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宿泊客激減でも密漁許さない 体験型観光にかじを切った漁村集落

7/13(木) 17:44配信

福井新聞ONLINE

 漁業権を持たないレジャー客による岩ガキやサザエ、アワビ、ウニなどの「密漁」に対し、福井県内の全漁協が厳しく告訴する方針で足並みをそろえて2年目の夏を迎えた。県内で最後に貝採取の全面禁止に踏み切った小浜市漁協管内では、密漁目当ての宿泊者が姿を消し収入の柱を失った民宿も少なくない。それでも関係者からは「本来の海に戻った」との声も。体験型観光へかじを切った集落の現状を追った。

 若狭湾に面し、民宿や海水浴場が点在する小浜市の内外海地区。9日に海開きをした矢代海岸は12日、平日とはいえ人影はまばらだった。

 「以前は平日でも車がずらりと並び、浜辺に駐車スペースがないほどだった」。市漁協理事で自身も民宿を営む池端孫勝さん(67)は「密漁取り締まり中」と書かれた看板を指さした。

 6軒の民宿が軒を連ねる矢代集落では昨年4月、貝採取の全面禁止で漁家組合などが合意。ほかの集落と同様、看板をあちこちに立て密漁禁止の周知を徹底した。

 池端さんの民宿でも常連客からの電話に「全面禁止」を伝えると、予約を取りやめる人が続出した。「“プロ”同士の連絡網があるのか、今年は漁目的の客からの予約はほとんどない」という。

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 一部の民宿や渡船業者らが密漁を黙認してきた背景には、漁目的の客に依存してきた事情があった。しかし、数年前から転売目的とみられる“プロ”が、稚貝までも根こそぎ持って帰る行為が横行。治安悪化も懸念され「家族連れが来ない浜辺になる」「目先の利益を追っていてはダメ」。こうした意見が噴き出し全面禁止に至ったという。

 池端さんは「昨夏は数百万円の減収になった民宿もある」としつつも「こんな商売を続けるわけにはいかない。本来の姿が戻ってよかった」と言い切る。

 資源の枯渇に頭を悩ませていた市漁協の樽谷宏和参事(58)は「漁業者には漁業権が認められている半面、国民の財産である海を守る義務がある」と指摘。昨年の告訴件数は一昨年より増えたという。

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 矢代では養殖ワカメの収穫やタコかご漁、へしこ作りなどの「体験型メニュー」に活路を見いだし、今夏は関西から中学生60人の新規予約が入った。民宿経営者らでつくる「うまし漁村の会」の角野高志さん(35)は「新たな産業をつくり出そうと集落全体の機運が高まった」と説明。矢代観光協会の栗駒正一会長(65)は「リピーターの宿泊客を増やすことが鍵」と話す。

 内外海地区の漁村活性化事業をサポートしている一般社団法人「うみから」の代表理事、西野ひかるさん(55)は「隠れ家的な漁村の原風景が残っているのが小浜の強み」と強調。同地区の阿納で体験型教育旅行が軌道に乗り始めた点などを挙げ「漁村に明るい未来が見えてきたのではないか」と期待する。

福井新聞社