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<映画>リリーさん主演で障害者の性 バリアフリーへの思い

7/15(土) 10:01配信

毎日新聞

 手足に障害がある男性と、精神的な障害を抱えた女性の恋愛を描いた映画「パーフェクト・レボリューション」(松本准平監督)が9月29日から公開される。障害者の性に対する理解を訴える活動をするNPO法人ノアール理事長の熊篠慶彦さん(47)の実話が基で、熊篠さんの友人であるリリー・フランキーさんが主人公クマを演じる。公開に先駆けて13日、慶応義塾大学三田キャンパスでバリアフリー試写会を開催。トークイベントではリリーさんらが障害者にまつわる課題について意見交換した。【中嶋真希】

【写真特集】画期的な試写会に参加したリリーさん

 「身体障害者だって恋もするし、セックスもしたい。障害者はただの人間なんです」--。「パーフェクト・レボリューション」は、車いす生活をしながら障害者の性への理解を訴えるクマと、精神的な障害を持つ風俗嬢ミツの恋愛物語。周囲から偏見の目を向けられながらも、その壁を壊しながら突き進んでいく。

 企画・原案の熊篠さんは、障害者の性に関する啓発活動のほかに、バリアフリーのラブホテル情報発信、体が不自由でもできるセックスを紹介するアダルトビデオ(AV)に出演するなどしてきた。約10年前に、熊篠さんの活動に賛同したリリーさんは、ノアールのイメージキャラクターを作成したり、イベントに出演するなどして応援。熊篠さんの恋愛が映画化されると決まり、リリーさんは二つ返事で映画出演を引き受けた。

 ◇障害者が見に来られるように

 映画化で、熊篠さんが強く意識したのが、「障害者が劇場に見に来られるようにすること」。映画は、視覚障害者向けの音声ガイドや聴覚障害者向けの字幕を流すスマートフォンアプリの「UDCast」対応にした。この日は、同大文学部社会学専攻岡原正幸研究会の授業の一環として、UDCastを使ったバリアフリー試写会を実施。学生のほかに、車いすユーザーら10人も参加し、上映後はリリーさん、熊篠さん、松本監督、岡原教授によるトークイベントも開かれた。

 最初の数分は、視覚障害者向けの音声ガイドを聞きながら映像を見ずに鑑賞。次に、映画の音声を消して、聴覚障害者向けの字幕を見ながら鑑賞した。その後は、音声ガイドか字幕かを各自自由に選択して、映画を楽しんだ。

 学生からは「悲しい顔をしていると思った時に、音声ガイドは『おだやかな表情』と言っていたりして、良い意味でも悪い意味でも、解釈が一元的になる」という声が上がった。リリーさんや松本監督も「確かに、あれは複雑な表情だった」と議論に。リリーさんは「その前のシーンで小池栄子さんに髪を洗ってもらっているから、そのうれしさが邪魔して複雑な表情になったのかも」とちゃかしながら、「うれしそう、悲しそうという言い方だけでなく、甘酸っぱい顔とか、ぼやかしたほうが伝わるのかも」と提案した。熊篠さんは「(視覚障害者向けの)官能小説の朗読や、字幕つきのAVが出たことがある。今、AVを買う人は年配の人が多く、家族がいて大きな音では見られないので、字幕つきは反響が大きい」と言い、バリアフリーにすれば障害者だけでなく、多くの人に需要が広がると訴えた。

 ◇「トイレあるある」も

 トークでは、トイレ問題も議論に。リリーさんは「バリアフリーのお店うんぬんより、まずはトイレだよね。店に段差がなくても、トイレが狭いと意味がない。だから、(熊篠さんは)極力水分を取らないようにしている」と発言。誰でも使いやすいとされる多機能トイレであっても、「座ってから『鍵閉めてない』と気づいた時の、あの鍵の遠さね」とリリーさんが指摘すると、「多機能トイレの水洗ボタンの位置が遠いんですよ。健常者でも届かないことがある」と熊篠さん。付き合いの長いリリーさんと熊篠さんだからこそ気づくトイレの課題に、参加者はうなずいたり、はっとした表情を見せたりしていた。

 ◇「一人で過ごすシーンがリアル」

 試写会には、自叙伝「風歩」(講談社)の著者で、モデル活動もしている森山風歩さんの姿もあった。進行性筋ジストロフィー症で、車いすで生活している。映画には、エキストラとして参加した。

 「私自身は、『障害者だってただの人間』と思っているから、障害者のことを知ってほしい、社会の意識を変えてほしいという気持ちはないけど」と前置きした上で、「熊篠さんがやってきた活動は、大きな意義がある。映画では、『障害者は性欲がないと誤解される』とか、普段熊篠さんが言っていることを伝えてくれている」と評価する。

 「映画の中で、クマが一人で過ごすシーンはとてもリアル。車いすから落ちたり、どれも熊篠さんに本当に起きたことだから。普段の生活で、どんなバリアーがあるのか映画を見ているとわかるはず。熊篠さんを知らない人が見たら、どんなふうに思うか、公開が楽しみ」と期待していた。

最終更新:7/19(水) 14:12
毎日新聞