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東彼杵のみそ屋一夜で経営危機 福岡・大分豪雨で杷木支店が被災 仲間が支援の手

7/14(金) 12:56配信

長崎新聞

 5日未明に発生した九州豪雨で甚大な被害に遭った福岡県朝倉市杷木地区。濁流にのみ込まれた建物の中に1軒のみそ屋がある。長崎県東彼東彼杵町でみその製造販売を手掛ける大渡商店の支店だ。3代目を目指す大渡康平さん(27)は被害を知り、目の前が真っ暗になった。一夜にして経営危機に陥ったが「とにかく売らなければ」。窮地に手を差し伸べてくれた仲間とともに、がむしゃらに、一歩を踏み出した。
 創業約60年を数える。杷木には約30年前に出店。全体の売り上げの4分の1ほどを占めていた。杷木店は民家と田んぼに囲まれ、少し離れた場所に細い川が流れていた。しかし豪雨で、のどかな光景は一変。濁流で周囲の家は流され、店の基礎部分はえぐられた。鉄柱は折れ曲がり、建物は傾いた状態でなんとか踏みとどまった。
 大渡さんは8日に現地入り。「気持ちのどこかで『本当は大丈夫じゃないの』というのがあったんですけど」。渇いた土が舞う中、店の前でぼうぜんと立ち尽くした。扉はつぶれて開かない。窓ガラスを割って入り、顧客名簿など最低限必要な書類だけを手に取った。崩れ落ちる恐怖から建物の奥には進めなかった。
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 夕方に東彼杵町へ戻り、その足でコンビニエンスストアを経営する森一峻さん(32)を訪ねた。実は大渡商店の経営状況は芳しくなかった。「販路開拓や商品の見せ方はどうすべきか」。いずれ店を継ごうと考えていた大渡さんは、以前から森さんに今後の展開を相談していた。
 将来に向けた相談は、早急に対応が必要な課題に変わった。杷木店で販売するため春に仕込んだ6千キロのみそを、9月までに売らなければ資金繰りに困り、秋の仕込みが難しくなる。
 森さんは“弟分”の窮地を東彼商工会青年部の仲間に伝えた。9日にさまざまな職種のメンバーが集合。知恵を出し合って少量販売を企画し、その日のうちに注文用のチラシを製作。みそを使ってくれる飲食店も探し始めた。12日には町民有志が集まり、付加価値を付けた販売や商品開発について意見交換。みそを用いたパンや菓子、料理の提案があり実現に向け動いている。
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 ここ数日、深夜に家に戻ると、社長である父、武さん(65)の部屋の明かりがついている。元気はなく、ショックの大きさは計り知れない。父とは経営方針を巡り、何度もぶつかってきた。後継の話も、まだしっかりとできていない。
 今回の危機を乗り越え、将来へ光が見えたとき、きっと父も認めてくれるはずだ。「逆境を(上向く)転換期にするため、今はがむしゃらに動くしかない。在庫を売って、仕込みをして、また売る。そして次を考えていきます」。その言葉に、3代目として歴史をつなぐ覚悟がにじんだ。

長崎新聞社

最終更新:7/14(金) 12:56
長崎新聞