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「京町家」守れ 7年で5600軒消失 無届け取り壊しに罰則方針

7/14(金) 15:12配信

産経新聞

 ■出店・宿泊施設…企業の活用進む

 京都の歴史や文化、町並みの景観を形成する伝統的木造建築「京町家」が危機に瀕している。相続問題や維持管理の難しさのため、取り壊されてマンションや駐車場になる動きが止まらず、京都市の調査では最近の7年間に約5600軒が消えたという。「京都のアイデンティティーを脅かす重大な危機」との認識を強める京都市は、京町家の所有者に取り壊しの際、事前の届け出を義務付け、違反した場合には罰則を科す条例の制定を目指している。(塩山敏之)

 京都市が昨年9月から今年3月、市域の京町家の残存状況を調査したところ、前回(平成20~21年)より5602軒(11・7%)減少し、4万146軒だった。

 年間700~800軒のペースで数を減らした計算。また残っている京町家のうち5834軒(14・5%)は空き家で、空き家率は前回調査より4ポイント上昇した。

 相続問題や維持管理などの難しさが京町家減少の背景にあるとされるが、そもそも家主が自宅を京町家だと認識していないケースもある。前回調査によると、自分が住んでいる家が京町家だと認識していたのは、わずか27%。半数は普通の木造住宅ととらえていた。

 こうした認識不足も、京町家が取り壊されたり、マンションや駐車場に転用されたりすることにつながっているとみられる。

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 このような状況を受け、京都市の諮問機関「京都市京町家保全・活用委員会」は5月、京町家の所有者に対し、取り壊しの事前届け出を義務化するなどの条例の制定を、門川大作市長に答申した。

 答申では「京町家を保全・継承するためには、京町家の保全・継承に関する条例を制定する必要性がある」と指摘。すべての京町家を対象に、所有者が取り壊す意向がある場合、市へ事前に届け出ることを努力義務とする内容を求めた。

 特に、京町家が集積して町並みを形成している地域では、取り壊す際に事前の届け出を義務化。届け出から原則として1年間は取り壊せないこととした。この間、所有者に対し、保全・活用に向けた働き掛けを重点的に行う“猶予期間”とする狙いがある。

 さらに、景観や文化の継承に重要な京町家は個別に指定。事前に届け出ずに取り壊したり、届け出後1年以内に取り壊したりした場合は、罰則(5万円以下の過料)を科すとした。

 門川市長は「京町家は京都の宝。何としても保全・継承しなければならない」と意欲的。市は答申を受け、条例案を策定し、9月市議会での提案を目指す。

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 京町家は景観だけでなく、地元経済の下支えもしている。

 大丸松坂屋百貨店は、祇園の京町家を借りた新店舗「大丸京都店祇園町家」(京都市東山区)を昨年11月にオープン。フランスの高級ブランド「エルメス」を誘致し、期間限定で出店した。錠剤製造用金型の製造・販売を行う「ツー・ナイン・ジャパン」(同市南区)は、築約100年の京町家を改修して新研究開発棟を建設した。

 京町家を活用し、宿泊事業参入へ乗り出すのは下着大手のワコール(同区)。空き家の京町家を所有者から借り上げ、保全を図りつつ内装を整備して宿泊施設に転用。来年4月に2~3施設を開業予定で、今後5年をめどに約50施設の展開を目指すという。

 京都経済同友会都市問題研究委員会の南部邦男委員長は「当たり前のように京都の景観を享受しているが、放っておけばどんどん衰退していく。京町家のある雰囲気を子、孫の代まで残さなければならない」と話している。

最終更新:7/14(金) 15:30
産経新聞