り、マタニティを取り巻く“席取り戦争”の抜本的な解決策にはならないだろう。(佐々木和義、韓国在住CFP)

ZUU online

最終更新:7/13(木) 6:20
ZUU online