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次世代3Dディスプレイ「ライトフィールド」は飛び出さない、中にモノがある

7/13(木) 8:10配信

MONOist

 NHKメディアテクノロジー(NHK-MT)とジャパンディスプレイ(JDI)は2017年7月12日、東京都内で会見を開き、両社で共同開発を進めている、裸眼で3D映像が見られる技術「ライトフィールドディスプレイ」について説明した。

【ライトフィールドディスプレイを左右から見た状態などその他の画像】

 3D映像技術としては、専用の3Dメガネを用いる視差方式が広く知られている。2009年に公開された「アバター」をはじめとする映画や、同時期に発売された3Dテレビなどに採用されていた。また、同じ視差方式で、レンチキュラーレンズなどを用いたディスプレイにより裸眼かつ複数人数で3D映像を見られる技術もある。ただし、解像度が低下するという課題があった。

 ライトフィールドディスプレイは、物体の放つ光線をディスプレイによって再現するライトフィールド方式を採用している。これにより、専用メガネを用いずに裸眼で3D映像を見ることができる。ただしそれ以上に、ディスプレイに対して物体が飛び出したり奥にあったりするように見える視差方式に対して、ライトフィールド方式はディスプレイの中に物体が存在しているかのように見える点が最も大きな違いになる。

 NHK-MTとJDIが2015年から共同で開発を進めてきたライトフィールドディスプレイは、JDI製の17インチ8K液晶ディスプレイ(画素密度は510ppi)を用いている。ライトフィールドディスプレイ向けの3Dコンテンツは、NHK-MTが撮影(実写の場合)もしくは作成(CGの場合)した。

 今回の開発品は、従来のライトフィールドディスプレイでは3D映像を見られる水平方向の視域角が20~30度にとどまっていたところを130度までに広げたことが最大の成果となる。これによって、3D映像を同時に複数人数で見られるとともに、左から、正面から、右からなどと見る視点によって異なる3D映像を見られるようになる。

 2017年5月に米国で開催されたディスプレイ技術のイベント「SID DISPLAY WEEK 2017」で初公開し、来場者から多くの注目を集めた。「これまでにない高精細な次世代3D映像を実現できた」(NHK-MT 放送技術本部 映像部 副部長の大塚悌二朗氏)という。

 現時点で開発段階であり、実用化時期などは未定。大塚氏は、想定する用途として「視域角が広いので、多人数で見られる3Dサイネージや、美術工芸品の映像アーカイブ、教育分野などが考えられる。また立体を生かしたエンターテインメントについても検討したい」と述べている。

●2つの疑問、「ボケ」と「静止画のみ」

 今回のライトフィールドディスプレイを実際に見たところ筆者には2つの疑問がわいた。1つは、ディスプレイに表示されている3D映像にボケ(ブレ)があることだ。もう1つは、表示している3Dコンテンツが全て静止画であり、動画が一切なかったことである。

 JDI 次世代研究センター 先端技術研究部 テクニカルスペシャリストの林宗治氏は「ライトフィールドディスプレイの実用化に向けて、現時点ではディスプレイ本体だけでなく、対応コンテンツについても課題がある。例えば、今回使用した実写コンテンツは、物体をターンテーブルに載せて2Dのカメラで撮影しているが、焦点を合わせた箇所以外の部分がボケたようになるのはライトフィールドディスプレイの原理上ある程度出てしまう。また、高精細の8K液晶ディスプレイを用いているものの、3D映像全てを高解像に表現するには画素数が不足しており、解像感が低いところも出てくる」と説明する。

 また、大塚氏は「今回の開発成果において、3D映像の立体解像感としてはHD(1280×720画素)程度になっている」としている。

 動画については「ライトフィールドディスプレイに対応する3D映像の実写コンテンツの撮影は現状ではかなり難しい。しかしCGコンテンツであれば作成可能であり、ディスプレイ技術としても動画には十分対応できる。次の段階の開発成果を披露するときには、ぜひとも動画をお見せしたい」(林氏)という。なお、この“次の段階”は2017年度内を目指しているとのことだった。

最終更新:7/13(木) 12:03
MONOist