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【茨城】緑岡、取手二に敗退も見せたエースの意地!「吉川の5球」にナイン涙

7/14(金) 16:50配信

スポーツ報知

◆全国高校野球選手権茨城大会 ▽2回戦 取手二3―0緑岡(14日・JCOMスタジアム土浦)

 食らえ―。エースは魂を込めて右腕を振った。緑岡が3点ビハインドで迎えた8回2死一、二塁の危機。緊急登板した吉川僚慶(3年)は取手二の3番・瀬戸口憂斗(2年)をカウント2―2に追い込むと、渾身のストレートを投じた。表示は自己最速から10キロも遅い121キロ。それでも闘志全開のボールに、バットは空を切った。3アウトチェンジ。ピンチ脱出だ。たった5球。でも投げられた。三振を奪った。喜ぶナインの笑顔が、心にしみた。

 「最後なので、壊れてもいいと思いました。今までのマウンドの中で一番、気持ちを込めて投げた。3年間やってきたことを、全部のっけようと腕を振りました」。9回表、打線は2安打と反撃もゲームセット。最後の夏は4番手のリリーフで、投げられた打者は1人のみだった。それでも涙を拭きながら、背番号1は爽やかに言った。「3年間、つらい練習を乗り切れたので、悔いはありません」

 アクシデントは開幕目前の6月初旬に起きた。ブルペンで投球中、スピードを出そうと思い切り右腕を振ると、肘に痛みが走った。やべえ。やっちまったか。完治までは一定の日数を要するとの診断だった。夏の大会で投げられるかどうかは、微妙だった。直前の練習試合は登板できなかった。

 それでも上田英雄監督(49)は吉川に背番号1を託した。待ってるぞという意思表示だった。ナインも一丸になった。エースに投げさせるんだ。そのためにも勝ち抜くしかない―。

 中でも奮投したのは背番号10の変則サイド・大塚聖冴(3年)だ。入学時からずっと吉川と切磋琢磨してきた。投げられないつらさは一番、理解していた。昨夏はメンバー外。だが最上級生になって、進化を遂げた。初戦の太田一戦で好投し、この日も先発。シンカーやシュートを駆使して、4回途中を3安打1失点と粘った。大塚は言う。「吉川の分も自分が、と思った。勝ち進んで、吉川に投げて欲しかった」

 一塁側スタンドでは吉川の母・佳子さん(38)が力投を見守った。「ケガしたことをギリギリまで、私にも隠していたんです。野球に関しては弱音を吐かない子。いつも『大丈夫』としか言わなくて…。エースの意地だったんでしょうか」。5球を見届け、続けた。「12年間、野球をやる姿を見てきましたが、きょうが一番かっこいい姿でした」

 「最後なので、悔いのないようにやれ」。そうマウンドへ送り出した指揮官も「吉川がピンチを抑えて、ベンチ内が『何とかしようぜ』という空気になった。まさか120キロも出るとは…。本当に頑張ってくれました」と目頭を熱くした。橋本一輝主将(3年)も「練習試合も全然、投げられなかったのに…。いきなりぶっつけ本番で三振を奪うのが、アイツのすごさです」とたたえた。

 試合に出られない間も、ベンチ内ではでっかい声を出し続け、ナインを鼓舞した。たった5球。青春を完全燃焼できた。涙は乾き、エースは笑顔でこう結んだ。「みんなで野球をやってきた3年間は、本当に楽しかった」(加藤 弘士)

最終更新:7/14(金) 16:50
スポーツ報知

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