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<電子チケット>不正転売防止策スルリ…スマホ自体貸す手口

7/15(土) 15:00配信

毎日新聞

 ◇全国で初摘発 専門家「購入者も刑事罰の恐れ」と警鐘鳴らす

 二次元コードをスマートフォンに表示し、コンサートの入場券などにできる「電子チケット」。チケットの不正転売を防ぐ切り札とされるが、スマホ自体を貸し出す手口の転売事件が6月、全国で初めて摘発された。アナログな手法でデジタル技術の裏をかかれた形で、業界団体は顔写真を組み合わせるなど対策に躍起だ。専門家は「転売者だけでなくチケット購入者も刑事罰を受ける可能性がある」と警鐘を鳴らしている。【原田悠自、藤田愛夏】

 ◆社員調査で発覚

 「まさかスマホ自体を貸し出すとは……」。チケット販売会社「EMTG」(東京)の広報担当者は驚く。

 昨年10月、同社が扱う人気バンド「サカナクション」のコンサートの電子チケット2枚が、定価の5倍以上の計7万4000円でインターネット上に出品されているのに社員が気付いた。

 社員は調査目的で落札し、出品した男と連絡を取った。男は(1)当日、会場近くで身分証と交換で電子チケット入りスマホを貸与(2)スマホで入場(3)コンサート終了後、身分証と引き換えにスマホを返却--と手順を説明した。

 社員は待ち合わせ場所で男に身分を明かし、同社が転売を禁じていると説明すると、男は逃走した。通報を受けた兵庫県警が購入履歴などを調べたところ、和歌山市の無職男(43)が浮上。転売目的を隠して同社からチケットを買ったとの詐欺容疑で逮捕した。

 ◆「ダフ屋」今は昔

 かつてチケット転売をするのは、会場近くで直接売買する「ダフ屋」が定番だった。盗品や偽造品の流通、暴力団の資金源など犯罪の温床になるため、都道府県の迷惑防止条例などで取り締まり対象とされてきた。

 しかし今はネットオークションに取って代わられ、転売者の捕捉が難しくなっている。正規業者は転売禁止規定を設けているが、入場時の本人確認は困難で十分な歯止めになっていない。

 そこで登場したのが電子チケットだ。決済や入場の際にスマホを使うことで、スマホ所有者から第三者への転売を防ぐ効果が期待された。ところが悪用されるケースが後を絶たず、同社ではネット上で定価の約10倍に上る高額転売が行われている。

 ◆「転売はファンの機会奪う」

 音楽事業者らの団体は6月、コンサート当日に行けなくなったチケット購入者から正規価格で買い取り、転売するサイト「チケトレ」を開設した。団体は「チケットを買い占めて価格をつり上げ、転売する個人や業者が横行している。ファンからコンサートを楽しむ機会を奪う」とし、アイドルグループのライブでは購入者の顔写真付き電子チケットを導入したケースもあった。

 一般に品物の売買は自由だが、契約で禁止された転売目的でチケットを購入した場合は販売者を欺いたことになる。警察は今回、欺いた行為を詐欺と認定。不当に高額で転売していたことも踏まえて強制捜査に踏み切った。

 転売問題に詳しい福井健策弁護士(第二東京弁護士会)は「規約違反と認識し身元を偽って入場すると、詐欺罪に問われる恐れがある」といい、転売ビジネスの横行を防ぐ仕組みづくりが重要だと指摘している。

最終更新:7/15(土) 15:59
毎日新聞