ここから本文です

日産「NV350 キャラバン」(2017年7月マイナーチェンジ)開発責任者 牧田裕氏

7/13(木) 14:00配信

Impress Watch

 日産自動車は7月13日、「NV350 キャラバン」をマイナーチェンジして発売した。

【この記事に関する別の画像を見る】

 今回のマイナーチェンジでは、従来モデルではバンの2WD車の一部に標準設定していた「インテリジェント エマージェンシーブレーキ(自動ブレーキ)」「VDC(ビークルダイナミクスコントロール[TCS機能含む])」「ヒルスタートアシスト」をバン全車に拡大して標準設定するとともに、「インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物 検知機能付)」を小型貨物車の4ナンバーバンクラスで初めてオプション設定するなど、先進安全装備の充実化を図った。

 また、「Vモーショングリル」を強調したデザインが与えられるとともに、「ヘッドライト(ハイ/ロービーム、オートレベライザー付)」「リアコンビネーションランプ」にLEDを採用するなど、エクステリアにも変更が加えられている。

 この新型NV350 キャラバンについて、開発を担当された日産自動車 Nissan 第三製品開発本部 Nissan 第三製品開発部 第一プロジェクト統括グループ DCVEの牧田裕氏にお話しを伺うことができたので、その模様をモータージャーナリストの岡本幸一郎氏がレポートする。

――キャラバンを担当されたのはいつごろからでしょうか?

牧田氏:2016年4月からです。その前は2014年の夏にスペインで立ち上げた「e-NV200」を担当していて、その前は「キューブ」に携わっていました。その意味では商用車的な視点というのはまだまだ勉強中です(笑)。

――キャラバンについては、ちょうどマイナーチェンジの方向性をどうするかという時期だったのでしょうか?

牧田氏:着任したころは、ほぼ提案事が終わっていて、最後の承認をもらおうかどうかというタイミングでした。それまで携わっていたメンバーがお客様の生の声を聞くなど、エンジニアとしての取り組みをしっかりやってくれていたので、そのあたりは上手く反映できたかなと思っています。

――ところで、ここ数年はLCV(小型商用車)市場がかなり伸びているそうですね。

牧田氏:経済の状況に左右されるところが多分にある車種なので、おかげさまで「ハイエース」さんともども好調です。この先オリンピックもあるので期待しています。

――その中で、販売シェアはいかがでしょう?

牧田氏:実は2012年にフルモデルチェンジする前は15%ぐらいだったところ、現行型になってからは30%程度を維持しています。倍増したのはもちろんありがたいことですが、できれば40%を目指したいです。

――そのための秘策というか戦略はいかがでしょう?

牧田氏:ご存知かもしれませんが、かつてキャラバンにはあまり品質面でよろしくない評判もあって、そのネガティブなイメージが根強く残っているのは否めません。それがこうしたクルマが使われている現場で広まってしまい、それを今でもひきずっているのは事実です。

 しかし実際には我々も、商用車であっても乗用車並みの品質で世に出そうとずっと取り組んできて、もちろん今ではそういった問題はまったくありません。シェアも30%まで来たので、この5年間でいただいた信頼が今後はだんだん浸透してくれるものと思っています。

――なるほど、今度はよいウワサが広まる番というわけですね。ところでハイエースというと、アフターマーケットが非常に充実していて、だからこそハイエースを買うという人も少なくないと思いますが?

牧田氏:そうですね。オートサロンでの出展ぶりを見ても、ハイエースさんは圧倒的ですね。我々も有名ショップさんやスポーツ店とのタイアップなども行なってきましたが、今回キャラバンが新しくなったことで、こちらにも目を向けてもらえて、さらに幅が広がるのではという期待もあるので、今後の動向がどうなるのか注意深く見守っていきたいと思います。

――実際にも見た目に新しさが感じられます。

牧田氏:キャラバンも現行型になってから「カッコいい」と言っていただけるようになったのはありがたいのですが、実は巷の評判ではライバルのほうが評判がよいようです。それはやはりアフターパーツの豊富さも相まって、街を走るハイエースでカスタムされた個体が多いことから、一般のお客様はなおのことそのように思っているのかもしれません。

――なるほど、それはあるでしょうね。

牧田氏:そこで我々も視覚面には大いに力を入れました。今回のマイナーチェンジでは、フロントパネルまでは変えていないのですが、そこから下の、グリルとランプで変更感を出しました。日産のアイデンティティである「Vモーション」を強めてより印象的なフェイスにしていますし、LEDヘッドライトもなかなかよいなと思っています。ハイビーム/ロービームともにLEDにしたのがポイントで、ハイビームがLEDではないものもありますが、それだとハイビームにしたときがっかりしますよね。「あれっ、普通の電球の色だ!」みたいな(笑)。このクルマなら両方とも明るい白色です。視認性の面でも有利ですし、それはこのクルマの強みになるはずです。クルマ好きな方には刺さると思います。

――ボディカラーもずいぶん思い切りましたよね? 印象的な新色が4色もあるのには驚きました。

牧田氏:そうですね。乗用車系のお客様を意識するとハイエースとの真っ向勝負で、こうした挑戦的な色があった方がアイキャッチになると考えました。一番冒険したのはマルーンレッドです。パーソナルユースの方にはありかなと。実はもっと派手な赤の検討もあったぐらいなんですが、最終的にはこのようにしました。

――メインカラーはインペリアルアンバーですね?

牧田氏:乗用と商用を共通でいくとなると、なかなか色のハードルが高いのです。どちらにも違和感がないようにするとなると、やはり落ち着いたトーンになります。ファントムブラックはクールな印象で、カスタマイズ志向の方にも刺さる色ではないかと思っています。

――インテリアの雰囲気も変わりました。

牧田氏:ステアリングを換えて、センターまわりも変えてピアノブラックを入れましたが、これだけでもずいぶん印象が変わったと思います。

――今回のマイナーチェンジで、クルマ自体の商品力がかなり上がったと思います。

牧田氏:ライバルにないものを付けたことは大きいと思います。それでも、これで十分かという不安感はいつもあります。頑張ったとはいえ、なかなか一度にそれほど多くは入れられない事情もあって、もっと大きなことをしたかったという思いもあります。それは今後の課題として、「次はもっとこうしよう」という戦略を持って取り組みたいと思っています。

――オートエアコンやバックドアクロージャーを待っていたユーザーも少なくないと思います。

牧田氏:オートエアコンは特にお客様の生の声でも要望の大きかった装備です。せめて「プレミアムGX」のように、バンだけど乗用車ライクなモデルには「やっぱりあった方がいいよね」という声が非常に多くありました。ライバルに先を越されていたので、まさしくお客様の声に応えて今回キャッチアップした装備ですね。バックドアクロージャーも、あれば重宝することは間違いありません。

――アラウンドビューモニターやエマージェンシーブレーキといった装備は、こういうクルマこそ必要だと思います。

牧田氏:おっしゃるとおりですね。もともと我々が最初にやった技術だという自負があるので、まずはそこに絞りました。原価や販価は確かに上がるので、ビジネスジャッジになるところはありますが、毎日使うクルマだからこそさまざまなリスクが高くなるわけで、よりあったほうがいい装備であることは間違いありません。ここは我々の強みの部分なので、もっと伸ばすべきと思っています。

――時代としても、ユーザーがそこにちゃんとお金を払うようになってきています。

牧田氏:商用車なので、個人で購入いただいて仕事をしている人はもちろん、法人でフリートで購入いただいても、ぶつかって修理が必要になるとクルマが使えないことになり、ビジネスに影響を及ぼしてしまいます。それはやっぱり不利だなと認識いただけたら、きっとこういう装備にお金を払っていただいた方がトクという計算もできます。装備そのものが保険のようなものです。

――なかなか目先のことになると、少しでも安くと考えがちなのも分かりますが……

牧田氏:お客様にもお金の事情が付いて回るのは当然ですが、結局はトクになるという理解が得られると、よりこうした装備へのニーズが高まっていくはずです。ぜひ期待したいと思います。

Car Watch,岡本幸一郎,Photo:原田 淳

最終更新:7/13(木) 14:00
Impress Watch