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岩木川源流探訪/明治天皇献上の「安門瀑布紀行」書籍化

7/13(木) 11:12配信

Web東奥

 幕末から明治にかけて活躍した青森県弘前市出身の絵師・学者、平尾魯仙(1808~80年)の画帳「安門瀑布紀行」がこのほど、同市の平尾魯仙顕彰会によって一冊の本になった。魯仙は弘前から岩木川をさかのぼり暗門の滝(現西目屋村)まで探訪。壮観な滝や渓流、里山の風景、山村に暮らす人々の生活を克明に描いた52枚の絵と紀行文を残している。編さんに当たった同顕彰会の三戸建次さん(71)は「岩木川の源流の奥に素晴らしい滝があることを知り、津軽の母である岩木川の素晴らしさを感じてほしい」と話している。
 平尾魯仙は絵師として多くの傑作を描く一方、平田篤胤の私塾で国学を学び、動植物や考古、民俗についても多くの記録を残している。1862(文久2)年、魯仙は弟子らと共に弘前城下を出発、現在の弘前市岩木地区、東目屋地区、西目屋村田代などを経由し、2泊3日の行程で暗門の滝に出掛けた。
 一行は厳しい山道を上り「三の滝」「二の滝」「一の滝」を探訪。魯仙は壮観な滝や周辺の山々、崖をよじ登る人たちなどを精細かつ大胆に描写した。現在はダム湖に水没している砂子瀬・川原平地区など道中の風景も描き、こぎんと思われる刺し子を着た人たち、民家の床の間に置かれた火縄銃、薪材を川に流す様子など村人の生活ぶりも記録している。
 魯仙は探訪の記録を画帳「安門紀行」にまとめている。76(明治9)年には、明治天皇巡幸に合わせ「安門紀行」をあらためて描き写した「安門瀑布紀行」を完成させ、天覧に供したという。魯仙没後の95(同28)年には孫2人が安門瀑布紀行を皇室に献上。現在は宮内庁書陵部が所蔵している。
 三戸さんは数年前から、安門瀑布紀行の絵と文章を突き合わせる作業をしてきたが、「資料を残すだけでなく、多くの人に知ってもらいたい」との思いから書籍化を決意、宮内庁の許可を得て編集作業を進めてきた。
 発行した本はA4判149ページ。紙質と印刷にこだわり、魯仙の絵と紀行文を紹介しているほか、絵と文の内容、時代背景を理解しやすいよう現代文の解説を付けている。「安門紀行」の写真資料、平尾家に伝わる「安門瀑布図」も掲載し、安門瀑布紀行の絵と比較することができる。
 「魯仙が三つの滝だけでなく、ちょっとした風景も繊細に描いていることに驚いた。津軽の風景の素晴らしさを訴えようとした魯仙の執念に心を打たれた」と三戸さん。「単なる風景画にとどまらず、当時の目屋の人たちの生活を知ることができる民俗学的資料としても価値がある」と強調している。「安門瀑布紀行」は、100冊限定で3千円(税別)。県内の主な書店で販売している。

東奥日報社

最終更新:7/13(木) 11:12
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