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<仏ニーステロ1年>暴走対策を模索 フェンスで車歩道分離

7/14(金) 18:18配信

毎日新聞

 花火見物客ら86人が犠牲となったフランス南部ニースのトラック暴走テロ事件から14日で1年が経過した。事件後、欧州では車などを使ったテロ事件が続き、身近にある車などを用いたテロを未然に防ぐ難しさが浮き彫りとなっている。ニースでは、事件のあった遊歩道と車道を分離するフェンスの建設が進むなど、テロのリスクを軽減するための模索が自治体や観光施設で続けられている。【ニース(フランス南部)で賀有勇】

 「残念ながら、イスラム教徒のコミュニティーにもかかわりのない若者の過激化を止めるすべは我々にはない」。ニース市内のモスク(イスラム礼拝所)の指導者、オットマン・アイサウィさん(47)が嘆息する。ニース事件の容疑者で警官隊に射殺されたチュニジア人のラフエジブフレル容疑者は、モスクなどでの過激主義者との接触歴はなく、犯行計画を共有した仲間もいなかった。直後に過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出したが、組織的関与はなかったとみられる。危険人物として捜査当局に把握されることもなく、直前にインターネットを通じて過激思想に感化され凶行に及んだとみられている。

 「不信心の欧米人を殺せ。爆発物がなければ車でひき殺せ」。ISは2014年ごろからネット上などでこうあおっており、容疑者は呼びかけに共鳴するかのように遊歩道に突っ込んだ。事件の影響か、その後、ベルリンなど欧州各地で車を使ったテロ事件が相次いだ。テロ組織と直接の関係がなく、爆発物などの調達もせずに凶行に走る人物の把握は難しいのが実情だ。

 惨劇に見舞われたニースでは今、総額2000万ユーロ(約26億円)を使い、事件があった遊歩道と車道を分離する全長4キロのフェンスや支柱の設置などの工事が進められている。

 だが、事件で長男ロマンさん(10)を亡くしたエミリー・プチジャンさん(36)は「テロ対策は歓迎だが、テロが起きた現場であとから行っても意味がない。防犯カメラの活用など、万策を講じてほしい」と心境を語る。

 パリ中心部の観光名所、ノートルダム寺院でも新たな治安対策が講じられ始めた。年間約1300万人が訪れる寺院では、この1年間に観光客や治安要員らを狙ったテロ未遂事件が2件発生。寺院では7月から、登録すれば一部出入り口で列に並ばず入場可能なときを自動的に知らせるスマートフォンアプリの活用を始めた。入場待ちの列を少しでも短くし、テロの標的になりかねない人の密集を防ぐ狙いがある。

 テロ対策に詳しい社会科学高等研究院(EHESS)のオリビエ・ショパン研究員は「全ての危険人物の把握や公共空間の安全を保障するのは不可能。物理的なテロ予防策の構築とともに、人々が密集する花火大会のようなイベントは中止するなど、複合的な対策が必要だ」と指摘する。

 マクロン政権は、今年に入って7件の重大なテロ計画を阻止したとしている。フランス当局は過激化した人物約1万人を国内で監視。ISに加わった仏国籍戦闘員が、ISのシリアやイラクでの劣勢に伴い、母国への帰還が増加することも懸念材料だ。

 欧州の最近の主なテロ(未遂も含む)は次の通り。

 ★は車を使ったテロ事件

2015年1月7~9日 パリの風刺週刊紙シャルリーエブド本社などの襲撃事件で計17人死亡

11月13日 パリ中心部の劇場や飲食店、競技場などで銃乱射や爆発が起き、130人が死亡

16年3月22日 ブリュッセルの地下鉄駅と国際空港で同時テロ。32人死亡、日本人2人を含む約340人負傷

★7月14日 フランス南部ニースでトラックが群衆に突っ込み、86人死亡

★12月19日 ベルリンのクリスマス市場に男がトラックで突っ込み、12人死亡、約50人が重軽傷

★17年3月22日 ロンドンの英国会議事堂周辺で男が車で通行人をはねるなどし、5人死亡、50人が負傷

★4月7日 スウェーデン・ストックホルムの繁華街でトラックが群衆に突っ込み、5人死亡

4月20日 パリ中心部のシャンゼリゼ通りで武装した男が警察官を襲撃し、1人死亡、2人負傷

5月22日 英中部マンチェスターのコンサート会場で自爆テロ。22人死亡

★6月3日 ロンドンのロンドン橋で車が通行人をはね、近くのバーの客らが襲撃され8人死亡

★6月19日 ロンドンでイスラム教徒の列に車が突っ込み、1人死亡

★6月19日 パリのシャンゼリゼ通りで、自動小銃やガスボンベなどを持った男が乗用車で憲兵隊の車両に突っ込む。けが人はなし

最終更新:7/14(金) 21:10
毎日新聞