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<蓮舫代表>戸籍公開、危惧する声

7/15(土) 19:58配信

毎日新聞

 民進党の蓮舫代表が18日、自らの戸籍関連資料を公開する。東京都議選の惨敗を受け、党内の一部から「『二重国籍』問題をうやむやにしたためだ」と要求されたことが発端。ただ、戸籍は過去に深刻な差別も生んできた。民進党の議論は果たして妥当なものと言えるのか。【岸達也】

 蓮舫氏は2004年参院選で初当選し、現在3期目。公職選挙法は候補者に戸籍謄本または抄本の提出を義務づけており、蓮舫氏も立候補した時点で被選挙権の要件である「日本国籍」の確認を受けたのは明白だ。

 また、二重国籍を直接の国会議員の失職事由とする法令はない。国籍法に詳しい名城大の近藤敦教授(憲法)は「戸籍は基本的に非公開であるべきだ。党内事情で公開に応じるとすれば、社会に深刻な影響を与えかねない」と警告する。

 戸籍には、国外にルーツがあったり、被差別地域の出身であることが識別できたりする情報が含まれる。近藤教授は「議員に限らず『本当に日本人なのか』とルーツをあぶり出す空気を醸成しかねない」と指摘。名古屋大の日比嘉高准教授(日本近現代文化論)も党内からの公開要求を「議員として守るべき一線を越えている」と批判する。

 二重国籍問題は昨年9月の党代表選の前に浮上。「台湾籍が残っているのでは」との指摘に対し、蓮舫氏は「台湾籍は有していない」と否定したが、その後に「記憶が不正確だった」と訂正した。10月には国籍法に基づき日本国籍の選択宣言を行ったと表明。宣言の日付は戸籍に記載されるが、究極の個人情報である戸籍の公表には応じず、ネット上の批判が続いていた。

 戸籍情報の公開には党内でも「差別の歴史からいって、絶対に受け入れてはならない」(有田芳生参院議員)との声がある。蓮舫氏も13日、「戸籍そのものではなく、すでに台湾籍を有していないことが分かる部分を公開する」と述べ、「極めてレアなケース」と理解を求めた。

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 日本が原則、二重国籍を認めていないのは事実で、国籍法は法相が解消を迫る「催告」の手続きを規定。催告を受けた二重国籍者が1カ月以内に選択しなければ、日本国籍を失うことになる。

 しかし、催告の手続きが実際に執られた例はない。法務省は「結果が重大で、国益を著しく損なう場合などに限られる」と説明するが、近藤教授は「たとえばブラジルは国籍の放棄を簡単には認めない。相手国の事情や公正さと人権配慮の観点から、弾力的に運用するしかないのだろう」とみる。

 欧米など人権先進国では二重国籍を容認する国が多いという。欧州東部モルドバが二重国籍者が国会議員になることを禁じる法律を定めた際、欧州人権裁判所が10年に欧州人権条約に反するとの判決を下した例もある。

 民進党は綱領に共生社会の実現を盛り込み、「社会の活力の根源である多様性を認めあう寛容な社会」を掲げる。山口二郎法政大教授(政治学)は蓮舫氏の対応について「人権や差別の歴史への認識が甘すぎる。今後は政権の批判者に出自の問題を突きつけるような動きを招きかねず、極めて悪い前例となる」と語った。

最終更新:7/16(日) 2:49
毎日新聞