ここから本文です

ピクサー最新作『カーズ/クロスロード』監督が受け継ぎ、伝えたい“想い”

7/13(木) 7:00配信

ぴあ映画生活

ディズニー/ピクサーの最新作『カーズ/クロスロード』が15日(土)から公開になる。本作は、ピクサーを率いるジョン・ラセターが監督を務めた『カーズ』シリーズの最新作で、ラセターではなく、本作が初監督作になるブライアン・フィーがメガホンをとった。なぜ、ラセターは自分で監督せず、フィーに監督を任せたのだろうか? フィー監督に話を聞くうちに、ラセターが彼に託した想いと、本作に込められたメッセージが浮かび上がってきた。

『カーズ/クロスロード』 写真

『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』など、ピクサーには多くの“ヒットシリーズ”が存在するが、その中でも『カーズ』は特別なポジションにある作品だ。ピクサーを率いるジョン・ラセターの幼少期の思い出から生み出された本シリーズは、意志を持ち、言葉を話す自動車たちの世界を描いている。1作目では生意気な若手レーシングカーの“ライトニング・マックィーン”が、伝説の老レーサー“ドック・ハドソン”に師事して自身の進むべき道を見出していくまでが描かれ、映画監督として大成功をおさめたラセターはキャンペーンでまわった世界各地の景色や印象を、マックィーンと親友メーターが大活躍する『カーズ2』に盛り込んだ。ラセターの記憶と経験と想いがどの映画よりも深く込められているのが『カーズ』シリーズといっていいだろう。

新作で監督を任されたフィーも「このシリーズはジョン・ラセターの一部なんです」と語る。「だから、監督は僕ですが、この映画でもジョンはいつだって映画づくりに深く関わってくれました。僕は監督の経験がなかったけど、ジョンは誰よりも僕のことを信頼してくれた。だから彼にはたくさん質問したし、ピクサーの他の監督たちからもたくさんのことを学び、支えてもらいました。観客のみんなに楽しんでもらえる映画をつくるのはもちろんですが、この映画についてはジョン・ラセターが誇りに思える映画にすることも同じぐらい大事でした」

かつては新人だったマックィーンも、本作では“ベテラン”と呼ばれるようになっている。自身はまだまだ現役で走れると思っているが、同じトラックでしのぎを削ってきた仲間たちは少しずつ最前線から離れていき、新世代も台頭してくる。言葉にできない焦りがつのる中、マックィーンはレース中にクラッシュ。怪我から回復するも、前線から離脱し、失意に沈む彼は、若いトレーナー“クルーズ・ラミレス”に出会い、行動を共にする。

『カーズ』では、ハイウェイ開通によって忘れ去られてしまった田舎町“ラジエーター・スプリングス”が物語の舞台になったが、本作でもアメリカの“忘れられた風景”が物語上、重要な役割を果たしている。「映画製作前に様々な場所でリサーチを行いましたが、最もインスピレーションを受けたのは、田舎町にある“小さなレーシング場”でした。そこはすでに誰も使っていない廃墟のような場所で、少し恐怖を感じるようなところでした。でも私はこの“ゴースト・トラック”を見て、ローマのコロッセオ(円形闘技場)のことを思い出したんです。現在はもう存在しないけれど、かつてはここで、様々な出来事があったのだと想像できる場所、有名ではなくて人の目からそっと隠された場所……この映画を語る上ではそんな場所が大きな助けになりました」

再起を誓うマックィーンは、車がまったく走らないビーチや、泥まみれのサーキットなど“忘れられた場所”を転々とするも、復活の道は見えず、不安は大きくなっていく。自分はこのままリタイアしてしまうのか? フィー監督は、マックィーンの複雑な心情を、リサーチで見つけてきた風景と、微細な“光の描写”で表現することにこだわった。「マックィーンの感情や状況を“ビジュアル全体”で表現することにこだわりました。プロダクション・デザイナーのウィリアム・コーンと一緒に取り組んだのは、ひとつの画面の中に“両面性”をもたせることでした。例えば、あるシーンでは、晴れていて色彩は明るいのにマックィーンは建物の“影”の部分でじっとしていたり、逆に曇っていていて暗いシーンなのに画面の奥の方には晴れ間があって光が差し込んでいる画面にしました。私たちの人生もそうですが、ある天候=心の状態の中にいても、すぐ後に予想もしなかった状況が待ち構えていたりしますよね? だから私たちも、観客が潜在的な部分でマックィーンの人生を感じてもらえるように、微細な部分までこだわってアニメーションをつくっていたのです」

かつて。マックィーンが落ち込んだときは、師匠のドック・ハドソンが助けてくれた。でも、ハドソンはすでにこの世にはいない。彼は、若いトレーナーのクルーズの助けを借りながら、復活戦に向けて準備を重ね、その中で自身の“これから”を考え始める。「私がこの映画を作る時に最初に考えていたのは、自分が師として仰ぐ者がいなくなったときに、人はどうするのか? という物語でした。でも、ある時にふと気づいたのです。私は両親に育てられて、自分が子どもをもつようになった時に、自分の成功よりも、子どもの成功を何よりも願い、喜び、誇りに思っていることに。そこで、この感情を映画の中で追求すればいいんだと気づいたのです。だから、ドック・ハドソン、マックィーン、クルーズと違う世代のキャラクターを描くことで結果的に、人生のサイクルそのものが表現できたと思います」

人は時に、誰かの成功を願うことで、人間として大きく成長する。自身の人生を投影した『カーズ』シリーズを新人監督に託したジョン・ラセターの想いは、ちゃんとフィー監督に伝わったようだ。「この作品が完成した日、みんなで映画を観たのですが、上映後にジョンに試写室の隅に呼び出されて『僕はこの映画が本当に大好きだ。ありがとう。本当にいい仕事をしてくれたね』と言ってもらえたときは、本当にうれしかったです。『カーズ』の世界はジョン・ラセターがつくったものですから、この映画を通して、彼のことや、彼の世界をより深く知ってもらいたいですね」

『カーズ/クロスロード』
7月15日(土)全国公開

最終更新:7/13(木) 7:00
ぴあ映画生活