ここから本文です

「いきなり!ステーキ」NY店大成功 「世界一のステーキチェーンになる」

7/13(木) 18:00配信

ニュースソクラ

【ニュースソクラ編集長インタビュー】「いきなり!ステーキ」一瀬邦夫社長(上)

 立ち食いステーキの新業態「いきなり!ステーキ」が急速に店舗数を増やしている。快進撃の秘密を一瀬邦夫ペッパーフードサービス社長に聞いた。そこには長年の経験に基づく確かな成算とともに、嬉しい誤算がたくさんあったという。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)

――いきなりステーキのNY店が大成功のようです。

 まだまだです。私の成功の定義は、米国で1,000店を展開し、NASDAQに上場することです。これが実現すれば、自然に世界一のステーキチェーンになっているはずです 。
  
 《ペッパーフードサービスは、2014年度、2015年度の売上げ伸び率で外食上場企業ナンバーワンを連続した(2016年度は2位)。そのエンジンとなった「いきなり!ステーキ」が生まれたのは2013年12月。場所は銀座四丁目である》

 構想のきっかけとなったのは『俺のイタリアン』、『俺のフレンチ』のヒットです。趣味がステーキの私は、立ち食いコンセプトをやるならフレンチよりステーキの方がよっぽど似合うと考えました。仕掛け人に直接話を聞いてみようと、『俺の』シリーズを展開する坂本孝社長にお声をかけて会食しました。

 お会いしてみると話は盛り上がり、意気投合しました。坂本社長は価格戦略まで教えてくれました。最後には「うちはステーキはやらないから、一瀬さんが『俺のステーキ』をしませんか」とまでおっしゃいました。

 《一瀬社長は結論的にはそのネーミングを使わなかった。自分の看板「いきなり!」で立ち食いステーキを進めていく》

 私は赤坂の自分の店で経験して知っていました。ステーキの半額はものすごいインパクトがある。3日間もキャンペーンすれば十分な起爆剤になります。これをエブリデイでやり続けて利益を出せればいい。「いきなり!ステーキ」のビジネスの組み立てはその年の8月までに完成し、自分のiPadの中に入っていました。

 問題は立地です。やるなら銀座だと考えました。話題性と情報発信力が違います。 お店を探していたところ良いところが2つ出てきました。嬉しいことですが、2店舗をほぼ同時に開店するのは、正直なところ勇気が要りました。

  一号店にしたのは銀座四丁目のお店です。グラム10円で提供している上質の牛肉をグラム5円で提供しました。しかも厚切りカットの炭火焼き。私が長年の経験で到達した、最もおいしいステーキの焼き方です。お客さんには、こんなうまいステーキはないとおっしゃっていただきました。

 高級牛肉を使ったステーキの立ち食い。価格破壊。銀座。この分かりやすいコンセプトのインパクトに新聞雑誌テレビの取材が殺到し、あっという間に知れ渡りました。

 勝算はありました。みんなが持っている価値観をひっくり返すような低価格で良いものを提供すれば驚きや感動となる。客さんがたくさんいらっしゃれば、粗利率が低くても絶対額の利益は出ます。

 《銀座四丁目店では一瀬社長自身がカット場に立ち、お客様の要望に従って肉をカットした。その際、カットは300グラムを下限とした。150グラムや200グラムの注文は受けられないと言って断ったという》  

 だってこちらは半額で提供しているわけです。それに肉はある程度の大きさがないと美味しく焼けない。そのこだわりを理解していただきました。

 《一瀬社長の頭のなかには「客単価3,000円、平均滞在時間1時間」という数字があった。40席の店を12時間営業して席の平均稼働率が75%なら売上は108万円という具合である。ところがこの目算が狂った》

 お客さんは3000円も使ってくれませんでした。サラダもビールも思ったほど頼んでくれません。実際の客単価は平均2000円でした。

 しかし滞在時間は1時間ではなく30分で回転していくことがわかりました。つまりお客さんがたくさん来てくださりすれば、1テーブル1時間当たりの売上は4000円になります。嬉しい誤算でした。

 「やってみて初めて分かることもある。やってみなけりゃ分からない」。この短歌のような標語を私はよく使うのですが、この時の経験はまさにそれでした。

 《銀座開店の翌年、一瀬社長は30店舗体制に向けてアクセルを吹かす。しかし出店自体が目的になってしまい、冷房設備の不備、人材教育の不足などに悪影響が出た。その結果、顧客満足度が下がり、9月に入って売上が下がってしまった。》

 反省しなければならない事態ですが、ここで私は「立ち食い」の縛りを外す決断ができました。店舗に椅子を入れたのです。

 椅子を入れるメリットは二つあります。一つはお客様が楽に食事できるようになること。30代後半、40代のコア客層のお父さんが子供連れで来店できるようになります。高齢者も来店しやすくなります。来店動機を限りなく広く取ることが飲食店経営の王道です。

 もう一つのメリットは平均滞在時間が長くなることです。これは普通ではデメリットなのですが、お客様が減った状況においてはメリットになりました。空席率が減り、外から繁盛しているように見える効果があったのです。

 しかし「いきなり!ステーキ」にとって立ち席は原点であり、これを残すことにはこだわりました。少しでもいいから立ち席を残して欲しい。しかし実際には立ち席が空いていても椅子席が空くまで待つお客様が増え、椅子を入れる方が回転率が上がる逆転現象も起きています。この状態なら全席椅子にしようと考えるのが合理的です。やってみて初めて分かることもあるということです。

――急拡大のなか、人材育成は課題になったのでしょうか ?

 研修センターを整備し、店長会議、社長道場などの社内教育制度を取り入れました。これにより店長たちは個々の事態に際して「社長ならどうするか」という視点で対応できるようになっています。

 また年一回、社員旅行を行っています。もちろん私も参加します。社員旅行は社員全員が参加できるわけではなく、参加要件は明確に示します。今年は330人が参加しました。私の意思を全員が共有できるよう、努力しています。
構成・豊川博圭

最終更新:7/14(金) 18:09
ニュースソクラ