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<海保>西之島でみる海図が「新刊」されるまで

7/15(土) 10:00配信

毎日新聞

 小笠原諸島・西之島(東京都)の海図と海底地形図が一新され、6月30日に発刊された。日本周辺海域の海図は海上保安庁海洋情報部が作製しており、噴火活動が続く西之島は地形や海底の様子が大きく変わったため、近年では珍しいほぼ全面改定の「新刊」となった。海図ができるまで、どのようなプロセスを踏むのかを追った。【米田堅持】

【西之島の海図作成に使われた計画図】

 ◇平成初の「全面改定」

 海図を「新刊」として作製するのは、昭和の終わりごろに小笠原諸島などの離島や無人島の測量を行って以来のことで、平成に入ってからは初めてという。ゼロベースで海図を作製する場合、まず測量する範囲を決めることから始まる。西之島の場合は、噴火で海底や地形が変化をした部分を中心に南北16キロ、東西11.5キロを範囲とした。

 範囲の次は、測量の精度を決める。西之島周辺は通航する船舶も少なく、港湾工事を行う可能性は低いので、4段階中、最も緩い基準で作製したという。

 ◇航空機、船、無人特殊搭載艇……さまざまな手段を駆使

 範囲と精度が決まれば、実際に現地で測量を行う。今回は2015年6月から今年1月まで測量を実施。測量には大型の測量船だけでなく、航空機や無人の調査船を使用。その特性に合わせて使い分ける。

 西之島周辺は水深が急激に深くなる地形ということもあり、沖合は大型の測量船を使用した。大型船は揺れが少なく、天候の影響も受けにくいので精度が高く、速度も速い。24時間態勢で運航できるので広い範囲を効率的に測量ができる。水深が浅い場所や、港内など狭い場所での測量は小型船を使用する。西之島は噴火活動が続いていたこともあり、危険を避けるために測量船「昭洋」に搭載された無人特殊搭載艇「マンボウ2」による測量も行われている。

 船による測量は音波で行うが、水温や船や機材による差が生じるため、得られたデータの補正を行うことが必要になる。

 海岸線やサンゴ礁などのごく浅い場所では航空機による測量も行われる。西之島のように周囲に飛行の障害となる山や建物がない場所で威力を発揮する。ただしレーザー光を使うため、透明度の低い海での測量には向いていないという。

 このほか、上陸して潮の干満を1カ月ほど観測して水深の基準となる最低水面を決める作業も行われた。

 ◇最後は人の目で

 得られたデータをもとに、縮尺や島の位置、地名をどのように書き込むかといった海図のもととなる「設計図」を決め、測量データをパソコンで「設計図」に書き入れていく。データが重なった場合は、より精度の高いものを優先する。書き入れたデータをもとに等深線を決め、潮の干満や潮流なども加えていく。西之島の場合、潮流に大きな変化がなかったことから、潮流は過去のものを流用した。データがひととおり書き込まれると紙に印刷され、人の目で丹念にチェックをしてから印刷され、海図は完成する。

 作製された海図は、船の航行安全のためだけではなく、西之島の面積の拡大に伴い、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)が50平方キロ拡大したことを主張する根拠ともなっている。

 「新刊」されたばかりの西之島の海図と海底地形図だが、4月以降の噴火活動で再び、西之島が広がっていることから、活動が沈静化した後に再測量することになるという。

最終更新:7/15(土) 10:00
毎日新聞