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DMMバヌーシーはリアル競馬ゲーム? DMMに直撃

7/14(金) 16:16配信

ITmedia ビジネスオンライン

 7月10日に明らかになったネットサービス大手DMM.comの競馬業界への参入。1万円から出資できる一口馬主アプリ「DMMバヌーシー」を7月末にリリースする。

【「DMMバヌーシー」の画面(開発中)はこちら】

 DMMは事業展開のため、7月10~11日に開催された国内最大の競走馬競り市「セレクトセール」で、良血馬を続々と1億円超えの高額落札。11日に3億7000万円(税・保険込み約4億679万円)で落札を決めた際には、場内に拍手が沸き起こったほどだという。2日で約7億円の投資を行い、競馬業界のみならず、他業界からも注目を浴びている。

 DMMバヌーシーとはどのようなサービスなのか? 企画はどういった経緯で立ち上がったのか? なぜアプリ名は「バヌーシー」になったのか? DMMとDMMドリームクラブ社で取締役を務め、事業を統括する野本巧氏に聞いた。

●「ダビスタ」にハマっていた

――なぜこのサービスを企画したのでしょう。

 学生時代に「ダービースタリオン」シリーズと「ウィニングポスト」シリーズにめちゃくちゃハマったんです。今も「スターホースポケット」にハマっていて、数万円ほど課金しています。こうした競馬ゲームは、馬と馬を組み合わせて良い馬が生まれたときに、すごく面白いんですよ。

 ただ、競馬ゲームの楽しさはバーチャル体験。リアルの体験とはまた別だと感じています。良い馬ができて良いレースをしたとき、ゲームだったら「おお、来た来た!」くらい。でも、もし実際に馬主さんのように自分の馬がリアルのレースを走ったら「ウォーーー!」と大興奮すると思うんです。

 競馬というコンテンツは大きなパワーを持っています。日本ダービーのような大きなレースでは、東京競馬場に10万人以上が集まります。全国のウインズ(場外馬券発売所)に集まる人を含めたら50万人くらいなのではないでしょうか。ライブで10万人呼べるようなコンテンツは、日本のアーティストなら10組もいません。

 テレビでも各局がオンエアして、視聴率は全部足したら10%ほどでしょうか。「ダービースタリオン」などの競馬ゲームに熱狂したことがある人も含めれば、競馬に注目している層は1000万人を超えるはず。その一方で、個人馬主は2000人ほど。既存クラブ会員はもう少し増えて数万人程度です。それ以外の多くの人たちは「馬主になる」ということを考えたこともない。そうした人たちに「馬主と同じような感動体験の共有」を提供したいと考えたのが、企画の始まりです。

――野本さんはFacebookでサービスのテーマについて「投資やギャンブルではなくて感動体験の共有」と発言していますね。

 サッカーや野球って、多くのファンが「おおー!」と盛り上がれますよね。サッカーチームのオーナーではないし、勝っても負けても自分にお金が入るわけではないのに、みんなが楽しんでいる。それは感動、熱狂、感情を共有しているからだと思うのです。競馬でも、同じようにこの感動を共有することを楽しむ人は既にいます。それがさらにレースのとき、購入者の仲間たちと喜びを共有することができれば、一人一人の熱狂が集まって、1万口分の1万倍になったらすごいことになるかもしれない。

 当初は、できれば1口当たり3000~5000円で申し込めるようにしたいと考えていました。スマホゲームで課金をする際、ゲーム内アイテムのゴールドをまとめ買いするくらいの負担にしたかった。ただ、現時点では1万口が限界でした。

――安い馬を買えば、より安く一口馬主になれるとも思いますが、セレクトセールでは高額落札が続きました。

 そうですね、競走馬は安ければ200~300万円くらいで購入できます。ただ、それが走る(レースで結果を出す)かというと、データで見る限り可能性は低い。もちろん、高ければ走るというわけでもないのですが、1億円未満の馬と1億円以上の馬とで比較すると、獲得賞金は2倍以上の差が出てきます。

 また、僕のような競馬の知識が浅いファン層でも「この馬の兄弟の名前を知ってる!」「種牡馬が知ってる馬だ!」と身近に感じられる馬がいいと思いました。僕は、馬券を頻繁に買っているわけではないし、馬の血統についても詳しくないんです。僕が知っている馬は、必然的に金額が高くなってきます。

――知名度が高い馬の血統を持つ馬は、競りでも非常に高くなりますね。

 DMMバヌーシーを「投資やギャンブルではなく」と思っているのは、馬券を買うことと競走馬を買うことは全く違うものだと考えているからです。高額購入金額と最高獲得賞金額とを比較すると購入金額を上回る確率は低いにもかかわらず、それでも馬主さんが購入されるのは夢とロマンと感動体験に投資されているのではないかと考えています。つまりそれだけの価値があるのではないかと。

 競走馬ファンドは金融商品ですが、資産を増やすための投資としては考えないほうがいいと思っています。元本を割る可能性も高いですし、競走馬としてのデビューができなかったり、けがをして早期引退をするリスクもあります。「自分の馬がレースに出たらどんな気持ちになるだろう」という興味を持っていただけたらいいなと思います。

――ネットでは「一口馬主というよりもクラウドファンディング的なサービスだな」という声もありました。

 それは近いですね。ただし、単なる応援の寄付型のクラウドファンディングではなく、賞金の配当があるので、配当型のクラウドファンディングに近いかと思います。

●予想外の注目を浴びたDMMバヌーシー。どういうサービス?

――7月10~11日のセレクトセールでは、注目度が高かったですね。

 予想外の注目です。本来は7月17日週に正式なプレスリリースを出す予定だったんですが、10日にリアルスティールの全妹を1億6000万円(税・保険込み約1億7521万円)で落札したときに、自然とマスコミ各社が集まり、囲み取材のようになりました。インタビューが終わった後に名前を聞かれまして購買者登録を「DMM.com」にしていたので、「趣味で買っているのか」と思われたらまずいなという思いがあり、そこで急きょ事業計画を明かしました。

――企画はいつからスタートしていたのでしょうか。

 3年前に立ち上がり、約2年半前から動き始めました。競馬事業の参入にはさまざまな条件があり、1つ1つ満たしていきました。セレクトセールに参加したのは今回で3回目です。最初に視察として行ったのが2年前のセレクトセールで、そこで牧場の方を紹介していただきました。去年のセレクトセールでベネンシアドールの2015を1億9000万円(税・保険込み約2億807万円)で落札しています。ただ、当時はJRAの馬主資格もなく、資格を得ることができない可能性も十分にあったので、DMMの名前は伏せての購入でした。

 先日のセレクトセールで購入した馬を含めて、1歳馬が5頭、2歳馬が4頭で、ローンチ時には計9頭の募集を開始する予定です。

――具体的に、どのようなサービスになるのでしょうか?

 スマートフォンアプリ(iOS、Android)とWebサイトから利用できるサービスです。アプリ上で馬を選んで購入すると、自分の馬のレース結果の確認、入出金記録、牧場や厩舎からの近況動画などを見ることができます。動画制作は「情熱大陸」などを手掛けている制作会社に外注しています。週に5日のペースをメドに馬の近況を伝えていきます。

 UIに3DCGを使ったのは競馬ゲームのような親しみやすさと、バーチャルではありますが馬に触れて愛着を持ってほしいという思いからです。当初はもっと多くの機能を入れていたのですが、アプリが重くなってしまったので機能を減らしました。

 牧場はノーザンファーム、追分ファーム、下河辺牧場など6カ所。今後さらに協力していただける牧場を増やしていく予定です。各牧場の紹介動画を作成していて、牧場長や調教スタッフの方に出演していただいています。今後厩舎の方にもご協力をお願いしたいと思っています。それは牧場や厩舎で働くホースマンの姿や、競争馬が生まれてからデビューに至るまでの姿をお届けしたいからです。それは馬主さんや競馬関係者しか見ることのできない世界だからです。

――動画やバーチャルでの表現は、DMMの他事業とのシナジーがありそうです。その他に、DMMだからこそやれることはあるでしょうか。

 DMM.com証券の存在が非常に大きいです。購入や配当金の支払いはDMM.com証券の口座で行うので、申し込みの際にはDMM.com証券の口座が必要です。もともと口座を持っている場合は申し込み手続きをスピーディーにできます。

 レースごとに証券口座に配当金が入る仕組みは楽しいですし、いつでも出金できるという利便性があると思っています。DMM.com証券のノウハウは、DMMバヌーシーを実現するためには不可欠でした。

●既存の一口馬主クラブと何が違う?

――このサービスは、既存の一口馬主クラブとどういった点が違うのでしょうか。

 競走馬を所有するには馬代金以外にも毎月さまざまな支払いがあります。育成料、医療費、輸送費などの変動コストが発生します。既存のクラブではそのコストを毎月クラブ会員の方が支払いしています。

 DMMバヌーシーでももちろん同じコストは掛かるのですが、競争馬の6歳末までに掛かる費用を暫定的に計算し、前払いの預かり金とすることによって購入時以降の支払いを必要としません。前払い金には預かり金を含んでいますので6歳末よりも早く引退した場合は残存の預かり金を返還します。初回の購入金額に馬代金、馬の育成費用、販売手数料、管理手数料、サービス運営に関わる費用を合わせた価格で購入していただきます。したがって購入以降は賞金や出走手当てに応じた配当や、早期引退の場合の預かり金の返還などの受け取りだけとなるわけです。

――馬の近況動画などの他に、何か特典はありますか?

 初年度9頭のうち7頭の名前をバヌーシー会員に決めてもらうことを予定しています。現時点で冠名をつける予定はありません。クラブの承認とJRAの規定の範囲内でフルネームの命名権です。決定方法の1つはその馬の最も口数が多い会員が決定する方式です。2つ目は口数に応じて当選確率が比例する抽選方式です。残りの2頭はクラブで決定します。

●アプリ名の由来はまさかの……

――アプリ名はなぜ「DMMバヌーシー」になったのでしょうか。

 「馬主(うまぬし)」というと、個人馬主と法人馬主のことを指すんです。だからクラブ会員は「馬主」ではないんです。サービス名にクラブを付けずに新しいサービスを連想できるものはないかと考えていました。

 そんなある日、インターネットでモロッコ出身のマラソン選手のハーリド・ハヌーシさんの記事にたどり着いたんです。マラソンの当時の世界最高記録を3度も更新したヒーロー。マラソンというと長い距離。日本ダービーと菊花賞は長い距離。ハヌーシ選手のように長い距離を最も速く走るスターになってほしいという思いと、「馬」をかけて、「バヌーシー」という造語をサービス名にしました。

――そ、それは、本当の話ですか?

 本当です。JRAさんにも「ハヌーシ選手というマラソンランナーがいて……」と説明しました。

――ありがとうございます。予定より早いお披露目になったDMMバヌーシーですが、今後の予定は。

 ローンチは、7月29日あるいは8月5日を予定しています。「馬主になる」とは思ってもみなかったという方にこそ興味を持っていただけたらなと思います。