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増える「多選知事」 8月に7期目に挑戦する知事も

7/15(土) 12:10配信

ZUU online

全国で4期以上務める多選の知事が13人に上っている。10年前は7人だっただけに、この間にほぼ2倍に増えた勘定だ。多選は政治腐敗や行政組織の硬直化を招くとして、多選自粛条例を設けた地方自治体が少なくないが、条例を提案した知事自身が約束を破って多選に踏み切る事例が出ている。

有権者の関心が高い争点は原発再稼働などに限られ、過去最低の投票率を記録する知事選挙が少なくない。各党相乗りで現職を支持する傾向が強まり、有権者の十分な選択肢を与えられないケースも増えている。

■過去最高は8期、現職では6期目がトップ

全国知事会によると、全国47都道府県知事のうち、4期以上務めている知事は7月13日現在で13人を数える。このうち、6期目が橋本昌茨城県知事と谷本正憲石川県知事の2人、5期目が井戸敏三兵庫県知事1人だ。

4期目は高橋はるみ北海道知事、三村申吾青森県知事、福田富一栃木県知事、上田清司埼玉県知事、石井隆一富山県知事、西川一誠福井県知事、古田肇岐阜県知事、山田啓二京都府知事、飯泉嘉門徳島県知事、広瀬勝貞大分県知事の10人。

多選知事は10年前が7人で、2012年末に一時、2人まで減っていただけに、増加傾向が強まっている。2000年代には、片山善博鳥取県知事(当時)ら改革派と呼ばれた知事が相次いで2~3期で退任したが、そういうケースも少なくなった。

多選で在任期間が長くなれば、知事の年齢も高齢化する。現職の最高齢は広瀬大分県知事の75歳。西川福井県知事、荒井正吾奈良県知事、谷本石川県知事が72歳で続き、井戸兵庫県知事も8月に72歳を迎える。

公選制になって以降、過去の知事で最も当選回数が多いのは、奥田良三奈良県知事(在任1951~1980年)、中西陽一石川県知事(1963~1994年)の8選。それに次ぐ7選は蜷川虎三京都府知事(1950~1978年)だ。

■橋本茨城県知事は8月の知事選で7期目に挑戦

7月2日投開票の兵庫県知事選挙では、現職の井戸知事にコラムニストの勝谷誠彦氏、元兵庫労連議長の津川知久氏、前加西市長の中川暢三氏の無所属3新人が挑んだ。最大の争点は井戸知事の5選出馬の是非。3新人が多選批判を展開したのに対し、井戸知事は自民、民進、公明、社民各党の県組織から推薦を受け、4期16年の実績を訴えた。

兵庫県知事選が4人で争われたのは27年ぶり。投票率は40.86%と比較的高く、参院選と同日選挙だった前回の53.47%を下回ったものの、前々回の36.02%を上回った。結果は94万票余りを獲得した井戸知事が、次点の勝谷氏に30万票近い差をつけている。多選批判は県民に受け入れられなかった。

8月の茨城県知事選挙では、自民党が元経済産業省官僚で動画配信大手「ドワンゴ」役員の擁立を決めたのに対し、橋本知事は4月の記者会見で「大変多くの団体から立候補要請をいただいた。その声に応えたい」と全国最多の7選出馬を目指す考えを明らかにした。

橋本知事は当初、自民党と2人3脚で県政を進めていた。しかし、5期目の選挙戦で自民党茨城県連が推薦を見送り、元官僚を擁立した。前回は候補者擁立が見送られたため、今回が8年ぶりの保守分裂選挙になる。

菅義偉官房長官、石破茂前地方創生相ら自民党有力者が相次いで茨城入りし、「知事は3選まで」などと多選批判を繰り返している。

■在任中に制定した自粛条例に反して出馬した知事も

当選回数が問題ではなく、行政運営の中身で判断すべきとする考え方もあるが、米国の大統領選挙で3選出馬が禁じられているように、多選は懐疑的に見られることが多い。行政組織の硬直化や政治腐敗がしばしば起きてきたからだ。

多選を条例で制限しようとする動きは、21世紀に入って各地で出てきた。多選禁止条例は2007年に神奈川県で制定されている。知事の任期を3期12年までとする内容だが、施行期日を定めておらず、法的な拘束力を持たない。

多選を一律に禁止するのは憲法上の基本的人権や職業選択の自由を奪いかねないとする意見もあり、多くの自治体は多選自粛条例を定めている。多選自粛を首長の努力目標とするもので、埼玉県や神奈川県横浜市、大阪府柏原市、東京都杉並区などが制定した。このうち、杉並区など廃止された例もある。

自身の1期目に自粛条例を制定した上田埼玉県知事は、2015年の選挙で条例に反して4選出馬し、当選した。2016年に4期目の当選を果たした福田栃木県知事も就任当初、権力の座に居座ると腐るという意味の「権腐10年」を主張していたが、「引き続きやってほしいと要請をいただいた」として主張を引っ込めている。

こうした動きに対し、「多選の弊害。権力が自己増殖して自分で打ち出した条例や信条を無視している」との批判がある一方で、投票率の著しい低下が各地で起き、有権者が十分な関心を示さなくなったように見える。政党側も与野党相乗り知事の増加で有権者に選択肢を提示できなくなっている。

多選の是非は個々の選挙で有権者が判断すべきことだとしても、存在感を発揮できない政党や地方政治に対する有権者の関心の低さが、知事の多選傾向を助長しているといえそうだ。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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最終更新:7/15(土) 12:10
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