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「肉マネー」「増金システム」・・・危ないネーミングが好き

7/14(金) 18:20配信

ニュースソクラ

【ニュースソクラ編集長インタビュー】「いきなり!ステーキ」 一瀬邦夫社長(下)

 立ち食いステーキの新業態「いきなり!ステーキ」が急速に店舗数を増やしている。快進撃の秘密を一瀬邦夫ペッパーフードサービス社長に聞いた。そこには長年の経験に基づく確かな成算とともに、嬉しい誤算がたくさんあったという。

 《「いきなり!ステーキ」の快進撃を支えた仕組みに「肉マイレージ」がある。カードだけでなくスマホのアプリにもなり、お得感と競争意識と優越感をうまくくすぐる。常連顧客を日々創造する肉マイレージシステムも一瀬社長が発案した》

ーー肉マイレージが評判が顧客獲得にプラスだったようですね。

 肉マイレージシステムの構想も初期からありました。ヒントを得たのはJALマイレージです。囲い込みのツールとして非常に優れていると感じ、導入しました。

 ゴールドカード、プラチナカードへと昇格すると色々なメリットを享受できます。たとえばゴールドだとウーロン茶、プラチナだとワインやビールが毎回無料で飲めます。それらのメリットを、エントリーカードであるメンバーズカードに書き入れました。

 肉マイレージは、一回に一人分しかつきません。何人かで来店して、カードを持つ人が全員分の支払いをしても、その人が食べた分しかマイレージにならないのです。このシステムが肉マイレージの権威を高めています。

 肉マイレージカードには「肉マネー」がチャージでき、これで支払いがスマートにできます。基本的にはチャージした金額分が肉マネーになるのですが、それだけでは面白くありません。

 10000円チャージすると10300円分の肉マネーがつくようにしました。300円分増えています。これを「増金システム」と名付けました。この手の危ないネーミングを付けるのが好きなんです。

 さらに増金の特異日を作ることにしました。毎月29日、にくの日です。この日は増金率が3倍になります。10000円で900円分の肉マネーが余分につくという設定です。これは大きな反響を呼びました。

 気を良くした私は、2016年2月29日に5倍に挑戦しました。10000円で11500円分です。これはさすがに怖かったので、4年に一度しかない2月29日を選びました。

 やってみると6900万円の現金が、何を提供するわけでもなく集まりました。今では毎月29日を5倍の日にしています。

 つい最近、アメリカで4万円分チャージしました。ちゃんと6000円の増金が効いて嬉しかったですね。

――アメリカ人の好みは日本人と違いますか?

 一切変わりませんね。日本のシステムそのままをアメリカに持ち込みました。現地のテレビ局のレポーターが食べてみて「ダブルWAO」と表現しています。

 もともと私のステーキの原点は戦後の山王ホテルです。アメリカ軍の将校や議員さんを相手にステーキを焼いていました。アメリカ人がおいしいと思うステーキと日本人がおいしいと思うステーキに変わりはありません。

 だからアメリカ進出に恐れはありませんでした。NY進出計画に着手した時、日本の店舗はまだ3つでした。

 アメリカの店は内装もシステムもすべて日本のままにしています。「ジャパンホスピタリティ」を前面に「Jステーキ」として売り出します。

 一号店を超一等地に出店し、立ち食いステーキのインパクトで報道してもらうパターンも日米同じでした。最初から椅子を置いていたらあそこまでは報道されなかったでしょう。郊外に展開する際には椅子席を導入するパターンも、おそらく同じになると思います。

 《いきなり!ステーキの国内店は公共交通移動文化圏の都心部がほとんどだったが、新規店舗は自家用車移動文化圏の周辺部へと拡大している。》

 空港、ショッピングセンター、高速道路のサービスエリアなどに出店が増えてきました。コンビニの跡地も極めて良い立地になることが分かりました。郊外店の売上はいいですね。「いきなり!ステーキ」の知名度が上がってきたため、地方でも展開できるようになりました。

――確かにすごい勢いですが、一過性のブームに終わる心配はありませんか?

 厚切りステーキを安価にたっぷり楽しむ行為は人間の本能にかなり近いところにあると考えています。短いブームにはならないでしょう。回転寿司が登場し、お寿司が安く楽しめるようになったときも一過性ではないかと言われましたが、ご覧の通り定着しました。

――ライバルチェーンが参入することについてはどうお考えですか?

 参入はあるでしょうね。しかし私たちは「いきなり!ステーキ」を実施するにあたって多くの特許、実用新案を出しています。私たちと同じようなことをするのは相当に難しいとは思います。

■聞き手 土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

■構成 豊川博圭

最終更新:7/14(金) 18:20
ニュースソクラ