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ブラジルで68歳の起業家が仮想通貨流通アプリを開発・商品化

7/13(木) 7:02配信

MEGABRASIL

地域の消費拡大にも貢献

ブラジル人は全般的に楽しむことに全力を尽くす傾向が強い。人生を楽しむための努力は惜しまず、特に、お得に楽しむための情報収集に熱心だ。

そんな国民性をビジネスに組み込んだシニア起業家がサンパウロで注目を浴びている。

TVグローボが7月2日、経済情報番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」で伝えたところによると、サンパウロのシニア起業家ペルミニオ・モレイラさんが、仮想通貨とその流通のためのアプリを開発し、商品化にこぎつけたという。

ペルミニオさんは68歳、50年以上ビジネスの世界で活動している。自身のキャリアの中で立ち上げた会社は6社、今回は若者の牙城ともいわれるモバイルアプリケーション分野での起業となる。

今回商品化した仮想通貨とその流通のためのアプリに費やした調査・開発期間は6年。ターゲットはお得な情報を求めてやまないブラジルの消費者だ。

彼が世に送り出した仮想通貨「エコ(ekko)」は専用のアプリで通貨の入出庫を管理する。エコを入手したい消費者は、まず専用アプリをダウンロードし、200エコの付与を受ける。換算レートは1エコ=1レアル(約36円)とシンプルだ。

レストランやペットショップなどのエコ決済ネットワーク加盟店では、時間帯によって5%から70%と変動するものの、支払いの一部にエコを充当することができる。あるレストランを例にとると、14時までの飲食は代金の10%、14時以降の飲食は15%までエコで払うことができる。

一部エコ払いにした買い物・消費に対しては、金額に応じてまたエコが付与される。例えば総額40レアルの買い物をして、うち10レアル分をエコで払ったとすると、エコ以外の手段で払った30レアル分のエコが発行される。

お得すぎて逆に疑わしさすら感じてしまう仕組みだが、そこはビジネス歴50年の起業家、消費者・加盟店・ペルミニオさんの3者の関係がウィン・ウィンに落ち着くよう設計がされている。

まず、商品・サービスに対するエコでの支払いはあくまで支払総額の一部であること、また、エコに有効期限(2017年7月現在、付与から90日間)があり無限には増えないことがサービス存立の基盤となっているという。

現在のところ、サービス提供範囲はサンパウロ市モエマ地区に限られているが、ある加盟レストランではエコ導入後に来客数が30%増加した店もあるという。

エコで払う分は顧客にとっては実質割引となる。加盟店の店長は、エコの導入で客単価がかなり上がったという。消費が確実に増えている実感があるようだ。

仮想通貨というよりは地域限定電子クーポンに近いペルミニオさんの「エコ」だが、この事業を始めた動機として、次のように語っている。

「消費を増やす、ということが今我々の社会で求められていることなのです。景気を上向かせるためにはまず消費が増えなければなりません」(ペルミニオさん)

現在モエマ地区でエコ決済ネットワークに加盟している店舗は50店。ペルミニオさんがこの事業から得る収入について詳細は語らなかったが、加盟店の売上に連動したフィー収入を得ているとのことだ。消費者がエコ決済アプリを使って支払った際に店舗側の売上がわかるため、フィー計算が可能だという。

若い起業家の牙城、というイメージの強いアプリ開発の世界に乗り込んだことについて、ペルミニオさん自身は違和感を感じたことはないという。

「私は自分が年老いていると感じたことは一度もありません。いつも新しいことにオープンであればいくつになってもどんなことでも可能です」(ペルミニオさん)

ペルミニオさんのような成功者がいる一方で、ブラジル社会における起業の状況は厳しい。起業コンサルティング会社トラストヴォックスのタチアナ・ペゾーラさんによると、ブラジルにおいてスタートアップ期の企業のうち25%は一年以内に事業から撤退しているという。

タチアナさんによると、失敗の原因は調査不足で、特に起業前のマーケット調査が圧倒的に足りないためだという。自分の商品・サービスを市場に出してどのくらいの売上が見込めるのか徹底的にシミュレーションをして、自分で自信が持てる段階に至る前に起業しているケースが多いとのことだ。

起業までの具体的なプロセスとしては、たとえ時間がなくても少なくとも自分が売ろうとしているモノ・サービスを消費している人と話し、同業者となりそうな人と話すべきだという。また、「すでにこのサービスを始めている競合はいないか?」「もっといいアイデアを持っている人はいないか?」と常に自分に問いかけることも重要だという。

世界有数の起業家人口を誇るブラジルには「一国一城の主」に対する強い憧れ、起業家に対する社会的評価の高さが背景にあると思われる。年齢を障害としない成功例、やりたいと思った時が起業時という失敗例、いずれにもその社会的背景を感じる。チャレンジ精神十分なブラジル、起業・事業ノウハウをシェアできる社会的基盤が整えば、経済が成長軌道に戻る日は遠くないかもしれない。

(文/原田 侑)

最終更新:7/13(木) 7:02
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